税制メリット

地域未来投資促進法による支援

2023年1月内容改訂

「その地域ならではの魅力」は、代替可能性の小さい貴重な資源です。このような魅力を発掘し、育て上げることは、地域経済の活性化につながります。地域未来投資促進法では、地域の特性を活用した事業の生み出す経済的効果を最大化すべく、地方公共団体等への支援を通じて地域の事業者をサポートしています。

地域未来投資促進法とは

2015年版小規模企業白書では、「多様な機能を有する地域のコミュニティが持続し、地域を活性化するためには、地域に存在する魅力を掘り起こし、面的・横断的に捉え、創造的な発想・取組により、地域の魅力を内外に対して広く浸透させていくことが重要である」と指摘されています。また、「国の関係省庁、地方公共団体及び支援機関等が適切に連携を図ることにより、効果を高める」ことが明記されました。

その後、平成29年に、地域の特性を活用した事業の生み出す経済的効果に着目し、これを最大化しようとする地方公共団体の取組を支援することを目的として、地域未来投資促進法(正式名称:地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律)が施行されるに至っています。

地域未来投資促進法による支援を受けるには

1.地域未来投資促進法による支援の構造

その地域がどのような特性を有し、また、今後どのようにその特性を活用していくかは、地方公共団体の運営にも関わります。そこで地域未来投資促進法では、市町村や都道府県、支援機関(地方公共団体)が主体となって地域の事業者を支援する形をとっています。

地域未来投資促進法による支援の構造

出典:経済産業省ウェブサイト

2.市町村及び都道府県の基本計画

地域未来投資促進法を活用して事業者の支援を行うことを希望する市町村及び都道府県は、国の基本方針に基づいて基本計画を策定し、国の同意を受けます。基本計画の策定そのものに事業者は関わりませんが、その内容のうち、地域経済牽引事業として求められる事業内容に関する事項は、事業者が地域経済牽引事業計画を策定するにあたり参照するものとなります。市町村や都道府県が、その地域のどのような特性をどのような分野に活かすかを宣言しており、そのために支援対象となる事業者にどのような要件を求めるのかを明らかにしています。

3.地域経済牽引事業計画の承認

地域未来投資促進法による支援を受けることを検討している事業者は、自社の立地する地域に基本計画が存在し、その内容が自社に関連するものかどうかを確認する必要があります。基本計画に盛り込まれる推進したい分野と代表的な取組内容を以下に挙げます。

基本計画に盛り込まれる推進したい分野と代表的な取組内容
出典:経済産業省ウェブサイト「地域未来投資促進法について」

自社の取組が基本計画に合致し、地域未来投資促進法による支援を希望する事業者は、地域経済牽引事業計画を作成し、都道府県の承認を受ける必要があります。この計画は基本計画に基づき、1.地域の特性を生かして、2.高い付加価値を創出し、3.地域の事業者に対する経済的効果を及ぼす事業でなければなりません。

地域経済牽引事業計画の作成にあたっては、経済産業省のガイドラインを参照するとよいでしょう。また、申請先の都道府県のWebサイトに記載例が公開されています。記載例が基本計画の内容をどのように取り込んでいるのかを見ることで、地域の特性を活かした事業のイメージを作っておくと、計画を作成しやすくなります。

地域未来投資促進法に基づく支援措置の内容

1.税制による支援措置

a.地域未来投資促進税制

地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業は、その計画に従って建物・機械等の設備投資を行う場合に、法人税等の特別償却(最大50%)または税額控除(最大5%)を受けることができます。この制度を利用するためには、国による課税特例の確認に加えて、租税特別措置法等の規定に適合する必要があります。課税特例の確認には課税特例の要件と上乗せ要件があり、それぞれ以下のとおりです。

<課税特例の要件>
  • 先進性を有すること
  • 設備投資額が2,000万円以上
  • 設備投資額が前年度減価償却費の10%以上
  • 対象事業の売上高伸び率がゼロを上回り、かつ、過去5年度の対象事業に係る市場規模の伸び率より5%以上高いこと
  • 旧計画が終了しており、その労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上
<上乗せ要件>(平成31年度以降に承認を受けた事業が対象)
  • 直近事業年度の付加価値額増加率が8%以上
  • 労働生産性の伸び率4%以上かつ投資収益率5%以上

以上の要件を満たすと、下表の特別償却、税額控除を利用することができます(税額控除は、その事業年度の法人税額等の20%相当額が上限となるなど、いくつか制限があります)。

対象設備の上乗せ要件の表

出典:経済産業省ウェブサイト

b. 固定資産税・不動産取得税の減免

地方自治体によって、各都道府県・市町村の条例で、地域経済牽引事業の実施に必要な土地・建物等について、固定資産税・不動産取得税の課税免除または不均一課税を受けられる場合があります。制度の有無や内容は、各都道府県・市町村にお問い合わせください。

2.金融による支援措置

金融支援として、以下の5つの措置が設けられています。

  • 日本政策金融公庫からの固定金利での融資
  • 日本政策金融公庫による海外展開支援
  • 信用保証協会による債務保証
  • 中小企業投資育成株式会社からの出資
  • 食品等流通合理化促進機構による債務保証・資金のあっせん

地域経済牽引事業のために必要となる設備資金及び運転資金については、日本政策金融公庫が提供する長期かつ固定金利の融資を受けることができます。融資制度の詳細は、日本政策金融公庫のWebサイトをご参照ください。ここでは制度の内容を簡単にご紹介します。

融資制度の内容

3.規制の特例措置等

そのほかにも、以下の規制等についてその緩和措置が講じられており、地域経済牽引事業の遂行を容易にする配慮がなされています。

  • 工場立地法における環境施設面積率・緑地面積率の緩和
  • 農地転用許可等の手続きに関する配慮
  • 市街化調整区域の開発許可の手続きに関する配慮
  • 地域団体商標の登録に関する特例措置
  • 財産処分の制限解除手続きのワンストップ化
  • 事業環境整備の提案
  • 事業承継に関する特例措置

4.予算による支援措置

地域経済牽引事業者は、各種予算事業等で加点措置・優遇措置を受けることができます。以下に対象となる予算事業等を挙げます。今年度はすでに終了しているものもありますので、次年度以降の情報にもご注意ください。

  • サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
  • コンテンツ海外展開促進・基盤強化事業(J-LOD(5):ストーリー性のある映像制作・発信を行う事業)

まとめ

  1. 地域未来投資促進法による支援を受ける企業は、地域経済牽引事業計画を作成し、都道府県知事の承認を受けなければならない
  2. 地域経済牽引事業計画の作成にあたっては、各地方公共団体の基本計画、経済産業省のガイドライン、記載例を参考にするとよい
  3. 地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業は課税の特例として、特別償却や税額控除を活用することができる
  4. 地域経済牽引事業計画の承認を受けた企業に対する金融支援や規制の特例措置等が講じられている