経営ハンドブック

商品開発・市場開拓のための事業化テストの取り組み方

利用者のイメージを明確にして調査する

新商品が開発できても、事業化するにはまだいくつものハードルを越えなければならない。採算性や安全性・耐久性、生産計画、原料調達、広告戦略など、さまざまな課題がある。中でも、商品に対する消費者の反応を見る過程は非常に重要である。

商品やサービスを試用した人の反応から、事業化の可否を判断するマーケティング戦略を「事業化テスト」という。そのポイントを見ていくことにする。

事業化テストのポイント

  1. 「4P」「4C」の観点で意見を聞く
  2. ターゲットを絞ってモニター調査する
  3. 開発担当者に任せる

1.「4P」「4C」の観点で意見を聞く

マーケティングの基本用語に「4P」と「4C」がある。売れる仕組みづくりに必要となる要素を言い表している。売り手側から買い手に与える影響の要素として製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)という4つのPがある。買い手の立場から4Pを再定義したのが4Cで、顧客価値(Customer Value)、顧客コスト(Customer Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)を指す。

これらの切り口を使い、「どのようなところが」「なぜ」「どのように」評価できるのかを掘り下げて聞くことが大切だ。

まずは、企業は4Pの観点から、「何を売るのか」=製品戦略、「いくらで売るのか」=価格戦略、「どうやって知ってもらうか」=販促戦略、「どこで売るのか」=流通戦略を組み立てる必要がある。これを顧客視点に置き換えたのが4C となる。具体的には、「どこに魅力を感じているか」=顧客価値、「値段は高いか、安いか」=顧客コスト、「入手しやすいか」=利便性、「商品の特徴やコンセプトが伝わっているか」=コミュニケーションだ。

企業が開発する商品やサービスに、4Cの観点から消費者に意見を聞くことで、ただ感覚的に捉えるのではなく、定量的、定性的に検証することが可能になる。

4P(売り手発想)から4C(顧客発想)へのシフト図

2.ターゲットを絞ってモニター調査する

筆記具メーカーA社は、新たなシャープペンシルの開発に当たり、マーケティングリサーチを行ったところ、ユーザーからの要望で圧倒的に多いのが、芯折れと芯詰まりの解消であることが分かった。これを受けて、性能の向上を実感しやすい「芯折れ」対策を課題として商品開発に取り組んだ。こうしてできたのが「芯が折れない」シャープペンシルである。

最終的な商品に至るまでには100もの芯折れ防止機能を持つ試作品を作った。この実用性を確認するために、モニター調査を実施した。対象は、学生だ。というのも、学生にとって、試験中に答案を書いている途中で芯が折れると大きなストレスになる。芯折れに厳しい目を持つ学生の意見が最も参考になると考えたわけだ。

学生のモニター調査からは、別の課題が浮上した。「音が気になる」という指摘が一部から上がってきたのだ。実際、芯折れ防止の機構から「カチカチ」という音がしていた。そこで、機構を見直し、操作音を抑えた。こうして、受験シーズン直前の11月に発売したところ、大ヒットとなった。

3.開発担当者に任せる

ユニークなアイデアを商品化しようと、社内の会議で提案したところ、さまざまな意見が出てきた。それらを取り入れたところ、個性が失われた当たり障りのない仕上がりとなってしまい、結果として、消費者の支持が得られなかった——。商品開発では、こうした失敗の話がよく出てくる。

定番商品のリニューアルを含め、年間1,000以上の商品を投入している玩具メーカーB社では、提案したアイデアが認められて商品化が決まると、ほとんどの商品は提案者1人で担当する体制を敷いている。商品の材質からパッケージデザイン、安全性の調査まで、製造を委託する協力メーカーなどと打ち合わせを重ねながら詳細を詰めていく。発売されれば店頭にも立つ。成否にかかわらず、売れ行きについても分析する。入社1年目の社員であっても、1人に任せている。

失敗もあるが、それは問わない。それどころか、過去に大きな失敗をした人間を積極的に登用するようにしているという。それは、「失敗は避けられない」「こうすれば失敗すると学んだ」という共通認識を社内で持っているためだ。「失敗=能力がない」とは考えないのである。

B社では、投入した商品のうち、3割ぐらいが成功しているという。失敗は挑戦の結果であり、1つの失敗、1人の失敗を次の成功に結びつけていくという発想だ。

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