中小企業の海外展開入門

STEP5「現地の人材育成」

1. 進出がゴールでない

すでに海外進出している中小企業が認識している経営課題には、現地マネージャー層の不足、賃金上昇、品質問題、税制・法制度の変更、為替の急激な変化、労務管理、競争激化による採算の悪化などがあげられています。
これらを克服しない限り、海外事業の継続および拡大は難しいといえます。また、これらはこれから海外進出を行う企業にとっては事前に認識しておかなければならないリスクといえます。

2. 息の長い事業運営には現地人材の育成は不可欠

労務問題では、どの企業とも現地従業員の定着や現地幹部の育成に苦労しており、現地に定着し息の長い事業運営をするうえで、現地人材の育成制度構築が不可欠です。例えば、世間相場以上の給与水準の確保や日本への研修制度および管理職への抜擢等、従業員にインセンティブを与えることが有効です。

一方で日本人の経営者や管理者そのものの魅力を高めることも有効です。
中小企業では海外派遣人材の育成までなかなか手が回らないのが実情ですが、海外赴任前に研修を受けさせる等必要な手立てを講じたうえで海外に送り出しましょう。

また進出企業の工場・品質改善のため専門家の活用も考慮しましょう。

3. 撤退をも考慮した海外進出

最後に検討すべきことが「撤退戦略」です。
進出の準備段階から撤退を検討することは本末転倒と感じるかもしれませんが、明確な撤退戦略を有していなかったためにズルズルと赤字経営を続けてしまうケースも多々あります。
何年間で回収できなければ、あるいは黒字展開できなければ撤退する、また、撤退する場合にはネックとなるような合弁契約や投資認可となっていないか等、しっかりとしたリスクマネジメントを行っておきましょう。

<林 隆男 ライジングコンサルタンツ(株)代表取締役 中小企業診断士・ITコーディネータ/飯野恵美 中小企業診断士>


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