業種別開業ガイド

建築設計事務所

  • 建設工事の減少や、建設関連産業などの異業種からの参入によって、建築設計事務所の受注獲得競争は激しくなっている。
  • また、設計・施工を一貫受注してしまう大手企業などに比べ、中小の建築設計事務所では、建築設計を単独受注するために割高感を与えてしまうなどの不利な点も目立つ。
  • 建築へのニーズは複雑化・高機能化しており、環境への配慮、耐震性の向上などを目的にした建築技術の開発や、住宅など既存の建物のリフォームでも新しい技術開発が進んでいる。大手に対抗していくため、こうした新しい技術を活かした独自の企画提案力などが求められる。

1.起業にあたって必要な手続き

建築設計事務所を開業するには、建築士法によって、事務所の所在地を管轄する都道府県に登録する必要がある。

登録に関する事務手続きは、通常、各都道府県の建築士事務所協会に委託されており、協会で購入できる登録申請用紙に、登録に必要な事項について説明されている。記入した用紙および必要な書類なども協会に提出することになる。

2. 起業にあたっての留意点・準備

1)事業の設計

起業時には、まず業務の設計を行なうことが必要である。

<一般的な建築設計事務所の業務内容>

建築設計事務所の業務内容を説明した表

こうした業務のうち、自社で行なう業務と他社に外注する業務との区分や、その外注先の目処をつけておくことが必要になる。自社で すべて行なうことも不可能ではないが、人材の確保を考えると外注先を組織化したほうがコストを下げることができ、収益的に有利になると考えられる。

また、建築設計事務所は、事務所にいる建築士の資格によって、「一級建築士」事務所、「二級建築士」事務所、「木造建築士」事務所に 分けられる。「一級」以外は、設計・工事監理が許される業務の範囲が建築士法によって規定されている。したがって、一級建築士事務所として起業することが望まれる。

2)経営上の留意点

商品の差別化

建築設計事務所の商品は建物の設計と施工時の監理が主だが、他社と差別化できる設計力やプレゼンテーション力、さらに、設計した建物で行なわれる事業へのコンサルティング力などがなければ思うような受注は実現できない。
とくに最近では、設計力が重要視されるようになっている。施主に設計上の承諾をもらうには、建物の利用者のことを考えた設計、建物自体の価値を高める設計などが求められる。コンピューター(CADシステム)の導入などにより設計力を強化していこうとする事務所も増えている。設計のための十分な打ち合わせを行なうといった姿勢も重要である。

受注ルートの確立

建築設計事務所はその事業の性格上、建設の好不況、景気の影響をまともに受けるうえ、すべてが個別受注であるため活発な営業が必要などの特性がある。
安定した受注が得られるルートの確立、具体的には、建築会社や不動産業者との提携、公共機関へのアピール、営業活動の管理の高度化などの取り組みがとくに重要になる。

2. 起業にあたっての留意点・準備

おもな設備資金は事務所の開設費用である。事務所の所在地が企業イメージに影響するため、大都市の、イメージの良い立地に開設する必要性も高くなる。保証金や賃借料などの事務所の取得・諸経費は大きくなりがちである。

その他の設備資金として、コンピューター導入費用や、設計用機器などの導入費用の負担も大きくなる。各自の条件に応じた収支計画を検討してみることが必要である。

最終内容確認日2014年2月

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