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激動の経済情勢「厳しくても人材育成をやめてはいけない」:伊丹敬之・中小企業大学校総長に聞く
2025年 4月 14日

中小機構が運営する中小企業大学校の総長に一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏が4月1日付で就任した。伊丹氏は「人」を企業経営の中心に据える「人本主義」を提唱するなど多くの経営者に影響を与えてきた。トランプ米政権による関税政策をはじめ、足元の日本経済を取り巻く環境は一層厳しさを増す中、中小企業経営者は何に備え、どう対処すべきか。総長就任にあたって伊丹氏にインタビューした。
「とんでもない時代が来る可能性がある。今はトンネルの入り口が見えたときだ」。伊丹氏はトランプ政権が踏み切った関税政策について、こう警鐘を鳴らした。関税政策の影響について、2008年のリーマンショックに匹敵する景気減速を招く可能性を指摘。当時の状況を踏まえ、「2年くらいは日本の中小企業が困ることになる可能性がある」との見通しを示した。
そのうえで、「出口のないトンネルはない。2年後の反転攻勢に向けて、トンネルの出口を今のうちから考えておくべきだろう。2年くらい先には必ず出口がくる。その出口を自分はどう迎えるかを考えて経営にあたってほしい」と訴えた。
激動の経済情勢を乗り切るうえで、中小企業の経営者に求められるポイントについては、激しい波に向かって経営していこうという気概を持つことと、それに向けた人材育成の重要性を強調。「いい人材をしっかりとキープして、さらに育てることをどんなに厳しい状況でもやめてはいけない」とアドバイスした。
さらに2月に上梓した自著のタイトルを挙げ、「無理はせよ、無茶はするな」というメッセージを送った。「こういう厳しい時代だから、無理をしなくてはならない状況がくる。無理をしたくないからといって縮こまっているとつぶされる。無理をしてでもまっとうな形で何か生きる道はないかを考えることが経営者の姿勢だ」と訴えた。
後継者難などを背景に中小企業の数が減少傾向にある。こうした状況に対して「一つ一つの中小企業が強く、大きくなる取り組みが必要だ」と指摘。売上高100億円に向けて挑戦する中小企業を応援する経済産業省の「100億宣言」プロジェクトを評価した。
総長就任にあたっては「経営学者として50年以上、大企業・中小企業を含め企業の現場を見てきた。その経験を生かして、筋の通った原理原則を全うできる中小企業大学校にしたい」と抱負を述べた。