市場調査データ

ペット美容院(2024年版)

2024年 5月 1日

長らく堅調に市場規模を伸ばし続けているペット関連ビジネス。多くの企業に大打撃を与えたコロナ禍さえも追い風にし、コロナ以前比で新規に犬猫を飼う人は増加したというデータもある。そんなペット関連ビジネスの一翼を担うペット美容院にも、ブームの恩恵は届いているのか。20代〜60代以上の男女1,000人を対象にしたアンケート調査の結果を基に、ペット美容院ビジネスについて考えてみる。

1. 現在の利用状況

〈図a〉ペット美容院の利用状況(n=1,000)
〈図a〉ペット美容院の利用状況(n=1,000)

ペット美容院の現在の利用状況は、「まだ一度も利用したことがない」という非ユーザーが全体の87.9%を占めた。ペットを飼っている人は23.2%いるが、そのうち11.1%はペット美容院を利用したことがなく、残りの12.1%のうち5.1%が現在は利用していないという。つまり、現在のユーザーは7.0%という結果になった。現ユーザーの利用頻度は「2〜3ヶ月に1回程度」が3.3%、「半年に1回程度」が2.1%、「月に1回以上」が1.1%の順。

ちなみに当サイトで2010年に実施したアンケート調査では、非ユーザーが88%と今回とほぼ変わらずで、利用率は8%となっていた。今回のアンケート調査において、2010年当時と比べてペット美容院の利用動向はほとんど変わらないか、若干減少しているという結果となった。

2. 利用しない理由

〈図b〉ペット美容院を利用しない理由(n=1,000)
〈図b〉ペット美容院を利用しない理由(n=1,000)

ペット美容院を利用しない理由について聞いた設問において、「ペットを飼っていないため」と「ペット美容院ユーザーなので、利用しない理由はわからない」を除くと、「そのほか」(5.7%)が最多になった。記述式設問の回答結果から、亀やハムスター、毛並みの短い猫といったペット美容院を必要としないペットを飼っている人がこの選択肢を選んだと推察できる。続いて、「自分でできるため必要性を感じない」(4.6%)、「価格が高い」(4.0%)、「何をしてもらえるかわからない」(2.3%)という順になった。

3. ペット美容院の利用にかける費用

〈図c〉ペット美容院1回の利用にかける費用(n=1,000)
〈図c〉ペット美容院1回の利用にかける費用(n=1,000)

ペット美容院1回の利用にかける費用については、「利用したことがない」(87.7%)を除くと、「5,000円〜7,000円未満」(4.8%)、「3,000円〜5,000円未満」(4.7%)がほぼ横並びに。続いて「7,000円〜1万円未満」(1.5%)、「1万円〜2万円未満」(0.6%)の順となり、「2万円以上」をかけるユーザーは0%という結果になった。

4. コロナ禍の影響

〈図d〉コロナ禍がペット美容院の利用に与えた影響(n=1,000)
〈図d〉コロナ禍がペット美容院の利用に与えた影響(n=1,000)

コロナ禍がペット美容院の利用に与えた影響に関しては、「利用頻度にも利用の基準にも影響はなかった」(94.1%)がほとんどを占めた。一方で、「利用頻度が減った」が2.2%、「一時的に影響はあったが、今はまた元に戻った」が2.4%となり、設問1における現在の利用率(7.0%)からすると、決して少なくないユーザーが利用頻度への影響を訴えていることがわかる。コロナ前後でペットの飼育頭数が増えたというデータはあるものの、本アンケート結果を見る限り、少なくとも現状でその恩恵がペット美容院にまで届いているとは考えづらい。また、1.2%は「利用の基準が変わった」としており、ペット美容院の利用にもコロナ禍の影響は小さくなかったことを示す結果となった。

5. 今後の利用意向

〈図e〉今後の利用意向(n=1,000)
〈図e〉今後の利用意向(n=1,000)

今後の利用意向に関しては、「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた利用に積極的な人の合計は9.9%となった。一方で、「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を合わせた利用に消極的な層の割合は59.2%。この数字は、設問1における現時点でペットを飼っていないという76.8%を大きく下回っている。記述式回答欄では「もし今後ペットを飼うことがあれば利用を検討する」という声が目立ち、こうした層が「どちらとも言えない」の30.9%に回ったと考えられる。

6. 性別・年齢別の今後の利用意向

〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)
〈図f〉性別・年齢別の今後の利用意向(n=1,000)

性別・年齢別の今後の利用意向を見てみると、利用に消極的な層は、30代女性の例外を除き、おおむね年齢が上がるほど高まっていく傾向があるといえそうだ。また「どちらとも言えない」を選んだ割合は、同じく30代女性の例外を除き、年齢が若いほど高まる傾向が見てとれる。特に20代男性では約半数が「どちらとも言えない」を選択している。

7. まとめ(ビジネス領域としてのペット美容院)

ペット美容院は、長らく堅調なペット関連ビジネスの中にあるが、少なくとも本アンケート調査においては2010年との比較でもユーザー数の明らかな変化などは見られなかった。ペット美容院の主なターゲットとなる犬の飼育頭数が全体的に減少傾向にあることなども、このような結果の背景にあるのかもしれない。ただ、東京23区におけるペットの美容院代は近年上昇傾向にあるという総務省統計調査の結果もあり、開業の検討にあたっては、こうした各種の調査結果も含めた複合的な視点が大切といえるだろう。今後の積極的な利用意向を持つ割合が9.9%と現ユーザー数を上回っていることも明るい兆しの一つと捉えることもできそうだ。

これまでに紹介したほかに、記述式回答欄に寄せられた利用に積極的な意見として「セルフカットとプロでは明らかに仕上がりが違う」「自分でやると時間も手間もかかるため、やってもらえるととても助かる」「たまにはオシャレさせてあげたい。キレイになるとワンちゃんも喜ぶ」「爪切り、足裏カット、肛門腺絞りなどのケアはプロに任せた方が安心」などが寄せられた。

一方で、利用に消極的な層からは「コストが高い」「物価高なので節約」といった価格に対する指摘が多かった。そのほかには、「ペットの世話は自分でしたい」「怖がりなので、美容院に行くことがストレスになりそう」「かかりつけ医がシャンプーカットもしてくれる」「どういったサービスを提供してくれるのかわかりづらい」「猫なので必要ない」などの声が挙がった。

こうした声や各種データを踏まえ、継続性のあるビジネススタイルをいかに見いだすかが起業創業のポイントとなってくるだろう。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)

調査概要

調査期間:

2023年11月9日〜11月17日

調査対象:

国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。
サンプル数(n)1,000人

調査方法:

インターネットによるアンケート調査

最終内容確認日2024年4月

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