研究開発

公設試験研究機関(公設試)

2020.1.27

近年のグローバル化や企業間関係のオープン化により、大企業は新興企業の低賃金労働力を活用するようになり、国内中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。一方で、消費者は単なる「もの」ではなく、「付加価値を感じられるもの」を求めるようになりました。

中小企業が生き残るためには、自社で技術力を保有し、消費者のニーズに合った高付加価値の製品を提供していくことが必要です。しかし、大企業に比べ資金力の乏しい中小企業では、自前で研究開発のための設備を持つことは難しく、常に技術力を磨いていくことに対するハードルが高い場合が多くあります。そこで、地域の中小企業の技術に関する相談窓口としてさまざまな支援を行っているのが、「公設試験研究機関(略称:公設試)」です。

公設試とは

公設試とは、地方自治体によって設置され、地域の産業振興に関わる試験研究や技術支援等を行う公設試験研究機関の略称で、企業への技術指導、依頼試験・分析や受託・共同研究等を行う支援機関です。上述の機能のほかに、産業界が求める技術開発ニーズに対応し、イノベーションの創出を支援することも目的としています。

公設試は、鉱工業系、農林水産系、環境系、保健衛生系の4つに分類されています。各機関は比較的小規模なものも多く、国立研究機関が主導し、それぞれ連合組織が設立されています。

公設試の機能

公設試が提供する支援内容には主に、1.技術相談・技術指導、2.機器・設備の利用、3.依頼試験・分析、4.受託・共同研究があります。そのほか、5.人材育成、6.情報提供、7.連携機関の紹介も行っています。主な機能の詳細は下記のとおりです。

  1. 技術相談・技術指導:各分野の専門研究員が課題をヒアリングし、課題解決に向けた助言や公設試の支援メニューの提案を行う。
  2. 機器・設備の利用:専門の機器や設備を開放しており、試作や分析、測定等に利用することができる。機器の操作やデータの解釈についても専門研究員がサポート。
  3. 依頼試験・分析:依頼に基づき、公設試の専門研究員が分析・測定・評価・加工・鑑定等を実施。試験結果をまとめた報告書・成績書を提供する。
  4. 受託・共同研究:企業の応用開発や試作・製品化の支援。公設試の研究成果を元に企業への普及や技術移転を行う。
  5. 人材育成:技術講習会やセミナーの開催、研究会を通じた産官学の交流、技術者養成のための研修制度等の用意。
  6. 情報提供:公設試の研究成果を発表するシーズ発表会の開催、刊行物の発行やインターネットを活用した情報発信。公設試のさまざまな機器・設備を見学可能な施設見学会の開催。
  7. 連携機関の紹介:全国の公設試で組織される産業技術連携推進会議(産技連)を通じ、会員機関の連携。また、大学、高専、公設試、産総研、各種産業技術機関および金融機関との連携。自施設で対応不可の場合等は、利用者に連携機関を紹介。

なお、公設試は全国の各地方自治体によって設置されているため、公設試によって制度に若干の違いがあり、個別に上記以外のサービスを行っている場合もあります。詳細は各公設試のホームページ等をご参照ください。

(経済産業省近畿経済産業局「公設試のすすめ」より抜粋)

利用したい時は?

「製品を改良して付加価値をつけたい」「試作を行いたい」「製造現場のトラブルを解消したい」「機械・装置を改良したい」「技術者を育成したい」等のお悩みがある場合、まずはお近くの公設試の技術相談窓口へ、電話やWebフォーム、Eメールで連絡します。公設試には各分野の専門研究員がおりますので、課題解決の手法について提案を受けられます。

なお、経済産業省ホームページに、「全国鉱工業公設試験研究機関保有機器・研究者情報検索システム」が設置されており、ここから技術分野、目的、地域の条件を絞って検索することも可能です。

公設試は地方自治体がそれぞれの地域における産業振興を目的に設置しているため、地域により設置されている機関や設備が異なります。まずは所在都道府県の公設試の利用を検討するのが基本ですが、利用したい機器や技術によっては他地域の公設試を利用することも可能です。

まとめ

  1. 自社で研究開発のための設備を用意するのが困難な中小企業は「公設試」の活用がおすすめ
  2. 公設試は、地方自治体が各地域の産業振興を目的に設置、運営している。
  3. 公設試では下記の支援を受けられる。
     —技術相談・技術指導
     —機器・設備の利用
     —依頼試験・分析
     —受託・共同研究
     —人材育成
     —情報提供
     —連携機関の紹介
  4. 利用にあたっては、公設試の技術相談窓口へ直接連絡する。
  5. 全国には多数の公設試があるため、検索システムの利用がおすすめ