税制メリット

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)

2023年1月内容改訂

もしも、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったら。そんなもしもの時に頼りになるのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)です。いざという時、担保なし保証なしでスピーディに借入することができます。

連鎖倒産の危機

私は、銀行員時代に「取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった」という企業をたくさん見てきました。経営セーフティ共済(当時は「倒産防止共済」と呼んでいました)に加入していて、連鎖倒産を免れた企業もありました。

取引先が倒産すると、経営への影響は避けられません。月末に入ってくるはずのお金が入ってこず、資金繰りがひっ迫し、連鎖倒産の危機が迫ります。資金的にも精神的にも追い詰められていきますが、経営セーフティ共済に入っておけば、そんな危機を免れることができるかもしれません。いざという時のために、真剣に経営セーフティ共済加入を検討してはいかがでしょうか?

法人はもちろん、個人事業主や組合も加入できる

経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供している共済で、中小企業者の連鎖倒産を防ぐための公的制度です。対象は、継続して1年以上事業を行っている中小企業者で、個人事業主や組合も加入することができます。令和4年3月末現在で、約59万の企業等が加入しています。

経営セーフティ共済の加入状況

こんな時に借入できる

取引先が倒産したことで売掛金債権等が回収困難になった時に、共済金を借入できます。たとえば、取引先が破産手続開始の申立てを行った時(法的整理)です。これでは、売掛金や受取手形の回収が困難になります。あてにしていた代金が回収できず、あなたの会社まで資金繰りに困ってしまいます。経営セーフティ共済に加入しておけば、回収困難になった売掛金等の金額まで、スピーディに借入することができます。

注意したいのは、「取引先の夜逃げ」です。夜逃げの場合は、共済貸付金の対象になりません。

共済貸付金の対象となる倒産

共済貸付金の対象となる倒産

共済金の借入ができるのは、納付した掛金総額の10倍までです。たとえば、納付済みの掛金が100万円あれば、1,000万円(100万円×10)まで借入できます。この場合、回収困難になった金額(売掛金など)が500万円だったら500万円、1,000万円だったら1,000万円借入できます。回収困難になった金額が1,000万円を超えていても、借入額は(掛金総額の10倍の)1,000万円までです。

掛金は、最大で800万円まで積み立てることができます。800万円まで積み立てれば、最大で8,000万円(800万円×10)まで共済金を借入できます。

毎月の掛金と借入可能金額

では、掛金は月いくらから積み立てることができるのでしょうか? 経営セーフティ共済の掛金は、月5,000円から(最大で月20万円まで)積み立てることができます。たとえば、月1万円を3年間(36か月)積み立てれば、積立総額は36万円です。この場合は、いざという時に360万円(36万円×10)の共済金借入を受けることができます。

掛金は、掛け捨てではありません。掛金を12か月以上納付すれば、解約手当金が戻ってきます。任意解約(契約者が任意に行う解約)の場合、12か月の納付で80%、40か月以上の納付で100%の解約手当金が戻ってきます。

掛金は、途中で増額することも減額することもできます。掛金は損金(法人の場合)、必要経費(個人事業主の場合)に算入できるため、節税効果も期待できます。

取引先が倒産しなくても借入できる

経営セーフティ共済には、「一時貸付金」という制度があります。急に資金が必要になった時は、取引先が倒産しなくても、解約手当金の95%を上限に借入できます。担保や保証人は必要ありません。

経営セーフティ共済は、金融機関(銀行、信用金庫)、商工会・商工会議所などで申し込むことができます。たとえば融資取引をしている銀行や、会員になっている商工会に行き、「経営セーフティ共済の加入を検討したい」と言えば、詳しい説明を受けることや申込み手続きができるでしょう。

まとめ

  1. 「経営セーフティ共済」は、中小企業者の連鎖倒産を防ぐための制度。いざという時に、担保なし保証なしで借入できる
  2. 継続して1年以上事業を行っている中小企業者が対象で、個人事業主や組合も加入できる
  3. 最大8,000万円まで共済金を借入可能
  4. 取引先が倒産しなくても借入できる「一時貸付金」制度もある
  5. 金融機関(銀行、信用金庫)、商工会・商工会議所等で申し込むことができる

※ここに掲載されている制度内容は変更される場合もありますので、最新の制度を確認の上、お手続きください。