ビジネスQ&A

消費税の事業者免税点制度について教えてください。

2021年 8月10日更新

今年の1月から個人営業で飲食店を始めました。開業後思いのほか売上が伸びているので、従業員を雇おうと思っています。ところで開業の年は、消費税は免税だそうですが、来年以降はどうなるのでしょうか?

回答

前期(個人の場合は前年)の上半期の課税売上高が1,000万円を超えるときなどは、2期(年)前の課税売上高が年間1,000万円以下であっても課税事業者となります。新設法人や新規開業の個人事業者の場合、第2期目(2年目)から課税事業者となるかどうかは、1月から6月の売上高等によります。

1.事業者免税点制度の概要

個人事業者または法人の基準期間(注1)における課税売上高(注2)が1,000万円以下である場合には、消費税の納税義務が免除されます(事業者免税点制度)。

基準期間における課税売上高がゼロの場合はもちろん、新たに開業した個人事業者、または新たに設立された法人のように基準期間がない場合も、原則として納税義務が免除されます(その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人の場合などのいくつかの例外はあります)。

(注1)基準期間とは、個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度のことをいいます。

(注2)課税売上高とは、消費税法上の概念で、国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額をいいます。損益計算書上の売上高であっても、国外取引による売上高や、土地の譲渡や住宅貸付の家賃収入のような非課税取引による売上高などは、課税売上高に含まれません。

2.特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例

上記1.の事業者免税点制度の適用のある個人事業者または法人の特定期間(注3)における課税売上高または支払給与総額が1,000万円を超えるときは、事業者免税点制度を適用しません。

なお、特定期間における課税売上高と支払給与総額は、いずれか有利な方を選択して、事業者免税点制度の適用の有無を判断することができます。

(注3)特定期間とは、次に掲げる期間をいいます。

  1. 個人事業者の前年の1月1日から6月30日までの期間
  2. 法人の前事業年度の開始の日から6カ月間(次の3.の場合を除きます。)
  3. 法人の前事業年度が7カ月以下である場合、前々事業年度(基準期間に該当する事業年度を除きます)開始の日から6カ月間。ただし、前々事業年度が6カ月以下の場合は、その前々事業年度

3.あなたの場合

来年以降あなたが消費税の課税事業者となるかどうかは、まずは今年の1月から6月までの課税売上高と支払給与総額のいずれか少ない金額が1,000万円を超えるかどうかによります。

いずれか少ない金額が1,000万円を超えれば上記2.にしたがい、来年から課税事業者となります。

いずれか少ない金額が1,000万円以下であった場合は、上記1.にしたがい、もし今年1年の課税売上高が1,000万円を超えれば再来年から課税事業者となります。課税売上高が1,000万円以下であれば、原則的に再来年も免税事業者です。

ただし、来年の1月から6月までの課税売上高と支払給与総額のいずれか少ない金額が1,000万円を超えた場合には、今年の課税売上高が1,000万円以下であっても、上記2.により再来年課税事業者となります。下の図1をご参照ください。

上記2.により再来年課税事業者となる場合 上記2.により再来年課税事業者となる場合
図1 上記2.により再来年課税事業者となる場合

4.適格請求書発行事業者の登録をする場合の留意点

上記3.のように免税事業者となる年であっても、令和5年10月1日から開始されるインボイス制度における適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる選択をしなければなりません。

なお、登録日が令和5年10月1日を含む課税期間中である場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても登録を受けることができるという経過措置が設けられています。この場合、登録日から課税事業者となります。

適格請求書発行事業者になると、上記1.、2.の判定にかかわらず、消費税の納税義務が発生しますのでご注意ください。

回答者

税理士・中小企業診断士 野村 幸広