ビジネスQ&A

現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方について教えてください。

当社は製造業を営んでいます。在庫過剰で困っています。現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方について教えてください。

回答

適正な在庫管理は、経営の最重要項目の一つです。在庫管理は、在庫場所を明確にすることから始まり、継続的に入出荷を記録する仕組みをつくることが重要です。最終的には、生産リードタイムの短縮化が、在庫圧縮の最良の方法となります。

受注環境が少品種大量生産から多品種少量生産に変化する中、取り扱っている製品のアイテム数が増え続けている企業は多いと思います。加えて注文の短納期化が進み、在庫は抑えたいが、顧客の納期には対応しなければいけないというジレンマを抱えているところも多いでしょう。多品種化と短納期化で、在庫管理も困難になっていると思われます。

ただ、過剰在庫や不良在庫は、資金繰りなど会社経営を左右する要因となりますので、適正な在庫管理は、会社を運営するうえで、もっとも重要な項目の一つと言えます。ここでは、現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方について説明します。

【現場での在庫管理の方法】

まず、現場での在庫管理の方法ですが、基本となるのは整理・整頓です。多くの会社では、倉庫など製品の在庫場所を決めていると思いますが、特定の製品の在庫場所を明確に決めておく必要があります。たとえば、製品AはBという棚の2段目のCという箱に入っているなど、誰にでも分かるように決めてください。在庫場所を特定し在庫表示を付した上で、製品の入出荷を行うことが、在庫管理の基本となります。詳細については、Q0274「フリーロケーション」を参照願います。

在庫場所を明確にしたら、製品の入出荷台帳を整備しましょう。アイテム数が多い場合でも、面倒に思わずに、1つの製品ごとに製品名を明記し、管理する必要があります。製品アイテム数が非常に多い場合は、市販の販売管理や在庫管理のソフトなどを活用することをお勧めします。その台帳を使って、入出荷するたびに、どの製品が、いつ、何個動いたかを正確に記録してください。忙しい現場で業務も煩雑になりがちですが、入出荷の担当者を決めるなどして、台帳を使い継続的に製品の入出荷の記録を付ける仕組みを確立することが重要です。記録を付け続けることにより、現在の在庫量が常に分かる体制となります。

適正在庫の運用例 適正在庫の運用例
図1 適正在庫の運用例
カンバンのルール カンバンのルール
図2 カンバンのルール

【適正な在庫量の考え方】

次に、適正な在庫量の考え方ですが、基本的には「注文の受注から納期までの期間」と「生産のリードタイム」によります。生産に時間がかかるもので短納期のものは、ある程度の見込み生産は仕方がありません。しかし、見込み生産量についても、台帳にある現在の在庫量の数字が基本となります。いままでの受注実績や顧客の生産計画を参考にし、在庫期間(たとえば、今後3ヵ月分など)を明らかにして、生産量を決定してください。

また、受注してから納期まで、現在の生産リードタイムで十分間に合うものは、極力、受注生産に切り替えましょう。最終的には、生産リードタイムの短縮が、在庫量を減らす最良の方法となります。

在庫場所の明確化・入出荷台帳の整備による在庫管理体制の確立の後は、生産効率のアップという新たなステップを目指していきましょう。作業や工程の見直しを通して、生産リードタイムを短くすることが、次の目標となります。

回答者

中小企業診断士 谷田部 剛