ビジネスQ&A

事業を100%再エネ電力でまかなうことをめざすRE100には中小企業も参加できますか。

2021年 9月29日

製造業を営む中小企業です。カーボンニュートラルに関連して、環境省のホームページなどでRE100に関する記事を見ます。大企業が多く参加しているようですが、中小企業でも参加できるのでしょうか。

回答

RE100とは、事業を100%再エネ電力でまかなうことを⽬標とする国際的な企業連合です。1)
RE100の加入条件は中小企業にとっては厳しくなっています。
RE100に替わるものとして、「再エネ100宣言RE Action」という組織があります。
この組織の構成員は、日本国内の企業、自治体などの団体を対象としています。RE100の対象となる大企業等は対象外としており、中小企業向けです。100%再エネ電力に転換する目標を設定し、再エネ率向上等の進捗を毎年報告するなどの参加要件を満たせば参加できます。

1.RE100やSBTに参加するメリット 

RE100やSBT の中小企業版に参加する事業者が年々増えています。参加するメリットは以下のようなことが考えられます。

(1) 自社のカーボンニュートラルに向けての活動が促進される。

参加するとまず、CO2排出量削減や電力再エネ率などの目標設定を行い報告します。その後、年1回、それらの数値の進捗状況を報告します。それらはウェブ上で公開され、他社との比較もされます。そのため、活動の中断が避けられ、かつ、よい数字を出そうと活動に力が入ることが期待されます。

(2) ステークホルダーに対して環境対策をアピールすることができる。2)

SBTやRE100といった国際イニシアティブ と 同じ基準で 、中長期排出削減目標 ・再エネ電力 100%目標を設定することで、ステークホルダーに対して環境対策に取組む積極的な姿勢をアピールできます。

(3) 取引先のサプライチェーンの排出量削減に貢献できる。2)

顧客向けの部品製造等にかかった排出量情報を顧客に提供すれば、顧客のサプライチェーンにおける排出量算定に貢献できます。設定した自社の削減目標達成に向けて連係して削減を進めることは、顧客のサプライチェーン排出量が増大するリスクを低減させ、顧客との持続可能な関係を構築できます。

2.RE100とは 1)

はじめに大企業向けのRE100についてその内容を見てみます。
RE100(Renewable Energy 100%)とは、遅くとも2050年までに、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合です。

地球温暖化防止の観点から、化石燃料を使用し続けることが、事業に対するネガティブな評価となり、投資もしづらくなるリスクがあります。一方、多くの事業者が再エネ電力の必要性を発信することで再エネの市場規模が拡大します。
こうしたことから、日本でもRE100に参加する企業が増え、2021年7月27日現在、58社になっています。(注)58社の社名は参考資料1)のp.26参照

加入条件として、以下のいずれか1つ以上に該当する「影響力のある」企業となっています。

・グローバル又は国内で認知度・信頼度が高い

・主要な多国籍企業(フォーチュン1000又はそれに相当)

・電力消費量が大きい(100GWh以上)
 特例として現在、日本企業は50GWh以上に緩和されている

・RE100の目的に寄与する、何らかの特徴と影響力を有する
 基本的にグループで加盟。
 (但し、親会社と明確に分離したブランド、1TWh以上の消費電力量を満たす場合、例外的に子会社での加盟可能。)

中小企業では上記の加入条件を満たすのは困難です。そこで、「再エネ100宣言 RE Action」という新たな枠組みが設立されました。

3.再エネ100宣言 RE Actionとは 3)

RE100の中小企業版とでもいうべき組織です。

(1) 組織の概要

再エネ100宣言 RE Actionは、2019年に設立されました。 表1に示すように、4つの団体から成る協議会が運営しており、その事務局はグリーン購入ネットワーク内にあります。
対象は、日本国内の企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体であり、 RE100の対象となる企業(年間消費電力量が50GWh以上等の条件を満たす企業)は除外されます。   

表1 組織概要

名 称

再エネ100宣言 RE Action

設 立

2019年8月

再エネ100宣言
RE Action協議会

グリーン購入ネットワーク(GPN)
イクレイ日本(ICLEI)
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)

事務局

グリーン購入ネットワーク(GPN)内

 2020年10月現在、174団体が参加しています。
(注)この174団体の社名、団体名は参考資料 3)を参照

(2) 参加要件

参加した団体は次のことを実施しなければなりません。

①遅くとも2050年までに使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること。
・参加団体自身のウェブサイトへ宣言内容を記載すること
・中間目標の設定を推奨  例:2020年30%、2030年60%、2040年90%、2050年100%

②再エネの普及に関する政策提言への賛同

③消費電力量、再エネ率等の進捗を毎年報告すること。
・報告された各団体の再エネ率は「再エネ100宣言RE Action」のウェブサイトで公表される。

(3) 参加特典

・具体的な再エネ導入情報の収集や参加団体間の交流等を目的としたウェブ上の組織、「脱炭素コンソーシアム」に参加できます。このコンソーシアムでは、再エネ電力の需要側と供給側のマッチングの場も設けられています。

・RE100参加企業や、再エネ100宣言RE Action協議会メンバーとの交流

(4) 中小企業における事例

SBTまたはRE100に取り組んだ中小企業の事例が以下に掲載されています。

参考資料

回答者

エネルギー管理士 本橋 孝久