業種別開業ガイド

コインランドリー

2019年 10月 4日

トレンド

(1)コインランドリーの市場規模

コインランドリー機器メーカーで売上高トップのアクア(株)によると、日本の洗濯労働市場約5.2兆円のうち約2%、1,000億円規模がコインランドリー市場であると推計されている。

また、コインランドリーの店舗数は2001年の12,502店舗から、2013年には16,693店舗に増加(出典:「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」厚生労働省)している。以降の店舗数について国の調査は行われていないが、「ランドリービジネスマガジン」(ゼンドラ(株)発刊)によると、2017年には約2万店舗と発表している。

このように店舗数の推移をみると市場は拡大傾向にあり、この背景としては、女性の社会進出増加に伴い家事時間がなくなりまとめ洗い需要が増加したことや、広い駐車場を完備した郊外型店舗が増えたことが挙げられる。

(2)他業態店舗との併設

近年、コインランドリーは、他業態の店舗と併設されて開業されるケースがよく見られる。カー用品店や食品スーパーなどの駐車場を有する店舗の一角に設けられるケースのほか、コンビニエンスストアと併設されるケース等もある。

このように併設して開業される理由には、コインランドリー利用時の「待ち時間」の間に、併設されている店舗を利用できるなど、併設する店舗にもメリットが見込まれることがある。

また、子供連れの主婦層をターゲットにしたランドリーでは、待ち時間を楽しんでもらうための遊具コーナーや、水槽を設置して「ミニ水族館」コーナーを設けているケースもある。

(3)家事代行サービスとしてのコインランドリー

従来のように利用者が、店舗へ洗濯物を持ち込むだけではなく、インターネットでの申し込み後、宅配便を利用して洗濯物を事業者に郵送し、洗濯を代行してもらう業態も登場している。洗濯終了後は、事業者が、ランドリーバッグに洗濯物を入れて利用者に届けている。

ビジネスの特徴

コインランドリーの経営には、以下にあげるようなメリットがある。(ア)粗利率が高く収入が安定している、(イ)出店後は運営が容易で維持管理の手間がかからない、(ウ)変形地や狭い土地でも運営が可能である。このようなメリットを活かして、遊休地や空き店舗を利用して事業を始めるケースが多い。

また、コインランドリーは洗濯という日常生活に欠かせないサービスであり、景気にあまり左右されず、一度顧客を獲得すればリピーターを見込みやすい業種でもある。

なお、洗濯機や乾燥機を多数設置するため、洗濯機の騒音や振動、乾燥機からの排熱などの発生は避けられない。コインランドリーは、商圏が狭く地域に密着したビジネスであるだけに、騒音・振動・排熱によって近隣住民に迷惑がかかることが無いよう、当初から配慮して出店することが求められる。

特に、コインランドリーの利用が多い20代男女や主婦層となる30代から40代の女性に好意的に受け止めてもらうことが重要である。

開業タイプ

(1)独立型

出店場所やランドリー機器の選定などに手間を要するものの、高収益が期待できる。

(2)FC型

独立型に比べ開業準備は比較的容易であるが、FC本部の選定がポイントになる。一般的には、FC加盟のための加盟金やロイヤリティーなどがかかる。

なお、コインランドリーの場合、ロイヤリティーに関しては徴収していないFC本部もある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

(1)開業のステップ

立地は、アパート・寮などの密集地帯が望ましい。また、都市部では、駅から徒歩10分圏内の商店街やコンビニエンスストアなどが適性立地となる。一方、徒歩10分超の立地や郊外であれば駐車場が必須となる。

特に最近では、洗濯機では対応が難しい、掛け布団や毛布を洗うニーズがみられる。そのため、駅前立地でない限りは布団対応の大型の装置と、駐車場の設置を検討すべきである。

(2)必要な手続き

コインランドリーはクリーニング業法の規制対象ではないため誰でも開業できるが、「コインオペレーションクリーニング営業施設」として各自治体の保健所に申請し「検査済証」の取得を求める自治体があるので、出店予定地の最寄りとなる保健所に確認する必要がある。

必要なスキル

出店場所の調査、開店後の巡回や清掃、集金を地道に続ける必要がある。なお、自らが対応困難な業務がある場合は、FC型での開業を検討したい。開店後の業務も受託するFC本部も存在するためである。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

コインランドリーは、機器を購入すると多額の初期費用が必要となる。店舗スペースや利用見込数、開業資金などによって異なるが、主な必要設備は、コインランドリー用洗濯機・乾燥機、イス・テーブル、自動両替機などである。

ここでは、機器の購入等を前提としたモデルのほか、初期投資を抑えるモデル例として、リースを活用したモデルも掲載する。

機器の購入等を前提としたモデルとしては、紫雲寺商工会(新潟県新発田市)に掲載されている「コインランドリーに関する需要動向調査」に掲載されている開業モデルを以下に示す。

必要資金例の表(機器の購入等を前提としたモデル)

リースの活用例として、概算となるが7年リースで毎月約30万円程度のケースを想定して開業モデルを以下に示す(機関や金額等はリース会社によっても異なるので必ず確認されたい)。

必要資金例の表(リースを活用したモデル)

(2)損益モデル

a.売上計画

洗濯機及び乾燥機ごとの容量、第数、利用回数、利用単価を以下のように想定し、売上高を算出した。

創業に必要な資金項目と金額を例示した表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。
なお、機器をリースした場合の損益の例となる。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率はその他の洗濯・理容・美容・浴場業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

コインランドリーは、洗濯機・乾燥機などの機器により収益を生み出す装置産業である。一方、機器の高性能化に伴い、洗濯・乾燥という基本的な機能では差を見出しにくくなっている。したがって、考慮するのは「サービス面でいかに差別化を図るか」ということである。

(1)清潔であること

店内は、女性の利用を想定した店舗の清潔さは特に重要である。具体的には照明や内装は明るく、採光性が高い大きな窓、定期的な清掃が欠かせない。かつての独身男性を対象としたコインランドリーは減少傾向にあり、女性目線で見た明るく清潔な店舗でなければ、主婦層に利用してもらえないからである。

(2)治安・風紀への対応

コンビニエンスストアのように外から店内が見渡せることや、防犯カメラなどの設備の導入も考えられる。無人店舗であれば、付近の住民と見回りの契約を結んでいるコインランドリーなどもある。FC型であれば、委託による巡回を請け負っているところもある。
また、緊急連絡先を店内に掲示するほか、「衣類の盗難や取り違えには責任を負えない」旨、明示しておく必要もある。

(3)売り逃し(機会損失)の予防

機械の利用方法や故障の際の連絡先などを掲示する配慮が必要である。また、機械の故障、洗剤販売機の品切れ、両替機のコイン切れなどに注意する。初夏・初秋の雨季は乾燥機だけを利用したいというニーズが非常に高くなり、稼働率が高くなる半面、空き待ちを嫌がる顧客の売り逃しの発生が避けられない。そこで、新聞・雑誌、イスとテーブルなどを置くほか、電源、無線LANの設置や飲料などの自動販売機を設置するのもよい。また、最近ではランドリーの機器もIT化が進んできており、終了時刻をスマートフォンで通知する機能を提供する機器メーカーもある。これらを活用して、顧客の待ち時間を苦にさせない配慮があると競合コインランドリーとの差別化につながる。

さらに集客力・収益力を高めるには、容量の大きい大型の機器を導入することも必要である。大型機器を導入することは、布団洗いができるというPRポイントになるほか、単価アップも見込める。ドライクリーナー、スニーカー専用洗濯乾燥機を併設しているコインランドリーもある。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)