業種別開業ガイド

結婚相談所

2019年 12月 13日

トレンド

(1)婚活サービスの普及

結婚相談所や婚活アプリといったいわゆる「婚活サービス」の利用経験者は増加しており、業界団体の調査(全国の20歳~69歳の男女約109,000人が対象)によれば利用経験者は9人に1人以上の割合との結果が出ている。(出典「日本結婚相手紹介サービス協議会(JMIC)調査報告書」)

平成21年に経済産業省が行った調査では、市場規模は400~500億円と推定されているが、前述のようにサービスの利用経験者が増加していることや、婚活アプリ等の新しいサービスも登場していることから、市場はさらに拡大しているものと思われる。

(2)出会いの多様化

以前より存在する婚活サービスである結婚相談所や結婚情報サービスに加え、婚活アプリ、街コン、地方自治体主催のイベントなどが登場し、出会いの多様化が進んでいる。

(3)中高年のニーズ増加

我が国では晩婚化・未婚化が進み、平均初婚年齢は上昇している。平成29年の国勢調査では男性31.1歳、女性29.4歳となった。同年の人口動態統計によれば、生涯未婚率(50歳時未婚率)も男性23.4%、女性14.1%と上昇傾向にある。このような時代背景から、結婚相談所の経営にあたっては中高年の動向やニーズを捉え、新規顧客の開拓をしていくことが必要不可欠である。

ビジネスの特徴

結婚を希望する独身会員に対し、引き合わせ、データマッチング、カウンセリング、インターネット交流サイトの提供、セミナー・イベント開催といったさまざまな方法により、出会いから結婚に至るまでのサポートを行う。

一般的には会員制でサービスを提供し、対価として入会金、月会費、お見合い料、イベント参加費、成婚料などを受け取るビジネスモデルである。

結婚相談所の形態は様々であるが、平成21年に経済産業省が行った調査では、大きく分けて「仲人・結婚相談型サービス」「データマッチング型サービス」「インターネット型サービス」の三つに分類されている。特に「仲人・結婚相談型サービス」は個人事業者も多く、大手結婚相談所よりも手厚いサポートや、地域密着が主なセールスポイントとなっている。大手事業者が運営する業界連盟に加入すると独立にあたってのサポートが受けられる。

開業にあたっては広告宣伝費・WEBサイト制作費・連盟への加入料などが必要となるが、設備投資はほとんど必要ないため他の業種よりも初期費用が低いのが特徴である。その後の運転資金には、一般的な経費のほか「データマッチング型サービス」「インターネット型サービス」の場合は、システムの開発・維持コストも必要となる。また、成功報酬型など利用者が後払いをするサービスでは費用の立替が発生するため、運転資金確保には注意が必要である。

開業タイプ

(1)副業型

結婚相談所は多額の設備投資を必要とせず、自宅での開業が可能である。主な業務である会員とのやりとりは比較的時間の融通が利くことや、お見合い・イベント等も休日開催が多いことから、まずは副業での開業も可能なビジネスとされている。

(2)専業型

結婚相談所・仲人として独立し、個人事業主となる。まずは副業として開業し、軌道に乗り会員が数十名に増えたタイミングで専業に移行するという方法も考えられる。

(3)法人型

法人が既存事業を活かすため、新規事業として結婚相談所を開業するケースもある。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。

開業のステップ

(2)必要な手続き

開業にあたり許認可や届出は必要ない。関連法規としては特定商取引法の適用を受けるほか、個人情報を扱うため個人情報保護法が適用される。

個人情報保護を含むサービスの質や信頼性に関して、平成20年7月にサービス産業生産性協議会により「結婚相手紹介サービス業認証制度に関するガイドライン」が定められた。これに基づき、特定非営利活動法人結婚相手紹介サービス業認証機構の認証や、特定非営利活動法人日本ライフデザインカウンセラー協会の認証(通称「マル適マーク」)が制定された。大手事業者を中心に認証を取得している事業者も多い。

業界連盟への加盟には、加盟料の支払いや所定の研修会への参加などが条件になっているケースが多くみられる。

会員獲得

結婚相談所は会員あってのビジネスであるため、会員獲得が重要であるが、個人事業者が多い「仲人・結婚相談型サービス」においては特に「成婚率」が最重要課題となる。中小事業者の場合、大手事業者のように大規模な広告宣伝は難しいため、実績を作り信頼感を与え、元利用者からの口コミで集客する必要があるからである。

成婚率を高めるには、優良会員を獲得する必要があり、そのためには、業界連盟への加盟や人脈作り、ホームページのほかSNS等での情報発信といった方法が考えられる。最近では婚活イベントを開催している地方自治体も多いため、マッチングを図るのもひとつの方法である。会員の質という点では、入会時に審査を設けている結婚相談所も多い。

会員を獲得できたらきめ細かいフォローを行い、会員のモチベーションを維持しなければならない。むやみに会員数を増やさずサービスの質を保つという視点も必要である。

必要なスキル

結婚相談所で働くにあたって義務付けられている公的資格はないが、講習や試験を経て認められれば民間資格の「仲人士」「カウンセラー」を名乗ることもできる。業界とは直接関連のない資格を保有し、独自の強みをアピールするケースもある。たとえば、結婚と資産設計には親和性が高いことからファイナンシャル・プランナーの資格を保有している者もいる。

第三者同士の婚姻を取り持つという特性から、礼儀作法やコミュニケーションスキルなどのヒューマンスキルは他の業種よりも強く求められる要素である。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

小規模な賃貸物件での開業を前提としているが、業種柄、什器・備品類等により内装に経費をかけている前提でモデルを作成した。

【参考】10坪の賃貸事務所で専業型結婚相談所を開業する場合の必要な資金例

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

他の年間収入は、お見合い料(0.5万円×50人×年4回)、イベント参加料(0.5万円×15名×3回)及び成婚料(成婚料20万円×4名)で算出した。

売上計画例の表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

 損益のイメージ例の表

※財務標準比率は結婚相談所、結婚式場紹介業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

結婚相談所は、大規模展開の場合はシステム開発やアプリ開発などに資金を要する。しかし、小規模専業型では原価はほぼ負担はなく、その売上総利益率は97.6%に及ぶ。また、小規模専業型において地元密着の副業型から転じるようなケースでは、一定の会員基盤を有した上でスタートが切れるため、開業初期に一番のコストとなりうる会員募集の広告費が抑えられる。

したがって、副業型から転じるような小規模専業型は、ニッチながらも大手に対抗しうる競争力を備えているといえる。しかし、いわゆる地元の世話役といった感のある経営者の場合、経営者個人への依存度が自ずと大きくなる傾向があり、その有形無形の資源を法人として如何に引き継いでいけるかが中長期的な課題となる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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