業種別開業ガイド

携帯ショップ

トレンド

(1)市場はスマートフォン一色に

フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)とスマートフォン(以下スマホ)の国内出荷台数の内訳は、2017年の時点でほぼすべてがスマホで占められている(スマホ:3,343万台、フィーチャーフォン:66万台)。スマホの国内出荷台数の推移にも波があり、普及は一巡し、現在は買い替え需要によって市場は支えられていると考えられる。

(2)スマホではiPhoneがシェアトップ

国内スマホの出荷台数をベンダー別シェアで見ると、2013年頃からApple社が約半分の市場を独占している。他は、SONY、シャープ、京セラ、富士通などが続いている。上記5社で市場の約9割を占めていることになり、当然、携帯電話ショップの品揃えもこの5社製品が中心となっている。

(3)格安SIM市場の急拡大

近年、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)と呼ばれる事業者による格安SIM市場が急拡大している。MVNOとは、通信事業者から携帯電話の通信回線を借り受けて独自サービスを提供する事業者である。この独自サービス型SIMの回線契約数は、その安さから人気を呼び、2018年9月末時点で1202.7万回線となり、4年前と比較し、5倍以上の水準に達している。
格安SIM市場の拡大の背景には、単に通信費が安いだけではなく、SIMカードと格安スマートフォン端末(旧型iPhoneなど)のネット販売が普及したことも背景にあると考えられる。

MVNOの主要事業者は、楽天、インターネットイニシアティブ、UQコミュニケーションズ、NTTコミュニケーションズなどである。携帯電話ショップへの開業を考える場合、これら主要事業者を初めとするMVNOの動きに注目する必要がある。

(4)携帯電話の主要販売代理店はティーガイアと光通信

携帯電話の主要販売代理店の売上規模は、株式会社ティーガイアと株式会社光通信が最も大きく、次いで、コネクシオ株式会社、株式会社ベルパーク、株式会社クロップス、株式会社トーシン、株式会社エスケーアイなどが続いている。いずれも傘下に2次・3次の代理店をもち、多くの携帯電話ショップが参入を続けている。

携帯電話ショップの特徴

  • 携帯電話ショップは、キャリアと呼ばれる通信事業者の携帯端末を直接仕入れて販売する直営ショップと1次代理店、そして、1次代理店から携帯端末を仕入れて販売する2次代理店、および、その下の3次代理店などからなる。
  • 携帯電話ショップの売上は、最終消費者や末端の代理店から得られる「携帯端末代金」と、通信事業者や上位代理店から得られる「取次手数料」からなる。
  • 携帯電話ショップ同士の競争は激しく、「携帯端末代金」においては通信事業者や上位の代理店からの仕入価格よりも、最終消費者への販売価格の方が安くなる現象も指摘されている。この逆ザヤ分に対しては「取次手数料」や「販売奨励金」という名目で補填されることになる。
  • アプリ販売業者から受け取る販売手数料を目的に、販売するスマホに予め有料アプリをインストールして販売する携帯電話ショップもある。

携帯電話ショップ業態 開業タイプ

開業タイプとしては、商品の取り扱い方により2パターンあると考えられる。

(1)通信事業者の代理店

通信事業者(MNO)の携帯端末の取次ぎとして、下位の第3次や第4次代理店となり、開業するパターンである。上位の1次・2次販売代理店は、大手業者が多く、参入は難しい。また、通信事業者の直営店についても、その資格を有する店舗はごくわずかであり、参入は難しいと思われる。
通信事業者の代理店には、1社のキャリアの携帯端末を販売する専売店と、複数のキャリアの携帯端末を販売する併売店がある。このいずれかのパターンでの第3次、第4次代理店となるのが現実的だろう。

(2)格安SIM会社の代理店

MVNOと呼ばれる格安SIM会社の代理店として開業するパターンである。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の7段階に分かれる。

(2)必要な手続き

携帯電話ショップを開業するに際して、特に必要となる許認可などはない。

メニュー・サービスの工夫

  • 携帯電話ショップは、すでに3次、4次代理店への参入も多く、携帯電話の市場は、ほぼ飽和状態にあると言える。フィーチャーフォンやスマホだけでなく、タブレット端末、カバー製品など、周辺機器の販売を意識して増やしていくことが重要となる。また、有償無償での修理や各種問い合わせや要望に応えるアフターサービスの充実も必要であろう。
  • 携帯電話の市場がほぼ飽和状態にあるとは言え、高齢者を中心にフィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替え需要は依然存在していると言える。これらの人たちを呼び込む取組みも併せて行っていきたい。

必要なスキル

  • 情報通信機器の技術進歩は目覚ましく、かつ、ネットの普及で消費者がもつ情報通信機器に関する知識も豊富である。携帯端末機の販売においては、顧客の質問に的確に答え、有用な情報を提供し契約に結び付けることができるよう、日々の情報収集は必須である。随時開催されている通信機器展示会や見本市などには積極的に参加し、最新動向を自分の目で確かめておくようにしたい。
  • 料金プランの複雑化や販売時の説明不足などが原因でクレームも多く報告されている。一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会は、携帯電話販売サービスで一定の基準を満たした店舗を「あんしんショップ」として認定している。認定されたショップは、協会のサイトで告知され、店頭でも消費者に周知される。このような制度も利用し、自店舗の健全性を顧客にアピールする姿勢も大事だと言えるだろう。
  • 総務省が「消費者(契約者)保護」の観点から、モバイルサービスに関して提言や指針を発表し、それを受けて法改正などを行うことがある。キャリアはもちろん、販売業者にとってもビジネスモデルに大きな影響を及ぼす可能性があり、総務省や傘下の審議会で、どのような方向性の議論になっているのか、随時情報収集をしておくことも必要である。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

携帯電話ショップの場合、端末機の仕入代金のほか、代理店に加盟する場合は加盟金が加算される。

【参考】:5坪の店舗で携帯電話ショップ(通信事業者の代理店)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。

(参考例)携帯電話ショップ(通信事業者の代理店)

■損益イメージ
(参考例)携帯電話ショップ(通信事業者の代理店)

  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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