業種別開業ガイド
登山用品店
- 登山用品店は、登山に関連する用具、アウトドア用品、衣料、雑貨などを販売する専門店である。登山と一口で言っても、ピッケルやザイルなど専門的な道具を使用し高度な技術を要する山岳登山からピクニックやハイキング、キャンプなどの軽登山まで様々な形態がある。
- 総務省が2011年に行った「社会生活基本調査」によれば、日本の登山・ハイキング人口(行動者数)は、男女計で1,046万人と推定されている。登山・ハイキング人口の内訳を見ると、60~64歳が男女合わせて130万人と最も多い。次いで、65~69歳(同92万人)、40~44歳(同91万人)、35~39歳(同91万人)の順に登山・ハイキング人口は多いと推測される。
また、ピクニックやハイキングなどの軽登山においては高年齢層の割合が高い。かつての百名山登山ブームは落ち着いてきたものの、高年齢層は総人口の層が厚いうえに登山を楽しむ時間と金銭的余裕が他の層と比較して多いことから、高年齢層を中心に今後もレジャーとしての登山人気はしばらく続くと考えられる。
- 登山用品を扱う店舗については、登山用品専門店のほか、総合スポーツ用品店でも一通り取り揃えていることが多い。また、一部の装備品やアウトドア用品に関しては、ホームセンターやディスカウント店でも販売されており、衣類に関しては、一般の衣料品店でもアウトドアに適した機能性のある衣服が扱われるようになるなど、登山関連用品の流通経路は多様性を増している。
- 登山用品店の主な取り扱い品目は、吸汗速乾や防寒など機能性のある衣類、登山靴、雨具、ザック、ヘッドライト、食器類、テントなどのキャンプ用品である。「山ガール」と呼ばれる若い女性に支持されているファッション性の高い衣類も人気が高く、ファッション性の向上がさらに若者の関心喚起につながる、という好循環も期待される。
1.起業にあたって必要な手続き
登山用品店を開業するにあたって必要な許可、申請はとくにない。一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。
2. 起業にあたっての留意点・準備
・品揃え戦略
近年の登山人気を背景に、大手登山専門店は、郊外や都心部に大型店舗を出してきている。小規模店舗では、価格や品揃えで大手量販店には対抗できないため、専門性を打ち出すことが重要となる。登山用品店は、本来は専門性の高い用品を扱う店舗であったが、裾野が広がってきているため、どの分野や購入層をターゲットにするかをしっかりと想定することが肝要である。専門的な分野を極めるのであれば、クライミング、沢登り、山スキーなど自社の強い分野に集中する、あるいは、人気の高まっているファッション性を重視したスタイルを売りにするのも一つのアプローチであろう。
ただ、登山用品の幅は広いと言っても、一般消費者の認識では「登山」の一口でくくられてしまうのが現状である。専門分野に特化した店舗であっても、大型店舗が近隣にない場合は、最低限のビギナー向け衣類や装備品なども揃えておくと近隣消費者の需要に応えられるだろう。
登山用品には既に認知され高い評価を得ているブランドのほか、新たなブランドも多数登場してきている。新興ブランドは販売網が未熟であることが多いので、仕入れの際に有利な条件で取引してもらえる場合が多い。老舗ブランドだけでなく、新興ブランドの優秀な商品を発掘し取り扱うことで、有利な条件で仕入れ、かつ、品揃えに独自性を生み出すこともできる。
・販売戦略
一般に、登山の初心者は、専門店やメーカー直営店など専門スタッフが応対する専門性の高い店で購入する傾向がある。専門性の高い店舗を目指すなら、登山経験の豊富なスタッフなど、購入者へのアドバイスや相談に応じられるような人材の確保も重要である。
一方、登山用品に関してはその季節性や専門性の高さゆえ、品揃えの充実と売れ残り在庫発生リスクとのトレードオフのコントロールが難しい。その点、ネット販売はその課題の解決になりうる。定番用品や在庫リスクになりやすく店舗で扱いにくい商品に関しては、ネット販売を併用すると良いだろう。
3. 必要資金例
店舗面積20坪、地方都市の商店街に出店する際の必要資金例
4. ビジネスプラン策定例
1) 売上計画例
2)損益計算のシミュレーション
- ※従業員は社員1人を仮定
- ※初期投資一括計上分は、開業費の金額
- ※減価償却費は、設備工事費・什器備品費等の額を5年で償却したもの
- ※必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
最終内容確認2013年11月