ビジネスQ&A

印紙はすべての契約書に必ず貼るものなのですか?

普段から何となくすべての契約書に印紙を貼っていますが、本当にすべての契約書に印紙を貼らなくてはいけないのでしょうか?

回答

印紙税は、国が定める税金(国税)の一つです。不動産の売買や金銭の消費貸借など、経済取引に関連して作成される書類のうち、印紙税法で課税対象であると定められた書類(これを「課税文書」と言います)に、印紙(収入印紙)を貼りつける方式で納付することが、義務付けられています。したがって、すべての契約書に印紙を貼る必要があるわけではありませんが、課税文書に印紙を貼らない場合は、脱税になってしまいます。

印紙を貼付する必要のある書類は、印紙税法(印紙税法別表第一「課税物件表」)で定められた書類(課税文書)に限られています。

主な課税文書は、以下のとおりです。

  1. 不動産の譲渡に関する契約書
  2. 土地の賃借権設定に関する契約書
  3. 消費貸借に関する契約書
  4. 請負に関する契約書
  5. 約束手形または為替手形
  6. 営業に関する受取書(領収書)

など。

印紙税法では、書類1通ごとに印紙を貼ることが定められていますので、たとえば不動産の売買契約などで売り手側、買い手側の契約書を2通作成した場合には、それぞれの契約書に印紙を貼ることが必要になります。

課税文書にあてはまるかどうかは、契約書の名称だけで決まるわけではなく、文書の形式や記載内容から実質的に判断されます。たとえば『覚書』という名称の書類をつくった場合、記載されている内容が、不動産売買の内容と判断されれば『不動産の譲渡に関する契約書』として課税対象とされることになります。

図1 印紙税の課否判定 図1 印紙税の課否判定
図1 印紙税の課否判定

いくらの額面の印紙を貼付する必要があるかは、作成した書類の内容や、その書類で取引されている金額(これを「記載金額」といいます)によって異なります。具体的な取引金額の記載がない場合でも、よく読むと取引金額が計算できる場合は、それを記載金額として扱います。また、たとえば『不動産の譲渡に関する契約書』の中で、「契約代金は別途定める」とした場合のように、作成した書類に記載金額のない場合であっても、200円の印紙を貼らなければならない場合もあります。なお、表題と関係なく、契約書の内容が『継続的取引の基本となる契約書』(契約期間3カ月以内で、更新の定めがないものを除く)にあたると判断されれば4,000円の印紙税が課税されるといったような、分かりにくい課税対象もあります。

印紙を貼る必要のある書類を作成した場合、記載されている金額に応じて定められた額の収入印紙をその書類に貼り付け、消印する方法によって貼付します。貼付した印紙の金額に不足があった場合や、消印がされてなかった場合には、納付すべき印紙税の3倍の過怠税が課されますので注意が必要です(自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減)。また、不正な行為によって印紙税を免れた場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰も定められています。

逆に、印紙税として定められた金額以上の収入印紙を貼ってしまった場合や印紙税のかからない文書に印紙を貼ってしまった場合などは、還付請求の手続を行えば、誤って納めた印紙税額の還付を受けることができます。

契約書の中には、コンサルティング契約のような契約書のタイトルからは印紙が必要かどうかを判断することが難しいものもあります。コンサルティングの内容の成功や成果物を約束(請負)しておらず、『請負に関する契約』ではないと判断されれば、印紙は不要となりますが、請負契約の一種類であると判断されれば、印紙を貼付することが必要となります。また、どちらの場合でも、上述した『継続的取引の基本となる契約書』と判断されれば、4,000円の印紙税が課税されることになります。このように、印紙税は、判断がたいへん難しい場合があります。印紙が貼られていなかったとしても契約書の有効性には、何ら影響を及ぼしませんが、上記のように高額な過怠税や罰則が課されることもありますから、印紙の貼付の必要性、印紙税額について不明なところがある場合は、税理士や税務署に事前にご相談することをお勧めします。

回答者

中小企業診断士
竹村 考太

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