業種別開業ガイド

移動スーパー

2020年 1月 30日

トレンド

(1)移動スーパーだけでなく移動コンビニを含め市場拡大

移動スーパーは、主に自動車で営業するため品揃えは相当絞り込まれる。そのため近年増加が著しい移動コンビニとも営業内容が類似する。

最大手の株式会社とくし丸のデータなどを参考に、移動スーパーと移動コンビニの市場規模を推計すると、およそ192億円となる。

(2)買い物弱者対策としての広がり

移動スーパー自体は古くからある業種だが、食品スーパーや総合スーパーの増加により逆に移動スーパーは一時激減していた。ところが少子高齢化社会を迎え、買い物弱者が増えるとともに再び脚光を浴びるようになった。また、東日本大震災などの際にも注目され、災害対策としても大きな意義が認められている。

(3)大都市圏内でも進出相次ぐ

これまでは過疎化が進みつつある地域などにおける買い物弱者対策としての営業が多かったが、最近では団地の高齢化などにも対応する形で大都市圏内でも移動スーパーの進出が相次いでおり、市場規模は拡大傾向にある。

(4)業種のパッケージ化により開業しやすい環境整う

移動スーパーの主要事業者として株式会社とくし丸があり、オイシックス(現オイシックス・ラ・大地株式会社)が親会社となっている。同社は販売パートナー制度をとっており、個人事業主が移動スーパーを営業している。また移動コンビニは既存のFC店オーナーが付加的に開業する仕組みになっており、こちらでも業種のパッケージ化が進んでいる。

個人が一から車を改造し、仕入先を開拓して開業することはハードルが高かったが、現在は移動スーパー・移動コンビニを開業しやすい環境が整っている。

ビジネスの特徴

軽トラックを改造した車で営業することが通常であり、開業の初期投資が少なくて済むことが大きな特徴である。また顧客との距離が近いため、そのニーズに応え生活を支えているという実感も持ちやすい。

一方で、採算に乗せるのが簡単な事業ではない。曜日別に15~20分単位で異なる場所に移動して多くの地区の需要を取り込むなど、効率的な営業を行う必要がある。さらに商品積込み作業など、個人事業主として目一杯働くことを喜びにできなければ成り立たない部分もある。

開業タイプ

(1)業種パッケージ利用型

移動スーパーの主要事業者の販売パートナー制度を利用したり、既存コンビニ店主が移動コンビニを付加したりするタイプである。既存の業種パッケージを利用できるため、開業初期にノウハウを自ら確立する必要がない。

(2)独自開業型

業種パッケージを利用せずに独自に開業するタイプである。通常は何らかの関連業種の経験がなければ難しい。

(3)補助金利用・地域共生型

地域社会の要請に応える形で出店したり、国や自治体の買い物弱者対策等の補助金を利用したりするタイプである。上記(1)(2)とも併用可能である。

開業ステップ

(1)開業のステップ

以下では移動スーパーの業種パッケージ利用型を前提にステップを示す

開業のステップ

(2)必要な手続き

以下に東京都の例を簡潔に記載した。保健所等によって所要日数や手続きが異なる場合があるため、必ず所轄の保健所に事前相談する。特に営業許可申請に当たって施設基準を順守する必要がある。

  1. 事前相談(保健所)
  2. 食品衛生責任者養成講習会の受講(東京都食品衛生協会)
  3. 営業許可申請(保健所、施設完成予定の10日くらい前に書類提出)
  4. 施設検査(保健所、適合後に営業許可書の交付)

(3)開業場所

開業場所の選定に当たっては道路交通法や都市公園法を順守する必要がある。

一般的には道路上や公園での販売許可はおりないケースが多い。そのため私有地の使用許諾を受けたり、地域・団地等の施設・敷地を使用させてもらったりする必要が出てくる。団地などでは集客のための音声が騒音にならないようにする。そのような制約の中で販売効率のあがる場所を選定する。

個宅の玄関先を回る形で営業する形態もある。歩き回って需要調査を行ったり、挨拶回りを行ったりすることも重要な開業準備とされている。

メニューづくり

移動スーパーの場合には提携先スーパーの品揃えから、移動コンビニの場合にはコンビニの品揃えから選定することになろう。移動スーパーの場合には、生鮮産品や乳類を取扱うことが強みにもなることから、施設上もこれらを取扱える許可を取得することが重要。

需要調査の結果を踏まえて初期の品揃えは決定するが、実際には営業しながら顧客の要望をきめ細かく聞いて、予約を取ることも含めて積極的に品揃えに反映する。

一つの事例として、400品目1,200点程度を積み込んで営業する移動スーパーがある。

必要なスキル

前述の手続きに関連して食品衛生責任者資格を取得する必要がある。それ以外にも商売上の工夫や接客スキルが求められる。営業場所の開拓や効率向上のためのルート変更、予約を取ることも含めた積極的な接客、品揃えを改善して顧客ニーズに応えることなどにより、営業を継続していくことができるようになる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

前述の通り、ビジネスの特徴として開業資金を抑えることができる。

【業種パッケージ利用型の資金例】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

市場規模推計では日販および営業日を少なめに見たが、ここでは日販12万円、週6日稼働としている。

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

上記、a.売上計画に記載の売上高をもとに、損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

(参考:とくし丸 ホームページ 販売パートナー収支シミュレーション)

c.収益化の視点

損益イメージからも分かる通り、収支の構成はあまり難しいものではない。わずかの固定費のみが負担すべき費用となる。そのため、営業場所の開拓や効率向上のためのルート変更、予約を取ることも含めた積極的な接客、品揃えを改善して顧客ニーズに応えることなどにより売上を伸ばし、売上総利益を増やすことが重要である。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

関連記事