市場調査データ
カラオケボックス(2025年版)
2025年 9月 19日
「カラオケボックス」市場の拡大傾向が続いている。民間調査機関の調査によると、2024年度の国内のカラオケ市場規模(主にカラオケボックス運営事業者の売上高ベース)はおよそ3,200億円に上る。これは2021年度の1,740億円からV字回復し、コロナ前の水準(2018年度:約3,485億円)に迫る勢いだという(出典:2024年度「全国カラオケ市場」動向調査|株式会社帝国データバンク)。近年カラオケボックスは、従来の“歌う”目的にとどまらず、リモートワーク、DVD鑑賞、ライブビューイングなど用途が多様化し、余暇インフラとしての役割を持ち始めている。現在の利用目的や店選びの基準を探るために、20代以上の男女1,000人を対象にアンケート調査を実施した。
1. 現在の利用状況

まず、カラオケボックスの利用状況をたずねたところ、最多回答が「過去に利用したことはあるが、今は利用していない」の639人(63.9%)となり、以降、「年に数回程度利用している」の191人(19.1%)、「月に1回程度利用している」の44人(4.4%)、「月に2~3回程度利用している」の23人(2.3%)と続いた。現在のユーザー数は「週に2回以上」から「年に数回程度」の利用者を合算した274人(27.4%)となった。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳

カラオケボックスの利用状況を性別・年齢別に示したのが〈図b〉である。調査結果によると、女性については、全体的に「過去には利用していたが、現在は利用していない」という層が多く、特に30代から50代にかけてその傾向が顕著に表れている。20代は定期的な利用者が目立つ一方で、60代以上では「一度も利用したことがない」の割合も比較的多い。一方、男性は女性よりも全体的に利用頻度が高い傾向が見られる。なかでも20代・30代は他の年代と比較して高頻度のユーザーが多い。20代男性に至っては、「年に数回以上」利用している層が半数以上を占める。
年代別に見ると、20代から30代がカラオケボックスの主な利用層であり、男女ともに利用頻度が高いことが分かる。40代以降は徐々に利用頻度が下がり、「過去には利用していたが、今は利用していない」という回答が増加していく。60代以上では「一度も利用したことがない」と回答する人の割合も増えており、現在の利用は限定的である。
3. 利用の基準(現ユーザーおよび利用経験者)

「1.現在の利用状況」の設問で、カラオケボックスを利用している、または利用したことがあると回答した913人を対象に、カラオケボックスを選ぶ際に重視するポイントを聞いた。最多得票となったのが「価格の安さ」の365人(40.0%)で、その次に「立地の良さ(生活圏からの距離)」の284人(31.1%)、「施設の清潔さ」の126人(13.8%)が続いた。経済的メリットだけでなく店舗の清潔感、利用しやすさが重視されていることが示された。
4. 性別・年齢別に見た利用の基準の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

カラオケボックスを選ぶ際のポイントを、性別・年齢別に示したのが〈図d〉である。まず、女性では「立地の良さ(生活圏からの距離)」と「価格の安さ」を重視する傾向が強い。また、特に40代以降では「施設の清潔さ」や「飲食のクオリティー」を重視する傾向が強まる。「特殊なサービス」を重視する声は全体的に少なかった。一方の男性は、「立地の良さ(生活圏からの距離)」「価格の安さ」を重視している点は女性と共通しているが、「曲の充実度」への関心が高い傾向がある。50代以上の男性になると「立地の良さ(生活圏からの距離)」を重視する層が多くなる。
年代別に見ると、若年層(20〜30代)では、価格・立地に加え「曲の充実度」を重視する傾向があるが、中年層(40〜50代)になると、「施設の清潔さ」への比率が高まる。60代以上は、「立地の良さ(生活圏からの距離)」の回答が全世代で最も多く、より近場で利用できることが重視されていることが見て取れる。
5. 利用にかける費用(現ユーザーおよび利用経験者)

カラオケボックスを訪れた際に、1回で使用する金額を聞いた。最も多かった回答は「1,000円~2,000円未満」の391人(42.8%)だった。この回答と「2,000円~3,000円未満」の207人(22.7%)、「500円~1,000円未満」の196人(21.5%)を合わせて、500円~3,000円未満が8割以上を占めた。
6. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳(現ユーザーおよび利用経験者)

カラオケボックス1回の利用にかける金額を、性別・年齢別に見たのが〈図f〉である。30代から50代の女性では、「1,000円〜2,000円未満」の回答が最も多く選ばれており、カラオケにかける費用としては比較的控えめな傾向が見られる。いずれの年代でも「3,000円以上」を選んだ割合は非常に少なく、女性は総じてリーズナブルにカラオケを楽しむ傾向が強いといえる。
男性では、どの年代でも「1,000円〜2,000円未満」「2,000円〜3,000円未満」を利用する割合が高く、女性よりもやや高めの金額に推移している。年齢が上がるにつれて利用金額が上がる傾向が見られ、3,000円以上の利用や、極めて少数ではあるものの1万円以上利用するという回答も見られた。
どの年代を通しても、男女ともに「1,000円〜2,000円未満」を選ぶ人が多く、高価格帯(3,000円以上)を選ぶ人は少数にとどまった。カラオケは手頃な価格で楽しむ娯楽として定着している様子が見て取れる。
7. 利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

カラオケボックスを利用する理由をたずねたところ、最多の回答となったのが「友人・仲間と楽しむため」の616人(67.5%)。次点では「ストレス解消や気分転換」の157人(17.2%)が続いた。近年は「動画配信やSNS投稿用の撮影」や「勉強やミーティングの作業」のような、「歌わないカラオケ」としての利用が注目されているが、今回の調査ではそれぞれ4人(0.4%)、2人(0.2%)と1%未満にとどまった。
8. 性別・年齢別に見た利用する理由(現ユーザーおよび利用経験者)

カラオケボックスを利用する理由を性別・年齢別に見たグラフが〈図h〉である。女性は全年代で「友人・仲間と楽しむため」にカラオケを利用する傾向が強く、特に60代以上ではその割合が最も高い。30代女性では「一人で歌を楽しむため」の利用も比較的多い。歌以外の用途(作業や撮影など)での利用は、女性でほとんど見られない。
男性も「友人・仲間と楽しむため」の利用が中心であるが、30代ではその割合が他の年代よりやや低い。「一人で歌を楽しむ」「ストレス解消・気分転換」の割合が高く、個人利用の傾向が強いことが分かる。20代では「勉強やミーティングなどの作業」、50代・60代以上では、「音楽や歌の練習」「動画配信やSNS投稿用の撮影」といった目的も一部見られる。
どの世代でも「友人・仲間と楽しむため」にカラオケボックスを利用する割合が高いが、20代~30代では、「ストレス解消や気分転換」や「一人で歌を楽しむ」を選ぶ人も多く、個人利用のニーズが見える。60代以上は男女ともに「友人・仲間と楽しむため」の利用が中心となる。カラオケボックスを作業や撮影用に使う傾向は、いずれの年代でもごく一部にとどまった。
9. 今後の利用意向

アンケートの全対象者1,000人に今後の利用意向をたずねたところ、「どちらかと言えば利用したい」が283人(28.3%)で最多回答となった。これと「ぜひ利用したい」の159人(15.9%)を合わせた442人(44.2%)が利用意向のある割合となる。「どちらとも言えない」が249人(24.9%)、「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を合わせた利用に消極的な層も309人(30.9%)と、カラオケ離れの兆しもうかがえる。今後の利用促進には多様なニーズへの対応が求められそうだ。
10. 性別・年齢別の今後の利用意向

今後の利用意向を性別・年代別のグラフで示した。女性は年代が上がるにつれて、利用意向が低下する傾向にある。「ぜひ利用したい」「どちらかと言えば利用したい」と答えた積極層が、20代では約7割、30代女性では約6割にのぼる。一方、60代以上では「あまり利用したくない」「全く利用したくない」という否定的な回答が4割近くを占めている。
男性も20代~30代では肯定的な回答が5割以上に達し、比較的高い関心を示している。しかし50代以上になると否定的な意見が増え、「全く利用したくない」との回答率が高くなる。
カラオケの利用意向は若年層で高く、20代~30代では積極的な利用意向が過半数を超える。50代以降では否定的な回答が目立つようになり、60代以上では男女とも「あまり利用したくない」「全く利用したくない」が4割を超え、利用意欲は全体的に低下する傾向にある。
11. まとめ(ビジネス領域としてのカラオケボックス)
本調査「1.現在の利用状況」で、「過去に利用したことはあるが、今は利用していない」という回答が一番多かったことから、カラオケボックスはかつて広く利用されていたものの、現在は若年層や男性を中心とした一部の層での利用が多いことが明らかとなった。特に女性の30代以降では利用率、利用意向ともに低く、再訪を促すにはニーズに合わせた提案が必要である。
利用者が重視するのは「価格の安さ」や「立地の良さ」といった基本的な利便性であり、手軽さや身近さが依然として支持されている。若年層ではエンタメ性や個人利用といった新たな楽しみ方も浸透しており、今後は「歌う」以外の多目的な使われ方に対応する柔軟なサービス設計も求められそうだ。また、「5.利用にかける費用」で見られるように、1回あたりの支出は比較的抑えられており、満足度を高めるパッケージや利用促進策によって、単価の向上とリピーター獲得を図ることが重要である。今後の市場拡大には、SNSなどを活用した情報発信や若年層との接点強化が鍵となるだろう。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2025年4月26日~6月16日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2025年9月