ビジネスQ&A

女性にもっと活躍してほしいのですが、女性自身が消極的です

2022年 4月 27日

当社では、以前は女性には補助的な業務を任せることが多かったのですが、最近は女性の勤続年数が伸びたことから、女性にも重要な業務を任せたいと思っています。しかし肝心の女性にその意欲が見られません。

回答

本当に女性に意欲がないのか、職場のなかに女性の意欲を失わせる要因がないか、確認してみましょう。

1.女性が意欲を削がれてしまう理由

少子高齢化による労働力人口の減少が予想される現在、女性の活躍への期待が高まっています。国も、女性活躍推進法や育児・介護休業法、男女雇用機会均等法などを整備し、女性の活躍を後押ししています。

しかし、当の女性はこれをどう捉えているでしょうか。女性を対象とした意識調査は多数行われていますが、ここでは独立行政法人国立女性教育会館の「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査研究(令和元年度、第5回)を紹介します。それによると、

・「管理職を目指したい」と考える女性は15.2%(男性46.6%)
・管理職を目指したくない理由として女性があげた主な理由(複数回答)は、
  「仕事と家庭の両立が困難になるから」(69.3%)
  「責任が重くなるから」(48.9%)
  「自分には能力がないから」(40.1%)

となっています。管理職になることと活躍することとは必ずしも同義ではありませんが、ここから見える課題がありそうです。

(出典)https://www.nwec.jp/about/publish/2019/ecdat60000006v2p.html

たとえば、以下のようなことはないでしょうか。

(1)仕事の任せ方や能力開発の仕方に男女差がある

質問のケースでは「女性にも重要な業務を任せたい」とありますが、その方針は職場そして女性自身に本当に伝わっているでしょうか。これまでの慣例に沿い、無意識のうちに男性のみに責任ある業務を任せていませんか。

同僚の男性が経験を積む一方、女性は何年経っても補助職のままなら、女性は能力を伸ばしていくことも、仕事の面白さを見出すこともできず、「自分は期待されていないのだ」とネガティブな思考に陥ってしまいます。

(2)出産などのライフイベントと仕事を両立できる雰囲気がない

第一子出産を機に退職する女性は46.9%(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2016年))という数字をみてもわかるように、女性にとって、まだまだ出産・育児は継続就労の壁です。恒常的な長時間労働がある職場では、育児と仕事を両立するのは至難の業でしょう。また、誰かが制度利用すると、その業務量・内容によってはカバーに回る周囲の従業員が負担に感じ、本人も肩身の狭い思いをすることになりがちです。そのような状況下では、チャレンジどころか、現状維持が精一杯ではないでしょうか。

2.女性の意欲を喚起するために

やりがいのある業務に巡り合うチャンスがない、仕事を続けられる環境にない、さらに前例がなく先を見通せない—そうであれば、女性が意欲を持てなくても不思議ではありません。企業からはそれが、質問のケースのように「女性が消極的」に見えるのかもしれません。

この悪循環を断ち切るには、たとえば次の取組が考えられます。

  • まずは、女性活躍に関する方針を明確にし、それを全社員、特に管理職や本人に重点的に説明しましょう。女性活躍推進法における一般事業主行動計画に落とし込んでも良いでしょう。
  • 期待する役割を伝え、女性のモチベーションを高める働きかけをしましょう。
  • 男女分け隔てなく仕事や能力開発の機会を与えましょう。もしこれが難しいと感じるなら、その理由を考えてみてください。そこに解決すべき課題があるはずです。
  • これまで女性を配属したことがない部署に配属するなら、本人が不安にならないよう、適切にフォローしましょう。これは、初めて女性を管理職に抜擢する場合も同じです。メンター制度を整備したり、部署を超えた女性のネットワークを確立したりできれば、孤立予防になります。
  • 両立・就業継続を支援する制度を導入・定着させましょう。支援制度の利用前後では、本人の希望を聴き、復帰後どのようなキャリアが積めるか、一緒に考えましょう。
  • 働き方改革を進めましょう。そのための方策として、業務を見直し、無駄な仕事を排除していく、業務の標準化や情報共有を図る、などが考えられます。

女性活躍が思うように進まないのは、女性だけの問題とは言えません。社会に根強く残る性的役割分業意識や、長時間労働を前提とした働き方などが変わる必要があります。しかしそれらを打破し、多様な人材が活躍できる土壌を作った企業は、競争力をより高められるでしょう。

回答者

中小企業診断士・社会保険労務士 高橋 美紀