業種別開業ガイド

高齢者向賃貸住宅経営

  • 高齢社会の到来により、賃貸住宅市場においても早急な対応が望まれているが、介護サービス、食事サービスなどの高齢者向けサービスを付加した民間の賃貸物件はきわめて少ない。
  • 介護保険法により、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護老人福祉施設に入所できない入所希望者の増加が予想されることからも、高齢者向け賃貸住宅の需要は今後さらに高まるとみられている。
  • 高齢者向け賃貸住宅の運営では、高齢者に対する知識や介護の技術、運営ノウハウなどが要求されるため、地主が運営会社や不動産管理会社などに建物を一括で貸し付け、賃料収入のみを得るのが一般的である。また、参入した以上、簡単には撤退できない長期事業となることを十分に心得ておく必要がある。

1.起業にあたって必要な手続き

高齢者向け賃貸住宅を建設し、運営会社や不動産管理会社などに一括で賃貸する(賃料収入を得るのみの)場合、建物建築にかかわる規制(都市計画法、建築基準法)の適用を受けるだけで、事業開始に伴う特別な許可を得る必要はない。

地主自らが高齢者向けサービスを提供する事業主体となる場合は、注意が必要である。有料老人ホームやケアハウスなどとの区別が微妙となるため、事業計画を持参し、事前に各都道府県の担当部署に相談する必要がある(開業後に有料老人ホームやケアハウスとみなされた場合、事前の届出がなかったとして罰せられる可能性もある)。

また、「高齢者向け優良賃貸住宅制度」を活用して、建設費の助成、住宅金融公庫の低利融資や家賃補助などの優遇措置を受けることができる。その場合、事前に供給計画を策定し、都道府県知事の認定を受ける必要がある。

2. 起業にあたっての留意点・準備

1)事業の設計

高齢者向け賃貸住宅の経営を考えた場合、土地・建物の所有者、事業主体の間で、いくつかの事業方式が想定される。まず、個々の事業方式の可能性、メリット・デメリットなどを検討したうえで、具体的な事業設計に取り組むことが必要である。

建物所有者が地主、事業主体は運営会社

地主が賃貸住宅を建設し、高齢者向け住宅関連事業で実績のある運営会社に一括で賃貸して賃料収入を得る方式。運営会社が建設協力金を差し入れる(設計に関与する)場合もある。運営会社が、高齢者の入居斡旋からサービス全般を提供する。

建物所有者が地主、事業主体は管理会社

地主が賃貸住宅を建設し、不動産管理会社などへ一括で賃貸して賃料収入を得る。不動産管理会社などが自社で対応する基礎的サービス(緊急通報、フロントサービスなど)のほか、外部の専門会社に外注するなどして専門サービス(介護、食事サービスなど)の体制を整える。

建物所有者・事業主体共に地主

建物の所有者である地主が事業主体となる。豊富な人材と資金力を有する法人地主、あるいは、少人数の高齢者を抱えてアットホームなサービスを提供する個人地主などが想定される。

建物所有者・事業主体共に運営会社・不動産管理会社など

建物所有者および事業主体が、運営会社や不動産管理会社などのケース。a.地主から土地を借りて建物を建設する、b.寮・社宅などを買い上げて改装する、などが想定される。

2)経営上の留意点

立地条件の検討

高齢者の外出や家族の面会を考えると、駅から10分以内の立地が望ましい。駅から遠い地域では、来訪用の駐車場や高齢者の送迎用 マイクロバスの用意なども望まれる。

入居者の費用負担の軽減

賃貸住宅建設に公的助成制度を活用するなどして、入居者の費用負担を抑える配慮が必要である。毎月の家賃額を抑える代わりに、入居時の一時金を多めに設定することなども検討できる。

高齢者向けの施設・サービスの検討成

バリアフリーや快適性などの点で建築当初からの配慮が求められるほか、食事や介護など、高齢者向けのサービスを提供する体制が必要である。また、トラブルを避けるためにも、サービス内容と料金を明確にして、入居前に十分な説明を行っておく。サービスを選択制とするのもよい。

事業立ち上がりまでの運営資金の確保

満室稼働までの期間は一般的な賃貸住宅よりも長くなる。事業が軌道に乗るまでの間、ある程度の運営資金が必要になることにも留意が必要である。

必要資金、収支計画

立地や規模、設備、サービス内容などによって、必要資金や売上・経費は大きく異なる。各自の条件に応じた収支計画を慎重に検討してみることが必要である。

最終内容確認日2014年2月

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