2025年10月のWindows10サポート終了に伴う買い替え需要
GIGAスクール構想におけるノートパソコンの入れ替え需要
昨今はパソコンの買い替え需要が低下傾向にあった。内閣府の「消費動向調査」によると、2005年は4.3年だったパソコンの平均使用年数は、2025年には7.6年となっており、パソコンの買い替えサイクルが延びている。さらに、買い替えの理由を見ると「上位品目」が2005年は52.9%だったが、2025年には27.6%となっている。より高い性能やスペックを求めて最新モデルに買い替えるというケースは減少傾向にある。しかしながら、2025年からは主に上記の3つの要因から、パソコンの買い替えを検討するユーザーが増えると見られているのである。
この買い替え需要と並行して高まっているのが、中古パソコンへのニーズである。近年の円安や物価高の影響により、新品パソコンの価格は上昇傾向にあるため、コストパフォーマンスの高い中古パソコンにも注目が集まっている。高い性能を必要とするアプリケーションを使用することが少なければ、型落ちのモデルでも中古パソコンショップによる整備で十分なスペックを備えられるだろう。
それに加えて、社会全体のサステナブル(持続可能な)意識の高まりにより、一昔前よりリユース品への抵抗が薄まってきている。中でも若年層の間では、環境に配慮した品を積極的に選ぶ傾向がある。パソコンには貴重な資源であるレアメタルが使用されており、中古パソコンを活用することでレアメタルの資源循環に貢献できる上、パソコンの廃棄処分に伴う二酸化炭素の発生を削減できることが利点だ。
最近では環境への配慮だけでなく、難民の雇用など、社会的な課題解決に貢献するパソコンを「エシカルパソコン」と呼ぶようになっている。消費者にも環境にも社会にも貢献できる中古パソコンショップは、循環型社会の一翼を担う業種であるといえるだろう。
近年の中古パソコンショップ事情
社会全体のサステナブル意識の高まりは、中古パソコンショップの追い風になっている。
環境省の資料によると、2022年のリユース市場規模は2兆8,976億円と過去最高を記録し、今後も市場規模は増加する見通しだ。そのうち中古パソコンの市場規模は、2022年は1,034億円となっている。
また、経済産業省の資料によると、2023年度の使用済みパソコン回収台数は約21万台、回収重量は約890tだった。そのうち有用なものを再生資源や再生部品として利用できる状態にした「再資源化率」は、デスクトップパソコンは82.1%、ノートパソコンは71.6%となっている。パソコンの再資源率は上昇傾向にある。
次に中古パソコンの販売手法や形態を見てみよう。近年では、EC(電子商取引)が急速に拡大し、大手家電量販店や大手マーケットプレイスの中にも、検査を経た整備済みの中古パソコンを自社のECサイトで販売する企業が増えてきた。そうした企業がフリマアプリやオークションサイトに出品するケースも多い。
他店との差別化を図るために、ターゲットを絞り販売形態を専門化させているショップもある。例えば、パソコン初心者をターゲットとしたサポート重視タイプ店、ゲーミングパソコン専門店、法人特化型店などだ。また、中古パソコンはコストを削減でき、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みにもなるため、法人でも導入するケースが増えている。大量導入に対応できるよう、リースアップ品やアウトレット品、倒産品など法人向けの買い取りを強化しているところもある。
さらに特徴的なのが、中古パソコンは個人情報漏洩や故障のリスクもあるため、買い取り時や販売後のサービスを強化している店舗が多いことだ。具体的には、次のようなサービスがある。
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故障時の返品・返金・交換保証
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購入後の修理やメンテナンスなど有料の長期保証
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買い取りの際のデータ消去、データ消去証明書の発行
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SSD換装やメモリ増設など顧客ニーズに対応したカスタマイズ
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オンライン+実店舗での販売・サポート対応 など
一方で、仕入れ先の選定も重要なポイントとなる。ユーザーからの直接仕入れに加え、中古パソコン仕入れサイトなども活用して、良質な商品を安価に仕入れたい。中には、クリーニングと動作確認までを行い納品してくれる卸業者もあり、時間コストの削減にもつながる。大量のリースアップ品が市場に出回る年度末や決算期を狙うなど、仕入れのタイミングを見極め、商品回転率を高めていきたい。
中古パソコンショップの仕事
中古パソコンショップの仕事には、主に以下のようなものがある。
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市場調査:市場価格の変動や人気機種などを把握
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仕入れ:卸業者からの仕入れ、または個人や法人からの買い取り
卸業者から仕入れ:古物市場、会員制サイト、オークションなどでの取り引き
個人や法人から買い取り:店頭買い取り、宅配買い取り、出張買い取り
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整備:データ消去、クリーニング、修理、メンテナンスなど
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販売、発送:実店舗やインターネット上での販売、発送
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店舗管理:在庫管理、売上管理、シフト管理、実店舗がある場合は商品陳列、清掃など
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集客:イベントの企画・運営、SNS配信、サイト更新など
中古パソコンショップの人気理由と課題
人気理由
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循環型社会で市場の成長が見込まれる
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実店舗を持たなくても開業できる
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得意分野の知識と技術を生かせる
課題
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中古パソコンの目利き(確実に売れる商品を適正価格で仕入れ、回転率を高める)
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競合店との差別化(付加価値を提供して信頼を獲得する)
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整備の徹底(納品後の返品リスクを下げる)
開業のステップ
中古パソコンショップの形態は、「実店舗型」と「オンラインショップ型」に大別される。それぞれの一般的な開業ステップは、以下の通り。どちらもスタッフを雇用しないケースを想定している。
中古パソコンショップに役立つ資格や許可
中古パソコンショップを開業するためには、「古物商許可証」が必要である。店舗所在地を管轄する警察署で手続きを行う。古物商許可申請書に必要書類を添えて、申請手数料19,000円とともに提出する。さらに、インターネットで販売する場合には、店のURLを届け出る必要がある(URLの使用権限を証明する資料も必要)。申請から許可交付まで1か月以上かかることがあるため、スケジュールには注意したい。
また、一般社団法人日本ITAD協会では、適切に中古情報機器を取り扱う事業者に認定資格を付与している。「ITAD取扱者検定」の試験に合格し、資格を取得すれば、認定事業者を示すロゴマークの使用権利が得られる。認定事業者によって再生され、一定の基準を満たした中古パソコンには特別なラベルが添付される。消費者へ安心感を提供でき、競合店との差別化につながるだろう。
開業資金と運転資金の例
中古パソコンショップの開業にあたっては、主に次のような資金が必要になる。
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物件取得費:前家賃(契約月と翌月分)、敷金もしくは保証金(およそ10カ月分)、礼金(およそ2カ月分)など
※実店舗を持たない場合は不要
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内外装工事費、設備費:内外装工事、電気工事、商品棚、看板設置など
※実店舗を持たない場合は不要
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仕入れ費:商品の購入代金
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備品、システム導入費:パソコン、カメラ、周辺機材、作業台、POSレジ(在庫管理、売上管理、顧客管理)、ソフトウェア導入、インターネット回線開設費用など
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保証、修理部品費:修理・交換用部品、初期不良への補填費
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広告宣伝費:ホームページ制作費、SNS広告、チラシ印刷など
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その他雑費:事務用品、工具、水道光熱費、通信費、梱包資材、古物商許可申請など
以下、開業資金と運転資金の例をまとめた(参考)。前項の条件と同じく、どちらもスタッフを雇用しない前提とする。
日本政策金融公庫では、新規創業やスタートアップを支援する「新規開業資金」の貸付制度を用意している。新たに事業を始める人を対象に、通常より優遇された貸付条件が設定されているため、確認してみると良いだろう。また、小規模事業者を対象とした商工会議所の「小規模事業者持続化補助金」や、商工組合中央金庫など金融機関からの融資も利用可能だ。さらに、会計システムや受発注管理システム、POSシステムなどの導入に際しては「IT導入補助金」も活用できる。
売上計画と損益イメージ
最後に、中古パソコンショップを開業した場合の1か月の収支をシミュレーションしてみよう。前項で見た実店舗型とオンラインショップ型の損益イメージは以下のようになる(参考)。
売上見込みから支出見込み(前項、運転資金例)を引いた損益イメージは下記のようになる。
売上を着実に伸ばすためにも、商品販売後もメンテナンスや修理に対応して、顧客との関係性を継続していきたい。システムを活用してメンテナンスの記録などの顧客情報管理を行い、買い替え時期におすすめの商品を提案すれば、リピート率の向上にもつながるだろう。
実店舗を持つ場合は、直接商品に触れながら案内ができるため、顧客に安心感を与えられるメリットがある。丁寧なサポートを徹底し、地域で頼られるショップを目指したい。並行してオンラインショップも運営することで、在庫回転率の向上が期待できる。
実店舗は持たずオンラインショップのみ運営の場合は、いかに信用を得られるかが鍵となる。扱う商品やサポート体制、ユーザーのためになる情報をSNSなどで継続的に発信し、信頼を獲得していきたい。
※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
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