経営ハンドブック

人材確保支援ツール

2024年 1月 5日

人材確保支援ツールのイメージ01

人材採用以外の選択肢も見えてくる「人材確保支援ツール」

「人材確保支援ツール」(中小企業庁)に沿って検討することにより、本当に必要な人材像をより明確にすることができる。また、人材採用以外に、設備やITなどの技術、業務の外部化で課題が解決できると気づくこともある。人手不足で悩んでいる会社の経営者の方は、一度「人材確保支援ツール」によって、解決策を探ってみてはどうだろうか。

「人材確保支援ツール」に沿った検討のポイント

  1. 人材確保支援ツールとは
  2. 経営課題を見つめ直す(STEP 1)
  3. 経営課題を解決するための方策を検討する(STEP 2)
  4. 求人像や人材の調達方法を明確化する(STEP 3)
  5. 求人・採用/登用・育成(STEP 4)
  6. 人材の活躍や定着に向けたフォローアップ(STEP 5)

1.人材確保支援ツールとは

中小企業にとって、人材の確保は重要な課題の一つである。大企業のように、求人広告を出すだけで応募が殺到することはめったにない。求人広告を出しても反応が全くないことも珍しくない。せっかく人材を採用しても、会社に定着しなければ、いつも人手不足に頭を悩ませることになるし、採用した人材が思ったような人材ではなく、会社の経営課題解決に貢献していないのでは意味がない。

中小企業が人材を確保するに当たっては、「人手不足だ。求人広告を出そう」という短絡的な考え方をするのではなく、現在、会社が抱えている課題は何なのか。人を増やすだけで解決するのか。他に解決手段はないのかを検討することが大切である。そして、求人を出す場合には、会社が必要としている人材の姿を明確にすると共に、そうした人材に応募してもらえるように会社の魅力をアピールする必要がある。こうしたことを検討するためのツールとして、中小企業庁が作成した「人材確保支援ツール」が役に立つ。

中小企業庁の「人材確保支援ツール」では、人材確保に先立ち、次の5つのステップを経ることを推奨している。単に段階を踏むだけでなく、時としては、前のステップに戻って再検討することも重要とされている。

STEP 1 経営課題を見つめ直す
 ↓↑
STEP 2 経営課題を解決するための方策を検討する
 ↓↑
STEP 3 求人像や人材の調達方法を明確化する
 ↓↑
STEP 4 求人・採用/登用・育成
 ↓↑
STEP 5 人材の活躍や定着に向けたフォローアップ

このステップをご覧になった方には、「経営課題を見つめ直すなどと悠長なことをしている暇はない。うちの会社はとにかく、人手不足なんだ。人材が殺到する方法を教えてほしい」という方もいるかもしれない。しかし、「急がば回れ」というように経営課題の見直しから取り掛かることが、長期的な人材不足解消につながるので、ぜひ、試していただきたい。

2.経営課題を見つめ直す(STEP 1)

原点に立ち戻り、会社の経営課題を洗い直すことである。

まず、会社の概要を一言で言い表せるか考えよう。求職者に会社の紹介をする際にも、「うちはこういう会社です」と説明する必要があるからだ。そして、求人を行うのは、会社に経営課題があり、採用した人にその経営課題に対処してもらいたいためであろう。そのためには「うちの会社はこういうことで困っています」と説明する必要がある。さらに、その経営課題を解決した先にどのような将来像を描いているのか。3年後、5年後、10年後と適宜に設定して、明確に説明できなければならない。

経営者がこうしたことを説明すれば、求職者は、入社した後でやるべきことを想像することができるし、経営者のビジョンに共感して、働きたいと思うようになるものである。会社の経営課題には、経営者自身が気づいているものもある一方で、潜在的で見えにくいものもある。潜在的な経営課題は、現在いる従業員とのコミュニケーションや外部の専門家等との相談の中で探る必要がある。

3.経営課題を解決するための方策を検討する(STEP 2)

様々な経営課題を洗い出したうえで、その経営課題がどの領域のものなのかを明確にし、解決策を検討する段階である。検討を進める中で、人材の課題だと思っていたものが、設備やITなどの技術で解決できるものだったり、業務の外部化でも対応できることもある。

経営課題がどの領域から生じているのかを探るに当たっては、まず、自社のビジネスの工程(部署)を明確にする。会社で働く人が、経営者も含めて数人しかいないような会社であっても、それぞれの従業員には役割分担があり、従業員の働きによって利益が生み出されているはずである。すると、会社にとって、どの工程(部署)が重要なのか、どの工程(部署)に課題があって業績が伸び悩んでいるのかが明らかになる。このように企業活動の見える化(企業の精密検査)と、部門別の経営課題の抽出を行うことをバリューチェーン分析(VC分析)という。

VC分析の結果、課題のある工程(部署)が明らかになれば、その課題を解消するためにどうしたらよいのかを考える。人材不足が原因と短絡的に考えるのではなく、設備やITなどの技術、業務の外部化で解決できないのかを検討することも大切である。

また、その工程(部署)での課題が経営上重要なものなのかどうかも考える必要がある。具体的には、その工程(部署)があることにより会社の収益にどの程度貢献しているのかを探ることである。さらに、その工程(部署)に対して、人件費、設備費、原材料などをどれほど投資しているのかも確認する。これにより、会社への貢献度と投資の割合が見える化される。

課題のある工程(部署)が、会社の収益に欠かせないものであれば、より多くの投資をしてもよい。人材の採用を進めてもよいと判断できるだろう。逆に会社への貢献度が少ない工程(部署)であれば、投資を抑えて、他の方策を探るべきと判断できるだろう。こうして検討した結果、人材を採用する以外に解決策がないと判断した場合に、次のステップに進むことになる。

4.求人像や人材の調達方法を明確化する(STEP 3)

人を採用し、雇用し続けるためにはコストがかかる。

そこで、会社への貢献度からしてそれほど重要ではない工程(部署)については、人が必要な場合でも、外注のほうがコストがかからないのではないかという検討もできるだろう。また、既にいる従業員の仕事の設計を見直して、兼業させたり、思い切った配置転換を行うことで、課題の解決を図れることもある。さらに、既にいる従業員を育成することで対処できないのかも検討する。

このように様々な検討を経た結果、新たに人材を採用する以外に課題を解決する方法がないという場合に、人材を採用することになる。

新たに人材を採用する方向が固まった場合は、どのような人材が必要なのかを明確にする必要がある。人材には大きく分けて次の4つのタイプがある。

  1. 労働人材……労働力を提供する人材
  2. 管理人材……経営方針や計画を立て、部下を指揮する人材
  3. 創造人材……専門性や特殊性を発揮して部門を超えて活躍する人材
  4. 番頭人材……部門連携や経営資源の組合せによりシナジー効果を最大化する人材

これらの人材のうち、どのタイプが足りていないのかを考え、必要な人数や雇用期間等を設定する。

人材を求めるにしても、会社の求めるスペックの人材を採用できるのか、現実的な検討も必要である。高スペックな人材は、どの会社でもしっかり押さえていて、転職市場に出てくることはめったにない。すると、ある程度の妥協は必要になるし、自社で経験を積ませて、人材を育成することも検討しなければならない。

できる限り若い人材を採用したいという希望も多くの会社が持っているが、中小企業が若い人材を確保することは大変難しい。そこで、ミドル、シニア人材の活用も積極的に検討すべきことになろう。

このようにして会社が採用できる現実的な人材像をイメージすることで、次のステップに進むことになる。

5.求人・採用/登用・育成(STEP 4)

多くの中小企業にとっては、ネームバリューだけで人材を集めることは難しい。会社の魅力を求職者にアピールして、会社で働きたいと思ってもらわなければ、人材はなかなか集まらない。そこで、経営者が自ら会社の魅力を発信することが求められる。

どのような会社なのかを端的に説明すると共に、経営理念やこれまでの会社の歩み、将来のビジョンを示す。将来の成長に向けて、現在ある課題を明確に示し、その課題に対処できる人材を求めていることを説明する。その課題に対処するためにどのようなスキルが必要なのか、入社後に経験を積むことで、どの程度キャリアアップを図れるのかを示す。

その上で、職場の雰囲気、会社の設備やテクノロジーの紹介や採用、人事評価、人材育成、能力開発、配置、異動、給与等の人材マネジメントについての詳しい説明を行うことになろう。

6.人材の活躍や定着に向けたフォローアップ(STEP 5)

せっかく人材を採用しても、すぐに辞めてしまったのでは、採用コストがかかるばかりで、人材不足の解消にはならない。定年退職を含め、社内人材流出を防ぐリテンションの強化は重要である。

欠員が生じやすい場合は、会社に人材が定着しない理由を探る必要がある。具体的には、離職者の離職理由を分析することにより、課題を洗い出すことである。その課題を放置し続ける限り、将来的にも従業員の離職が続き、人手不足の解消にはつながらない。

組織に原因があれば、採用活動前に、その原因を解消することが肝要である。待遇、休日休暇、福利厚生、職場環境、コミュニケーションに問題がある場合も、早急な改善が求められる。

定年による退職が多い場合も、定年制度の柔軟な運用により解決を図ることもできよう。このようにして、離職者を減らすことが、今後の人材不足の解消につながる。

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