業種別開業ガイド

インドアゴルフ練習場

2023年 7月 12日

トレンド

インドアゴルフ練習場のイメージ01

ゴルフは、老若男女にかかわらず楽しめるスポーツとして根強い人気がある。ゴルフの練習をするには、これまではアウトドア(屋外)での「打ちっぱなし」タイプが主流だったが、最近ではインドア(室内)で行うシミュレーションゴルフの人気が高まっている。

インドアゴルフ練習場では、バーチャルリアリティー(VR)の技術によってゴルフを室内で体験でき、さらにハイスピードカメラで自身のフォームや弾道を撮影して分析することができる。ラウンド未経験の初心者から、本格的にフォームチェックをしたい上級者まで、それぞれの楽しみ方ができる施設だ。

インドアゴルフ練習場には、「スポット利用型」、「ゴルフスクール型」、「サブスクリプション型」という3つのタイプがある。どのタイプを選ぶかによって、業態は全く違ったものになるので、開業を検討する際はあらかじめ方針を決める必要がある。

1. スポット利用型

このタイプでは、仲間同士のレクリエーションの一環としてシミュレーションゴルフが楽しめる施設が多い。シミュレーターの利用料だけではなく、飲食や物販を提供することで補完的に経営していくことができる。エンターテインメント性を前面に出してPRしているのも特徴的だ。

2. ゴルフスクール型

シミュレーターによってスウィングを撮影し、打球の軌道を詳細に計算する。そのデータをレッスンプロが見て、修正ポイントなどを具体的に教えてくれる。自己流の自分ひとりで練習するタイプに比べて上達のスピードが早く、ゴルフコンペに向けて短期間で上達を目指すような利用者に人気だ。

3. サブスクリプション型

月会費を支払えば、回数制限なく、24時間・年中無休で利用可能なタイプで、レッスンコーチの指導や飲食は提供されていないケースがほとんどだ。交通アクセスの良い立地にあれば、通勤時間や隙間時間を活用して、マイペースで練習したいサラリーマン層を呼び込むことができる。

近年のゴルフ練習場事情

下記の表は、公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟調査によるゴルフ練習場の数だ。注目すべきは、アウトドア練習場の減少とインドア練習場の増加である。都道府県別にみると、東京都が535(+59)でトップ、続いて大阪府が143(+1)、神奈川県が127(+3)と、大都市を抱える都府県が上位に並んでいることがわかる。

地域別ゴルフ練習場の数
インドア練習場の多い都道府県

若年層のゴルフ離れにも効果

若者のゴルフ離れが進んでいると言われている。「令和3年社会生活基本調査」(総務省統計局)によると、令和3年のゴルフ人口(10歳以上)は、約773万8,000人だ。平成23年の約924万人から150万人余りも減少している。30代以下の若年齢層に絞ってみると約219万7,000人で、平成23年の約303万6,000人から83万9,000人の減少となっている。

若年齢層のゴルフ人口

若者がゴルフを敬遠する理由としては、「(料金が)高い」「(場所が)遠い」「(プレー時間が)長い」という声が多く聞かれる。「車を持っていないのでゴルフ場は利用しにくい」「服装やマナーがうるさそう」という声もある。確かに、これまでのゴルフ場やゴルフ練習場は、若者にとっては敷居の高い場所だったかもしれない。一方インドアゴルフ練習場は、料金は低めで都市部・駅周辺に多く、利用時間も自由度が高いため、若者をゴルフに呼び戻すきっかけになりそうだ。手軽に楽しめるゴルフゲームの定番として累計200万本を売り上げている「みんなのゴルフシリーズ」の人気をみても、潜在的な利用客を掘り起こす余地はまだまだありそうだ。

インドアゴルフ練習場のイメージ02

インドアゴルフ練習場開業の人気理由と課題

人気理由

  • ゴルフの未経験者も顧客にできる
  • 狭い場所でも開業することができる
  • 健康という観点から社会に貢献できる
  • システムによっては無人営業が可能
  • VR/ARなど新しい技術を取り入れた最新のサービスを提供できる
  • アウトドアに比べて営業が天候に左右されにくい

課題

  • 若年層のゴルフ離れ
  • ゴルフシミュレーター、解析機などの機材・ソフトウェアが高価
  • 室内なので感染症対策は万全にしなければならない

開業のステップ

まず必要なのは、店の客層を絞ることだ。それによって、施設の作りやサービス内容が違ってくる。高性能のシミュレーターを導入し、スキルの向上を目指す人を対象とするのか、初心者でも足を運びやすいカジュアルな施設にするのか、対象を絞った上で他店との差別化も考え事業計画を作成したい。

開業のステップ

収入

まず時間制にするのか、月額会費制にするのかを検討した上でシミュレーションしてみよう。1時間あたりのプレー料金を5,000円とした場合、1打席が1日に5時間稼働・年間300日営業とすると、1打席の年間売り上げは750万円となる。この条件で6打席を導入すると4,500万円となる。一方月額会費を20,000円とすれば、200名の会員で年間の売り上げは4,800万円となる。特に開業時は、施設規模に応じて、広告宣伝費や従業員・レッスンプロの雇用にかかる変動費の割合を慎重に試算すべきだ。

また、インドアゴルフ練習場の運営会社が展開するフランチャイズに加盟するという方法もある。一定のロイヤリティが発生するものの、店舗運営のノウハウを踏まえた出店・集客・運営サポートが受けられるので、開業時のリスクを最低限に抑えたい場合は、検討してみても良いだろう。良いフランチャイズを選ぶには、説明会等に参加して自ら情報収集することも大切だが、ネット上の口コミを通して評判を探っておくことも参考となる。

開業資金

開業にあたって必要になる費用として、物件の取得費用のほか、内装や外装の施工、備品の購入、広告費などがある。

初期費用の例

ゴルフシミュレーターについては、1台当り月額40,000〜70,000円ほどでレンタルできるシステムを取り入れている所もある。ただし、レンタル料のほかに300,000〜500,000円ほどの保証金が必要。また、中古モデルを購入する場合は半額以下で手に入る場合もある。

下表は、アウトドアも含めた「ゴルフ練習場」の黒字企業の経営データである(参考)。

ゴルフ練習場黒字企業のデータ(令和3年1〜12月期決算)
インドアゴルフ練習場のイメージ03

※開業資金、売り上げの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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