業種別開業ガイド

トランクルーム(レンタル収納スペース)

2022年 10月 12日

トレンド

8年間で店舗数は倍増し、ファミリーレストランを上回る

近年、「トランクルーム」と呼ばれるレンタル収納スペースをますます多く目にするようになった。郊外のロードサイドにあるコンテナ型のものや、ビルやマンションの内部に設置されたもの、倉庫の一部を使ったものなどタイプも多様で、日経新聞によれば、店舗数は2021年までの8年間で倍増して1万2000店を超過。ファミリーレストランの店舗数を上回るようになったという。

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倉庫事業者による運営か否かで、提供サービスが異なる

実は「トランクルーム」と呼ばれるものには、寄託契約によって物品の保管を請け負う「倉庫事業者としてのサービス」と、賃貸借契約によって物品を預けるスペースを貸す「非倉庫事業者としてのサービス」がある。国が「トランクルーム」と定義しているのは前者の方で、そのうち一定の条件を満たしたものを国土交通大臣が「優良トランクルーム」として認定している。しかし現在、後者の非倉庫事業者によるサービスを含めた多くが「トランクルーム」として事業を行っているのが実情だ。そのため、本記事でも、以降は前者・後者を含めたすべてのレンタル収納スペースを「トランクルーム」として話を進めていく。

認知度も上がり、市場の拡大も続く

トランクルームというサービスの認知度が上がり、個人のライフスタイルも多様化する中、トランクルームの利用はより身近なものになった。また、コロナ禍の影響で、個人が在宅勤務を行うためのスペースを空けたり、オフィスを縮小した企業が保管し切れなくなった書類や在庫を預けるといった利用も増えているという。業界大手のキュラーズによれば、2020年におけるトランクルームの市場規模は過去最高の650億円規模に拡大。日本の住宅の一戸あたりの平均床面積が減少を続けるなか、2025年には1,000億円規模に成長する可能性を秘めているという。

ビジネスの特徴とヒント

「参入」自体は比較的容易

非倉庫事業者として「トランクルーム」を提供する場合、特別な免許や資格などは必要ない。また、土地を活用する事業としては、人が住むことを前提とした賃貸事業などより初期投資も少なく済み、住宅地としてはマイナス要因となる日当たりの悪い土地や変形地などでも開業しやすい。「参入」のハードルはさほど高くない業種といえるだろう。

商圏における想定利用者と競合の有無は要チェック

ただし、事業を軌道に乗せ、安定した経営を続けたいなら、事前に確認すべきことがある。それはトランクルームの「立地」だ。荷物の出し入れなどを考えれば、利用者にとってトランクルームは手近にある方が便利で、車で5分〜10分程度で行ける半径1〜2km程度の利用が多くなる。その商圏内に住居やオフィスを構えている「想定利用者」はどれだけ存在するか。また、競合トランクルームが近隣にどれだけあるか。少なくともこの2点は事前にチェックし、事業としての可能性の有無を判断しておきたい。

顧客をどう確保するかを考える

さらに考えておきたいのが、「顧客をどのように確保するか」だ。認知度は高まっているとはいえ、生活に欠かせない住居や、車を持てば必須となる駐車場に比べると、トランクルームには安定したニーズがあるとは言い難い。また、トランクルームが増える中で、自社をどう選んでもらうかも大切。価格、セキュリティ、空調管理、使い勝手などで想定利用者のニーズを踏まえた差別化を行いながら需要を喚起し、集客、PRを行っていく必要がある。

開業のポイント

まずはどのような形で事業を行うかを決める

トランクルームの開業では、取り得る事業形態やスペースの種類、運営スタイルなどが複数ある。事業者はそのいずれかを選んだ上で、設備の設置を行い、必要な契約を結ぶなどして、開業準備を進めていくことになる。その上で、トランクルームとして事業を行う場合は、前述の通り「倉庫事業者としてのサービス」「非倉庫事業者としてのサービス」という二つの事業形態があり、倉庫事業者としてサービスを提供する場合、開業には倉庫業法に基づき国土交通大臣による登録が必要。また、開業後も物品の出し入れにはつど業者の立ち会いが必要など利用者にとっても制約が多く、そこから自由に出し入れをしたいという利用者の要望に応える形で、非倉庫事業者のサービスによるトランクルームが生まれ、増えていったという経緯がある。そこで、本記事では主に非倉庫事業者としてのトランクルーム開業を想定して開業のポイントをまとめる。

スペースの種類は「屋外型」と「屋内型」の主に2種類

荷物の保管場所として貸し出すスペースの種類は、コンテナタイプとも呼ばれる郊外に多い屋外型トランクルームと、マンションやビルの内部に設けられた屋内型トランクルームの二つに大別される。車での搬入を想定した屋外型は、広めのスペースに大型の家具や道具、家電などを収納するケースが多く、預かり料金も安めだ。一方、都市部でよく見られる屋内型は、台車などによる荷物搬入を想定しており、より小型の荷物を預かるケースが多い。温度や湿度などの保管環境やセキュリティが管理されている例も多く、料金も屋外型よりは高めになる。初期投資費用に関して、設備の購入・設置費用は、スペースの規模や、設備を新品・中古のどちらで揃えるかで変わるが、いずれの場合でも、最低200万円〜300万円程度は見ておいた方がいいだろう。また同様のグレードのものを購入・設置する場合も業者によって価格が大きく異なるため、相見積もりを取りながら相場をつかんでおくようにしたい。

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自営方式による運営は「顧客募集」と「トラブル回避」に注力

また運営スタイルにもさまざまな方法がある。第一の方法は、集客、契約、管理、保管場所のメンテナンスなどトランクルーム運営に関わる全業務を自ら手がける「自営方式」だ。この場合、管理業務に関した費用は不要だが、稼働率を上げるには積極的な集客活動が必須。トラブル対処も自分で行うことになるため、利用者との契約前に保管できる物品や保管条件を明確にするなど、トラブル回避のための対策を忘れないようにしたい。

管理を外部に任せるなら、一括借り上げ方式か管理委託方式

外部のサービスを利用して運営を行う場合に考えられるのは、「一括借り上げ方式」と「管理委託方式」だ。一括借り上げ方式では、外部のトランクルーム事業者にスペース全体を転貸した上で、利用権を得た外部事業者が運営を全て担い、自分はその外部事業者から固定賃料を受け取る。収益は安定し、手間もかからないが、収益性は落ちる。管理委託方式は、外部の事業者に委託料を払って集客、利用者との契約、料金回収などの管理業務を委託する方法で、手間がかからず、顧客募集も自分で行うよりはスムーズかつ成功裏に進むことが期待できる。さらに、満室になれば一括借り上げ方式より収益性も高くなるが、集客の結果次第では収益が安定しない可能性もある。

運営スタイルによる空室リスクや収益性の違い

外部サービスを活用する場合、複数の事業者に相談したい

外部の運営サービスを利用しようと考える場合、早めの段階で相談することで、業界に関する知見やノウハウを得られる可能性も高い。しかし、相手事業者のサービスを利用する前提で話が進むため、必ず複数の事業者に相談し、内容を比較して判断することが肝心だ。

必要スキル

将来を見通す力と、より適切な選択を重ねる判断力も

繰り返しにはなるが、非倉庫事業者として「トランクルーム」を開業するのであれば、いずれの方式を選ぼうとも特別な免許や資格などは必要ない。ただし、スペースの種類や運営方式、立地、差別化ポイントの設定など、事業の未来を左右するような判断が求められる機会は少なくない。また、前述のとおりトランクルーム市場は今後さらなる拡大が見込まれているということもあり、その将来を見通した上で、適切に選択・判断する力が事業継続の鍵になりそうだ。

自営方式では、積極的な集客・PRを

集客、契約、管理、施設メンテナンスなど運営に関わる全業務を自分で行う自営方式を取る場合、本サイトの「起業マニュアル」ページや業界の関連サイトなどで情報収集を行い、最低限の知識は身につけておくようにしたい。特に、トランクルーム経営の収益を大きく左右する集客、PR方法に関しては、できる限り早いタイミングで実行に移す行動力も求められるだろう。

上記の記事は、作成時の情報に基づき、同業種における開業のヒントやポイントをまとめたものです。実際の開業にあたっては、より専門的な機関に相談することをおすすめします。