ビジネスQ&A

わが社の帳簿が債務超過の状態になってしまいました。解消するにはどうすればよいでしょうか?

不況の影響により、ここ数年は連続して経常利益がマイナスになっています。このため、資本がマイナスになり、負債が資産を上回る債務超過の状態になってしまいました。債務超過を解消するよい方法はないでしょうか。なお、当社の主な財務の特徴は、以下のとおりです。
 ・ 売上増加は急には見込めない
 ・ 負債の内訳は、銀行からの借入が6割、代表者・役員からの借入が4割
 ・ 遊休資産が若干ある

回答

債務超過にはさまざまなデメリットが存在します。このため、早期解消が望ましいといえます。御社の状況から債務超過の解消方法は、借入金を資本金へ振り替える、遊休資産を売却する、毎期の経常利益がプラスになるよう経営体質を改善する、の3種類が考えられます。

図1のように、債務超過の状態では、仮に会社を清算して、会社の全資産を売却したとしても返済できない借入金が残ってしまいます。また、会社を存続するにあたっては、さまざまなデメリットが考えられます。

<債務超過のデメリット>

  • 会社の倒産の原因となります
  • 銀行からの新規の借入が難しくなります
  • 銀行が、金利引き上げや借入金の早期回収を要求することがあります
  • 仕入先や販売先からの信用が低下します

このため、会社が債務超過の状態に陥った場合、なるべく早く解消することが望ましいと言えます。

図1 債務超過とは 図1 債務超過とは
図1 債務超過とは

御社の財務状況の特徴から、債務超過を解消する方法には、短期の視点で3つ、長期の視点で1つの計4通りが考えられます。

<短期的な視点での解消方法>

  1. 増資を行い資本のマイナスを解消します
  2. 代表者や役員からの借入金を資本金へ振り替えます
  3. 遊休資産の売却によって得た資金を銀行からの借入金の返済に充当します

<長期的な視点での解消方法>

  1. 毎期の経常利益がプラスになるように経営体質を改善します

このうち、「増資を行い資本のマイナスを解消します」については、中小企業の事業者の方々はすでに可能な限りの資金を投入しており、さらなる増資を行う余裕はないため、実現性が低い場合が大半だと思われます。このため、残りの3つについて説明します。

【代表者や役員からの借入金を資本金へ振り替えます】

債務者(御社)としては、債務超過が解消できるうえ、借入金の返済と利子の支払の必要がなくなる、というメリットもあります。役員からの借入金を資本金に振り替えた場合は、その役員の会社への影響力が強まることがありますが、経営への積極的な参加をいままで以上に期待できるというメリットも考えられます。

債権者(代表者や役員)としては、会社への影響力が強まる、会社の業績が好調になれば、利子の額以上の配当金が受け取れるなどのメリットが考えられます。一方、借入金を資本金へ振り替えるため、借入金が戻ってこなくなりますが、会社が清算などをした場合は、借入金の一部(または大部分)が回収できなくなる可能性があるため、一概にデメリットとは言い切れません。

なお、会社法の施行に伴い、借入金を資本金へ振り替えた場合、会社側に債務消滅益が発生する場合があります。思わぬ法人税が課税される可能性もありますので、実行に当たっては税理士等にご相談ください。

【遊休資産の売却によって得た資金を銀行からの借入金の返済に充当します】

債務超過が解消する(少なくとも超過額が低減する)ほか、総資産の圧縮により総資本対経常利益率(※1)などの経営指標が改善し、銀行格づけがアップするなどのメリットも考えられます。

  • ※1総資本対経常利益率とは
    経常利益率を総資本(総資産)で割ったものです。所有する総資産を活用し、何%の経常利益を生み出したかについてみる指標です。同額の経常利益を生み出すのであれば、総資産が小さいほど経営効率が高いと言えます。

【毎期の経常利益がプラスになるように経営体質を改善します】

経常利益をプラスにし、最終的に税引き前当期純利益がプラスになるように、経営体質の改善を図ります。売上の増加が急には見込めないとのことなので、まずは売上原価や販管費の削減に取り組みましょう。

上記の解消方法は、単独で行うのではなく、複数組み合わせて実施することが重要です。とくに、毎期の経常利益がプラスになるように経営体質を改善することについては、債務超過解消の即効性は低いものの、債務超過の根本原因の解決になるほか、企業の継続的な成長にとって不可欠なため、積極的に取り組む必要があります。

回答者

中小企業診断士
上村 洋史

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