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外国語教室

2023年 10月 27日

トレンド

外国語教室のイメージ01

近年、企業活動のグローバル化や早期英語教育の関心の高まりから外国語教室の需要は拡大していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で語学ビジネス市場は大きな打撃を受けた。外国語教室は基本的に対面授業を行っていたためレッスンができなくなり、海外へ行く機会も制限されニーズが減少した。

コロナ禍で対面授業を行えず、非対面型レッスンを取り入れた外国語教室は多い。ライブ配信サービスを活用したオンラインレッスンや、AIアプリでの学習など、多様な学習方法を取り入れるようになった。アフターコロナも、これまでの対面授業に加え自宅での学習を効率よくサポートするなど、利便性の高いサービスを提供して受講生の獲得を狙っていく流れだ。

コロナ禍を経て、海外渡航もいよいよ回復の兆しが見える。経済産業省の「第3次産業活動指数」を見てみると、航空旅客輸送業は2021年1月を境に緩やかな回復傾向が続いており、国際旅客運送業においてもコロナ禍からの回復途上にあることが分かる。

鉄道旅客輸送業・航空旅客輸送業の回復状況

ビジネスのグローバル化や海外渡航の回復、小学校英語教育の必修化などにより、外国語教室へのニーズが再び高まることが予想される。

外国語教室は初期投資が比較的小額で済むため、小規模な無認可校(個人経営)が多い。英語以外にも、中国語・韓国語・フランス語・イタリア語・スペイン語・ドイツ語などの教室がある。

形態としては、「大人数制」「少人数制」「マンツーマン」「オンライン外国語講座」がある。

(1)大人数制

1人の教師に対して複数人〜十数人の生徒がついて勉強するスタイル。「一人ひとりに目が行き届きにくい」といったデメリットはあるが、ディスカッションなど大人数だからこそできる実践的な授業が可能だ。

(2)少人数制

外国語教室で比較的よく見られるタイプで、1人の教師に対して少人数(2~5名程度)の生徒がついて勉強していくスタイル。生徒の外国語の習熟には効果的で、受講料も確保しやすい。

(3)マンツーマン

教師1人に対して生徒1人で授業していくスタイル。生徒に付ききりで向き合うことになるため、生徒の習熟スピードは速くなる。ただし、その時間中に得られる受講料はその生徒1人分のみとなるため、受講料の設定は慎重に行う。

(4)オンライン外国語講座

教室に通わずにパソコンやスマホでレッスンするスタイル。感染予防の観点からも、オンライン授業のニーズは高い。生徒は受講費や交通費を抑えられ、経営側は教室の維持費を抑制できるというメリットがある。

近年の外国語教室事情

経済産業省の「外国語会話教室の動向」では、同省の特定サービス産業動態統計をグラフ化している。下図は、外国語会話教室の売上高と前年同月比の推移である。

外国語会話教室の売上高と前年同月比の推移

2020年1月の外国語教室の市場規模は、70億円を超えていた。その頃、日本で初めて新型コロナ感染者が確認された。

新型コロナの報道が盛んに行われるようになった2020年3月には、市場規模は一気に縮小し60億円を割る程度まで下がる。さらに、緊急事態宣言が発令された4~5月についてはこの傾向が顕著で、4月時点で市場規模が40億円まで落ち込み、5月には30億円と4割近くにまで減少した。

2021年1月には一旦上昇に転じるも、4月からは緩やかに減少傾向で、2022年12月時点の売上高は55億700万円となっている。

また、受講生数は35カ月連続で減少しており、2022年12月時点で33万9,632人(前年同月比▲8.0%)となっている。

外国語会話教室の受講生と前年同月比の推移

外国語教室は、日本や諸外国の経済状況の影響が如実に表れる。下図は、経済産業省が作成した外国語会話教室の売上高と受講生数の推移だ。2000年以降上昇傾向にあったが、2007年の大手英会話教室閉鎖や2008年からのリーマンショックの影響を受け、急降下しているのが分かる。

外国語会話教室の推移

今後、アフターコロナで経済状況が安定していけば、外国語教室も比例して市場規模の上昇が期待できるだろう。現に2022年12月時点では、新規受講者数が前年同月比で+2.6%の増加と、やや盛り返しを見せている。

外国語教室の中には、社会人向けのサービスを拡充しているところもある。例えば、海外事業を拡大する企業に従業員研修の一環として外国語講師を派遣したり、自宅学習できる利便性の高いサービスを提供したりしている。また、お酒を飲みながら外国語を教える教室や、1~3カ月の短期集中型の語学学校など、受講者のニーズに合わせた多様なサービスが生み出されている。

外国語教室の仕事

外国語教室での仕事は、主に「スクール運営/管理業務」「企画営業」「講師」に分けられる。それぞれの具体的な仕事内容は、以下のとおり。

  • スクール運営/管理業務:受付、問い合わせ対応、生徒・保護者対応、生徒面談、スケジュール管理、講師採用・マネジメント、経理事務、教材の在庫管理・発注、各種書類作成など
  • 企画営業:イベントの企画・運営、法人営業など
  • 講師:外国語を教える、指導プランを作る、授業の準備、生徒の進捗状況管理など
外国語教室のイメージ02

外国語教室の人気理由と課題

人気理由

  1. 2020年度より小学校3年生から英語教育が必修化され、ニーズが高い
  2. 資格が不要で、誰でも開業可能
  3. 開業費用が比較的安い

課題

  1. 受講者のニーズに合わせた魅力的なサービスの提供が求められる
  2. 講師はコミュニケーション能力に長けた優秀な人材を獲得する必要がある

開業のステップ

学校法人を設立する場合は都道府県知事の認可を必要とするが、個人経営では認可を受けなくても開業できる。ここでは、「個人事業主として起業」「フランチャイズに加盟する」という2つの方法を紹介する。それぞれの開業ステップは、以下のとおり。

開業のステップ

外国語教室に役立つ資格

外国語教室を開業するにあたって必要な資格は特にない。ただし、以下の資格を取得していれば顧客の信頼を得るのに役立つ。また資格を持っていなくても、外国語を教えた経験や留学経験、海外勤務経験などがあればアピールすると信頼感につながるだろう。

・語学関係の資格
TOEICや英検など知名度の高い資格を取得しておけば、生徒や保護者の信頼を得やすい。

・子どもに特化した指導の資格
子ども向け外国語教室を開業する場合は、J-SHINE*などの資格を取得しておくと自信を持って指導できる。

*J-SHINEの詳しい情報は、こちら(特定非営利活動法人 小学校英語指導者認定協議会)をご確認ください。

・外国語の教員免許
外国語の教員免許があれば生徒や保護者の安心感につながるため、積極的にアピールしたい。

開業資金と運転資金の例

開業にあたって必要になる費用としては、以下のようなものがある。

  • 物件取得費:初月家賃、敷金、礼金、保証金(家賃の6~10ヵ月程度のことが多い)など
  • 教室工事費:内装、看板、教室出入口の錠工事など
  • 設備費・備品費:机・椅子・パーテーション・パソコン・エアコンなど
  • 教材事務用品費:教材、文具など
  • 広告宣伝費:ホームページ制作費、広告チラシ制作費、印刷費など
  • 市場調査費:授業料の設定や教室の立地調査など
  • 求人費:求人媒体の利用費、人材紹介費など

また、フランチャイズの場合には、別途加盟金や研修費が掛かる。

外国語教室を開業する際は、個人とフランチャイズ加盟とで開業資金と運転資金が異なる。自宅を教室として活用する場合は、物件取得費と物件賃貸料が不要となり開業資金を抑えることができる。

開業資金と運転資金の例を表にまとめた(参考)。

開業資金例
運転資金例

売上計画と損益イメージ

外国語教室の売上計画を立てるには、初めに以下を設定する必要がある。
・入学金の有無
・月の授業料
・何人の生徒を抱えられるか

自宅に外国語教室を開業した場合の年収イメージをシミュレーションしてみよう。

入学金:20,000円
月の授業料:12,000円(月4回レッスンとして、1回あたりのレッスン単価は3,000円)
生徒数:55人(下のような時間割でグループレッスンを行うイメージ)

時間割例

このように設定した場合、
入学金:1,100,000円(1人20,000円×55人)
月の授業料:660,000(1人12,000円×55人)
初年度売上高:9,020,000円
となる。

次に、損益イメージを算出してみよう。

上表の運転資金例(個人)を想定すると、
年間支出:約4,800,000円
初年度売上高:9,020,000円
売上総利益:約4,220,000円(売上総利益率:53%)
となる。

これはスタッフ1名を雇用した例のため、全ての業務を自分で行えば、利益はさらに増える。また、週2~4回のレッスンプランや、少人数クラスなどを設ければ、売上アップを図ることが可能だろう。

外国語教室のイメージ03

※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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