備えあれば憂いなし、BCPのススメ

災害時に地域住民が避難できる拠点を構築「そらちぶと調剤薬局」

2020年 2月 5日

そらちぶと調剤薬局(北海道砂川市、企業名:有限会社フライヤーズカンパニー)は国が推進する健康サポート薬局で、人口減少や高齢化が進み、医師不足も深刻化する地方で災害時に地域住民が安心して避難できる拠点づくりを進めている。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、道内全域がブラックアウト(全域停電)する中、市内で唯一通常営業を継続し、SNSのフェイスブックを通じ携帯電話の充電サービスを告知した。

人の命をつなぐ仕事

薬局全景
薬局全景

北海道砂川市は約1万7000人の人口のうち高齢者が約38%。医師不足もあり、都会以上に薬局や薬剤師と地域住民との結びつきが強い。そらちぶと調剤薬局の福地隆康社長は「営業時間外に患者さんの自宅に薬を届けるのは日常のこと」と話す。

幼少時に病弱で病院通いを繰り返したこともあり、早くから将来は病気で困った人を助ける側になりたいと考えていた。だから介護支援専門相談員やホームヘルパーの資格を取った。調剤薬局開業後に地域で発生した落雷で一時、調剤機器をはじめ、すべての自社店舗内の電気機器が使えなくなり、営業が中断し困った経験もあった。

あるとき、知人から災害時の避難施設等向けLPガス発電機等の導入には国から補助が出るという情報を入手する。「災害時に自社店舗を一時避難施設にすれば、人の命をつなぐ薬局の使命が全うできる」と考えた。

災害時避難所協定を締結

福地社長は砂川市役所へ相談に出向き、市と避難所提供協定を締結。2017年度の補助事業を申請し、採択を受けた。投資総額の3分の1は自己資金で、災害時に地域住民が安心して避難できる拠点づくりに重きを置いた。LPガスの貯槽、ガスヒートポンプエアコン(GHP)、非常用LPガス発電機など発電設備機器に加え、炊き出しステーションやLED投光器も備えた。

災害時に発電できる機能は重要だ。夏場や冬場などに停電で少しでもエアコンが停まると、熱中症などの体調不良で被災者や避難者は命の危険に直面する。LPガス発電機等を備えれば停電時でもエアコンをはじめ様々な電気機器を使用できる。LPガスはタンクや貯槽等の容器で個別供給するため災害時に独自運転が可能だ。軽油や重油を使ったディーゼル発電機と比べ燃料の再調達や保管、移動等でも優位性がある。二酸化炭素(CO2)の排出量が少なく振動や騒音が少ないなど環境面でのメリットもある。同社が導入したLPガスは停電後30秒以内に自動稼働する仕組みで、貯槽容量は1トンと、一般的なLPガスボンベの20本分。通常で300時間以上の運転が可能だ。

同社の待合スペース及び施設全体は約30名の受入れが可能。温かい食事のケアができるように炊き出しステーションも準備した。羽釜、鍋、鋳物コンロや調理台があり、ご飯と汁物約100人分の同時調理ができる。

北海道胆振東部地震で地域貢献

充電可能告知をしたフェイスブックの画面
充電可能告知をしたフェイスブックの画面

設備導入から1年もたたない2018年9月6日未明。最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が発生した。震源に近いところでは大規模な土砂崩れが発生し、人命も失われた。地震発生直後から道内のほぼ全域で電力が止まるブラックアウトも起きた。

本来は停電後30秒後に非常用発電機が自動稼働するはずの同社でも、薬局施設全体を動かすためのアンペア数が足りず、稼働して直ぐにブレーカーが落ちてしまった。機器が起動するときの使用電力が計算上と食い違っていたからだ。福地社長はすぐに工事に携わった電気会社に事態収拾を依頼して復電を図った。

高齢者安否確認では市役所や消防署などの関係部署と連絡を取り、対応をすり合わせた。さらに市役所から携帯電話の充電サービス所としての依頼を受け、自社のSNS(フェイスブック)でも告知した。

福地社長は「土地柄か携帯電話の充電に来店した人は僅かだったが、結果的に市内で唯一通常営業を継続したし、地域への貢献ができた」と思う。今後も「より暮らしやすい地域実現のために、関係機関との連携を行っていきたい」と話している。

企業データ

企業名
有限会社フライヤーズカンパニー
Webサイト
資本金
300万円
従業員数
7名(2019/8/31現在)
代表者
福地 隆康 氏
所在地
北海道砂川市空知太東1条3丁目1番15号
創業
2000年(平成12年)
業種
調剤薬局

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