業種別開業ガイド

電気工事業

2021年 3月12日

トレンド

(1)再生可能エネルギー

石油や石炭、天然ガスなどのエネルギーは埋蔵量に限界があり、またそのほとんどの資源は海外に依存している、石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー対し、水力や風力、太陽光、地熱など自然の中で枯渇することなく利用できるエネルギーを「再生可能エネルギー」という。再生可能エネルギーは、多くの化石燃料のようにCO2を発生させることもないため、地球温暖化対策にも貢献する。これらは変換しやすい電気で用いられるため、発電装置等の電気工事が実施されている。

(2)情報ネットワーク

各家庭、さらには各個人で、スマートフォンやタブレット、PC、ゲーム機等で、Wi-Fi通信などのインターネットを使用した生活が普及しており、インフラ構築としての電気工事が日常生活の中で重要な役割を果たしている。

(3)スマートコミュニティ

家庭、ビル、工場、交通システムなど地域全体をITネットワークで繋ぐことにより、エネルギーの有効利用を行う「スマートコミュニティ」という次世代の社会システムが推進されている。日本では2010年に横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市の4都市が実証地域として資源エネルギー庁により選定され、実証事業を展開している。事業の例として、電気の使用量を管理することで、ピーク時に使用を抑制して電力不足を防ぐ取組などが行われており、電気工事業は大きな役割を担っている。

(4)電気工事の需要は増加傾向

電気設備は人々の日常生活において必要不可欠な存在であり、新規建設に伴うものだけでなく、改修・補修を含めて電気工事の需要は常に存在する。またIT業界の発展によるエネルギー需要の増加も電気工事の増加に繋がっている。
これらの要因を反映して電気工事業者数は2019年に約6万社(出所:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について」(平成31年3月末現在))、受注額についても2019年は約1.6兆円(出所:国土交通省「設備工事業に係る受注高調査結果」(令和2年2月分速報))とともにリーマンショック後から増加傾向にあり、今後も需要は高いと予想される。

ビジネスの特徴

大型工事などは大手・中堅事業者の独壇場となるが、中小下請型の事業者では、施工管理者のもとで電工を派遣する業態が衆力となっている。また一時のゼネコン不安を背景に自ら元請けになる事業者が出てきている。零細事業者は、中小下請けや中小工務店の受注の請負、あるいは週択など町場の小さな工事業を請け負うことが多い。

開業タイプ

(1)登録電気工事業者

建設業許可を受けておらず、一般用電気工作物のみ又は一般用・自家用電気工作物にかかわる電気工事を施工する事業者である。5年ごとに更新が必要であり、主任電気工事士の設置が必要。

(2)みなし登録電気工事業者

建設業許可を受けており、一般用電気工作物のみ又は一般用・自家用電気工作物にかかわる電気工事を施工する事業者である。更新は不要だが、建設業許可の更新を含めて登録事項に変更が生じた際は届出が必要。

(3)通知電気工事業者

建設業許可を受けておらず、自家用電気工作物にかかわる電気工事のみを施工する事業者である。更新は不要だが、登録事項に変更が生じた際は届出が必要。

(4)みなし通知電気工事業者

建設業許可を受けており、自家用電気工作物にかかわる電気工事のみを施工する事業者である。更新は不要だが、建設業許可の更新を含めて登録事項に変更が生じた際は届出が必要。

開業ステップ

(1)開業ステップ

開業ステップ

(2)必要な手続き

  1. 電気工事業の登録申請
    …開業する事務所が1つの都道府県内に限定されている場合は都道府県知事免許、2つ以上の都道府県にわたる場合は国土交通大臣免許を申請する。
  2. 法務局への法人登記申請
    …事業形態を法人とする場合は申請する。
  3. 税務署等への各種届出
    …個人事業として開業する場合は開業届を提出する。必要に応じ、青色申告の申請を行う。

ネットワーク化への対応

IoT家電や防犯カメラ・センサーの普及、テレワークの常態化により、今後様々な条件下で高度な技術を要する設置工事・メンテナンスが増えると予想される。こうしたニーズに対応できるよう技術力の向上や最新情報の収集に努めることが重要となる。

必要なスキル

(1)関連資格

  1. 第一種電気工事士
    …一般用電気工作物及び自家用電気工作物(最大電力500Kw未満の需要設備に限る)の範囲で作業できる。
  2. 第二種電気工事士
    …一般用電気工作物の範囲で作業できる。
  3. 認定電気工事従事者
    …試験合格ではなく、講習受講や一定の条件を満たすことで免状交付が受けられる資格。第一種電気工事士免状取得者の作業範囲である簡易電気工事を第二種電気工事士でも行うことができるようになる。
  4. 特種電気工事資格者
    …自家用電気工作物のうち、ネオン工事及び非常用予備発電装置工事が行えるようになる。

(2)技術力・施工管理能力

IT化の進展に伴い、情報・通信機能の高度化や新技術開発も急速に進んでいる。こうした環境に対応できる技術力や施工管理能力は、事業者の優劣を分けるひとつの基準となる。

(3)営業力

電気工事を行うためには、まず工事を受注する必要がある。自社の付加価値をアピールする提案型の営業力や広い人脈を持つことにより、受注できる工事の幅が広がることに繋がる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

売上計画の表

b.損益イメージ

上記 a.売上計画に記載の売上高に対する売上総利益および営業利益の割合(標準財務比率(※))を元に、損益のイメージ例を示す。

損益イメージの表

※標準財務比率は一般電気工事業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

電気工事業は、電力会社や電気工事会社の下請けとして仕事をする場合や、建設業者や建築業者、住宅会社やマンションデベロッパーからの仕事もある。また最近はインターネット回線など、通信会社から発注を受けて工事を行うなどの仕事も増えてきている。売上を増加させるにはこういった仕事の受注量を増加させる必要があるため、開業にあたっては人脈などを生かして多くの仕事を受注できる体制づくりや、受注できる工事の範囲を広げるために各種資格を取得しておくことが重要である。
また費用として主なものは、事務所・倉庫・駐車場の賃料、人件費、機材・工具費等が挙げられる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、開業状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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