市場調査データ
理容院(理髪店・床屋)(2024年版)
2024年 5月 17日
比較対象となることが多い美容室と比べると、店舗数の減少や担い手となる理容師不足などの側面がクローズアップされることの多い理容院(理髪店、床屋)。ただ、髪型のトレンドの変化などもあり、近年、その注目度が高まっているという声もある。理容院の利用状況や今後の利用意向などについて、20代以上の男女1,000人に聞いた。
1. 現在の利用状況
理容院の利用状況について聞いた設問において、「まだ一度も利用したことがない」の33.5%と「かつて利用したことがある」の16.3%を合わせた現在の非ユーザー割合は49.8%。現ユーザー(利用率)は50.2%となり、その比率はおよそ半々という結果になった。
現ユーザーの利用頻度は、「2〜3ヶ月に1回程度」の28.6%、「月に1回程度」の10.8%、「半年に1回程度」の7.3%の順となった。全ユーザー(50.2%)のうち大多数となる39.4%が、「2〜3ヶ月に1回程度以上」という高頻度で理容院を利用していることがわかった。
ちなみに、今回50.2%だった理容院の利用率に関して、当サイトで2009年に実施したアンケート調査では31%となっていた。また「まだ一度も利用したことがない」の割合は、今回の33.5%に対し、2009年当時は50%。少なくとも当サイトのアンケート結果を見る限り、およそ15年の間に理容院の利用率が19ポイント以上もアップした背景には、16.5%の非ユーザーがユーザーに転じたことがあると考えられる。
2. 性別・年齢別に見た利用状況の内訳
理容院の利用状況の性別・年齢別の割合を見ると、理容院のユーザーは男性に偏っていて、おおむね年齢が上がるほど高頻度の利用者割合が高くなっているのがわかる。ただし、高頻度で利用する女性ユーザーの割合も決して少ないというわけではなく、60代以上女性では40%を超えている。
3. 利用の基準
理容院を選ぶ際のポイントを聞いた設問において、「利用したことがない」の31.8%を除き最多となったのが「低価格、スピードや手軽さ」の29.7%。続いて、「家や職場、最寄り駅といった生活圏内からの距離」の15.0%、「スタッフの人柄や店内の居心地の良さ」の11.6%、「質の高さやメニューの豊富さを含むサービス面」の8.4%となり、「予約のしやすさ」を基準に理容院を利用しているユーザーは1.8%とわずかしかいないことがわかった。
4. 利用にかける費用
理容院1回の利用にかける費用については、「利用したことがないのでわからない」を除き、最も多かったのが「1,000円〜2,000円未満」の22.7%。これを含む5,000円未満のユーザーが57.3%と大多数を占めた。ただし、1回の利用に5,000円以上をかけるユーザーも9.7%いる。前の設問で「低価格、スピードや手軽さ」を求めている人が多いとわかったが、それなりの費用をかけて利用しているユーザーが一定数いるということは興味深い。当然、価格に見合うスキルやサービスが求められていると考えられる。多様化するユーザーニーズといかに向き合うかを検討することは、理容院をビジネスとして考える際には重要なポイントとなりそうだ。
5. 性別・年齢別に見た利用にかける費用の内訳
性別・年齢別に見た理容院1回の利用にかける費用の割合に関して、男性は各セグメントともにユーザーの大多数が5,000円未満であるのに対し、女性は5,000円以上かけるユーザー割合が比較的多い。特に20代〜40代の女性は、高額ユーザー割合が高い傾向があるようだ。記述式回答欄では「レディースシェービングの質」を求める意見も散見された。女性をターゲットとする場合、こうしたユーザーに求められるサービスとその品質を提供できるかといった視点も必要になってきそうだ。
6. コロナ禍の影響
コロナ禍が理容院の利用に与えた影響に関しては、「利用頻度にも利用の基準にも影響はなかった」が66.6%と最多になった。一方で「影響はあったが今はまた元に戻った」が15.3%、「利用頻度が減った」が14.7%に上ったことから、やはり大きな影響があったと考えることができそうだ。ただ、今回のアンケートの記述式回答欄において、「コロナ感染への懸念」に触れた意見は非常に少なかった。少なくとも理容院の利用においては、コロナ前の日常が戻りつつあると言えるのかもしれない。
7. 今後の利用意向
理容院の今後の利用意向について、「ぜひ利用したい」と「どちらかと言えば利用したい」を合わせた積極的利用意向を持つ人の割合は48.7%と、現在の利用率(50.2%)をわずかに下回った。ただし、「あまり利用したくない」と「全く利用したくない」を合わせた利用に消極的な層は31.3%と、現在の非ユーザー49.8%を大きく下回る結果になった。つまり、現在の非ユーザーも、一定数は今後ユーザーに転じる可能性を考えているのかもしれない。
8. 性別・年齢別の今後の利用意向
理容院の今後の利用意向について、性別・年齢別の割合を捉えた〈図h〉を見ると、積極的な利用意向を持つ層の割合は、比較的男性の方が高く、60代以上男性では8割を超えている。しかし、女性で利用に積極的な層も、例えば60代以上女性は5割近く、40代〜50代女性も4割弱に及んでおり、決してユーザー数が少ないわけではないことがわかる。記述式回答で指摘の多かった「理容院は男性」というイメージを、万が一理容院側が持ってしまうと、多くの見込み顧客にリーチできなくなるということは知っておいて損はないだろう。
9. まとめ(ビジネス領域としての理容院)
繰り返しになるが、理容院の利用率は50.2%と15年前の31%から20ポイント近くアップ。そして「まだ一度も利用したことがない」という非ユーザーは33.5%と、15年前の50%から16.5ポイントダウンしていることから、この15年間で理容院ユーザーが増加したことはまず間違いないだろう。
そこで注目したいのは、年々店舗数が増加している美容院とは異なり、理容院はその数を減らし続けているという点だ。例えば、厚生労働省統計「令和3年度 衛生行政報告例」によると、全国にある2021年度の理容院の数は11万4403軒で、2011年度の13万1687軒から10年連続で減少となっている。つまり店舗数が減少しているにも関わらず、ユーザーは増えている状況。これをビジネスチャンスと捉える人は少なくないかもしれない。
これまでに紹介していない記述式回答欄に寄せられた声のうち、今後の利用に積極的な層からは「身だしなみを整えるのに必要」「安くて早くてコスパがいい」「顔剃りなど美容室にはないサービスがある」「理容院の方が美容室より落ち着くし入りやすい」「おしゃれな美容室は気後れする」「子供は時間がかかると飽きるので、理容院で手早く済ませたい」「年頃の息子は、的確なカットに顔剃り、眉も整えてもらえていつも大満足です」などがあった。
一方、利用に消極的な層からは「男性が多いため行きづらい。入るのに勇気がいる」といった声が多数寄せられ、中には「以前、利用しようとしたら女性という理由で断られた」といった意見もあった。また「パーマやカラーをしてくれない」といった誤った理解も散見されたほか、「おしゃれにしてくれなさそう」といったイメージありきの声もあった。いずれにせよ、こうした声の裏には理容院に対する根強いイメージがあることが伺える。
消極層にリーチするかしないかは別として、新規で参入する場合、こうした理容院のイメージと現実のギャップを埋める努力をしていくことは、ライバルとの差別化を図る上での近道になるかもしれない。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を基にした一般的な内容になっています。個別の施策等を検討される際には、別途、専門家に相談されることをお勧めします)
調査概要
- 調査期間:
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2023年11月9日〜11月17日
- 調査対象:
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国内在住の20代男女、30代男女、40代男女、50代男女、60代以上男女。サンプル数(n)1,000人
- 調査方法:
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インターネットによるアンケート調査
最終内容確認日2024年5月