~中小企業経営者は、今の景気をどのように感じているのか~

第145回中小企業景況調査【平成28年7~9月期】

天候にも左右される中小企業景況

2016年7-9月期の中小企業景況調査では、熊本地震の影響などから悪化が見られた前期から一転して全産業・製造業・非製造業の業況判断DIに持ち直しの動きが示された。全産業・非製造業は3期ぶり、製造業は4期ぶりの上昇となる。しかし、業況判断DIを地域別に見ると、東と西で明暗が分かれており、その背景には、天候に左右されやすい中小企業の姿も垣間見られる。この点について、経営者から寄せられた声を手掛かりに検討していく。

1.今期の地域別業況判断DIとその特徴

業況判断DI(「好転」-「悪化」)の推移(全産業・地域別・前期比季節調整値)

今期の全産業の主要DI(前期比季調値)を見ると、業況判断DI▲18.2(前期DIとの差『以下、前期差』1.3ポイント増)、売上額DI▲17.9(前期差1.4ポイント増)、資金繰りDI▲13.7(前期差0.2ポイント増)と、いずれも上昇した。

地域別に見ると、北海道▲17.3(前期差0.5ポイント減)、東北▲23.8(前期差3.3ポイント減)、関東▲20.3(前期差0.8ポイント減)、中部▲18.1(前期差0.9ポイント減)、近畿▲18.6(前期差0.5ポイント減)、中国▲16.3(前期差3.6ポイント増)、四国▲17.5(前期差2.7ポイント増)、九州・沖縄▲13.6(前期差6.3ポイント増)となっている。東と西でくっきりと明暗の分かれた今期の地域別業況判断DIの背景について、天候の影響をキーワードに、経営者の声を確認していく。

2.業況に対する天候の影響について触れたコメント

【コメント】

  • 雨による畑作(イモ・タマネギ)のダメージがダンボール類に影響が心配。(段ボール箱製造業 道北・オホーツク)
  • 気象条件が一番だと思っている。長引く悪天候、海水温の上昇、河川の水不足…全て売上に影響有り。更に人口減少の問題は、かなり深刻に現われている。(スポーツ用品小売業 青森)
  • 景気や天候不順等の影響もあり客数が減少していると感じている。次から次と目新しいものを考えていかないと集客につながらず、先行きが厳しいと感じている。(食堂,レストラン(専門料理店を除く) 岩手)
  • 今夏は天候が悪く、魚が入らない日が多くて困りました。お盆で例年なら景気が良い月なのですが、今年はダメでした。来年も期待できそうにありません。(日本料理店 福島)
  • クリーニング店は、天候・気温等の影響も受け易く近年の異常気象は客離れに拍車をかける事になっています。過疎化のスピードも早く感じられますし、高齢化の対応も悩み所です。(普通洗濯業 栃木)
  • 梅雨の期間が長く、暑くなるのが遅れたので昨年よりエアコンが下がり、猛暑の割には、エアコンも例年と変らないで、景気的には、あまり良くなかったです。(電気機械器具小売業(中古品を除く) 千葉)
  • 自然災害や天候不順により、天候に左右されやすい生花の数不足や仕入単価の上昇があるので、心配している。繁忙期の人手の確保を悩んでいる。(花・植木小売業 新潟)
  • 今年は猛暑が続き、さらに行楽日も多かったため、ガソリンの売上は好調だったが、ガソリン以外の商品、サービスの販売は伸び悩んだ。(ガソリンスタンド 広島)
  • 前期に比べて今期増加の要因は、季節的要因(夏らしい気温の高さ)はエアコン需要に支えられた事と毎年恒例の個展売出しの効果が少しはあったのではと思う。(電気機械器具小売業(中古品を除く) 鳥取)
  • 冷熱関連は猛暑による需要増並びに官公庁案件の増加により好調を維持している。(電気機械器具卸売業(家庭用電気機械器具を除く) 島根)
  • 特に8月は晴れ続きの猛暑でお客さんが多く、氷などの水物がよく売れた。(日本料理店 山口)
  • 梅雨明け後に需要が増える為、例年売上が増える時期となる。(畳製造業 山口)
  • 今期は、暑さが続く時期だったので、エアコン取付けと修理が必要な所が、前期より多かったので、少し状況としては、上向きでした。(電気機械器具小売業(中古品を除く) 愛媛)
  • 7~8月は猛暑によりガソリン等の数量は前年より増加をしている。(ガソリンスタンド 香川)
  • 今年度7~9月度に関しては、猛暑の影響で、エアコン等の季節家電が好調だった為売り上げが好転したと思われるが、今後この状況が続くとは考えにくい。(電気機械器具小売業(中古品を除く) 宮崎)
  • 6月から9月の間はエアコン中心に商品が動くので安定しているが、これから10月からの売上が心配。(電気機械器具小売業(中古品を除く) 沖縄)

3.見通し:天候への対応を再検討する

日本列島の東と西で天気や気温の差異が顕著となった今期。東日本では、異例の進路をたどった台風の影響などから、経営者の想定とは異なる活動を受け入れざるを得なかったことを示唆する声が多く寄せられた。一方、西日本では、夏らしい活動を行うことができた多くの経営者から安どの声が届いた。

台風、集中豪雨などをコントロールすることはできない。しかし、天候も経営に影響を与えることを理解し、その上で対策を検討し、実行することはできるはずである。猛暑だった場合、冷夏だった場合、一体どのような行動を起こしていくことが安定した企業活動につながるのか。いくつもの選択肢を用意しながら、常に企業活動の方向性を模索し続ける姿勢が中小企業の経営者には求められるのだろう。

文責

ナレッジアソシエイト 平田博紀

関連記事