ビジネスQ&A

子育て社員が働きやすくなる方法を教えてください。

2023年 12月 15日

子育て社員が働きやすい会社にしたいと思っております。中小企業が無理なく取り組めて効果の上げやすい方法などについて教えてください。

回答

子育て社員の働きやすさは、育児休業や子の病気等での急な勤務変更を、周囲が気持ちよく受け入れてくれるかがポイントです。まず、経営者が子育て応援の明確なメッセージを出し、育児と仕事が両立できる職場の雰囲気を作りましょう。育児休業制度を正しく理解し、柔軟に働ける制度は積極的に取り入れましょう。育休前など、業務の引き継ぎをしっかり行います。また、将来に向けて、多様な正社員制度の導入による人材確保も有効です。

1.まず経営者が「子育て応援宣言」をしよう

人材不足にならないためには、今働いている社員に、働き続けてもらうことが大切です。令和4年に、男性・女性とも仕事と子育てを両立できるよう、改正育児・介護休業法が施行されました。経営者は、「子育て応援宣言」を行うと共に、会社が子育て社員の働きやすさのために会社が取り組むべき課題を確認し、職場改善を図りましょう。

(1) “職場の雰囲気を変える!” 経営者の決意を表明しよう

「子育て応援宣言」では、女性だけではなく、男性の育児休業取得や子育て応援も、積極的に打ち出しましょう。現場管理職からは、業務繁忙で人手不足なのに、と反対意見がでるかもしれません。しかし、社会全体で取組みがなされています。いずれ実施しなければならないことですから、乗り遅れないようにではなく、一歩先んじて社員の満足度を上げていきましょう。現場管理者にもしっかり理解してもらい、推進者に任命するなど、“職場の雰囲気を変える!”という経営者の決意を明確にします。

(2) 第一子出産前後に半数近くの女性が退職している

男女別に取り組むべき課題を考えます。自社に課題があればその改善に取り組み、これから着手する場合は、多くの人が直面している問題を基に考えましょう。

出生動向基本調査によると、第一子出産前後の女性の半数近くが、退職をしています。会社にとって必要なスキルや知識を持った女性社員が、出産や子育てのために退職したり、年収の壁のために労働時間を制限したりするのは、大きな損失です。

退職理由は、「仕事と育児の両立の難しさ」が挙げられ、具体的には「育児と両立できる働き方ができそうにない」「勤務時間が合いそうにない」「職場に支援する雰囲気がない」などです。この結果からは、経営者による、子育てを応援する職場作りを、深掘りしていく必要性や、柔軟な勤務時間制度の検討が求められています。

(3) 今後、企業間の取組みによる格差が予想される男性の育児休業取得

若手男性社員の8-9割が育児休業の取得を希望しているそうです。一方、令和4年度の男性育休取得率は17%ですが、政府や企業の努力によって、将来的には、取得率や取得期間の伸長が見込まれます(厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」より)。男性が育児休業を取得しなかった理由としてよく見受けられるのは、「職場の人手が不足していた」「育児休業制度が整備されていなかった」「職場が育休を取得しづらい雰囲気」「自分にしかできない仕事を担当している」「収入を減らしたくない」などです。

上記の未取得理由について、育児休業制度は法の定めなので、事業場の就業規則が未整備でも取得できます。自社が未整備であれば、厚労省モデル就業規則を元に整備されるとよいでしょう。収入については、雇用保険から育児休業給付金が育児休業開始から180日間、休業開始時の賃金月額の67%が支給されます(その後は50%)。社会保険免除や所得税の非課税を勘案すると約90%相当になります。

2.仕事と子育ての両立を支援する職場作り

(1) 育児をしながら働くための休暇制度と勤務時間制度を活用しよう

上述の課題解決に繋がる制度のうち、厚労省の調査での利用実績が高いものは、短時間勤務制度等、以下の4つです。勤務時間が合わないことによる退職防止のため、制度をよく確認し、子育て社員へ紹介を行いましょう。また、年次有給休暇は、労使協定を結ぶことにより、年5日までの範囲で時間単位での取得が可能となります。子育て社員には利便性が高いです。

1.育児のための短時間勤務制度

法定の措置で、3歳までの子を養育する労働者に1日の所定労働時間を6時間とするもの。

2.子の看護休暇

法定の休暇で、小学校入学迄の子に対し、1年度あたり5労働日付与される。無給。

3.始業または終業時間の繰上げ・繰下げ

対応可能な業務は、当日申出も可能としたい。

4.テレワーク

半日単位などでも利用可能な、柔軟な運用ができる制度とすることが望ましい。

(2) 育児休業での仕事の引き継ぎ

子育て社員の育児休業や時短勤務には、仕事の引継ぎが必要になります。きちんと「見える化」をして、無理のない業務の振り分けを行います。社内での振り分けが困難な場合は、外部の専門家に委託するなど、受け手の負荷にも配慮します。周囲の不満やストレスは、結果として、子育て社員が働きにくい職場に繋がります。

また、各社員の担当業務をこの機会に洗い出し、生産性をあげることは社員の負荷軽減に有効です。優先度が低く中止を検討する業務、システム導入で効率化できる業務、作業プロセスを見直して効率化する業務などに分類し、対応します。

(3) 無意識ハラスメントに陥らないように注意しよう

若い世代では女性の就業率が上昇し、男性の子育ても保育園の送迎や病気への対応も行うなど、夫婦が協力して行うように変化しています。一方で、周囲の社員が、男性は外で働き女性は家を守るという性別役割意識に基づく考えのままでは、無意識にハラスメント発言をしてしまう可能性があります。「子どもは母親が育てるべき」とか「男のくせに育休を取るなんてありえない」などです。これでは、子育て社員にとって働きやすい職場とはなりません。性別役割分担意識は、すぐになくしていきましょう。

(4) 「ありがとう」と「お互い様」を言い合おう

社員同士の協力を促す、ポジティブな言葉や行動を推奨します。例えば、子育て社員へは、周囲の社員に「すみません」「ごめんなさい」ではなく、「ありがとう」と言うように促します。

子どもの急な発熱や体調不良はよくあることなのに、その度に謝っていては、子育て社員も周囲もストレスになってしまいます。「ありがとう」だと、前向きな気持ちになれますね。周囲の社員にとっても、自分に何らかの困りごとができた時に、助けて貰う職場の雰囲気があると助かります。急な勤務変更は周囲も大変ではありますが、目先のことにとらわれすぎず、「お互いさま」と言い合えるよう、コミュニケーションをきちんととれるようにしましょう。例えば、子どもを会社に連れてくる機会を作ると、支援する社員たちに子どもへの親しみが湧き、協力を得やすくなります。

3.多様な正社員制度

会社にとって必要なスキルや知識を持った女性社員が、子育てのために退職したり、いわゆる「年収の壁」のために労働時間を制限したりするのは、大きな損失です。このような女性社員にしっかり働いてもらうには、多様な正社員制度(限定正社員)の導入が有効です。また、正社員と限定正社員、限定正社員と一般パートが、相互に行き来できるような制度を設けると、子育て社員の両立支援に効果が見込めます。

(1) 多様な正社員の3つの類型

いわゆる正社員は、勤務時間、職務、勤務地がいずれも限定されていませんが、多様な正社員は、時間限定正社員、職務限定正社員、勤務地限定正社員という形で、いずれかを限定しています。そのことで、例えば、パートで入社し、6時間しか勤務できないけれど優秀な方を、一般のパートではなく、多様な正社員(時間限定正社員)として責任のある仕事を任せることができるようになり、定着や戦力化に繋がります。また、元々正社員だった人が、子どもが3歳を超えても短時間勤務の継続が必要な場合、多様な正社員(時間限定正社員)とすることで、離職を防止することができます。

(2) 導入手順

  1. 多様な正社員(限定正社員)への転換ルールを決める
    上司の推薦や面接、過去の評価など、どうような転換ルールを用いるか決定します。
  2. 多様な正社員(限定正社員)の制度を決める
    職務内容等全体像を整理し、等級や賃金を決定します。
  3. 労働者代表と協議し、就業規則の変更を行う
  4. 対象者へ期待する役割を伝える

厚生労働省:参考ページ

経営者のリーダーシップで、子育て社員が働きやすい職場にしていきましょう。

回答者

中小企業診断士・社会保険労務士 阿世賀 和子