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EU以外の国のPOPs条約のPFOAの規制動向を教えてください。また、コンタミは、25ppb以下の含有であれば、適合していると宣言できるでしょうか。

2021年 3月16日

PFOAはPOPs条約により国内法で規制されることは承知しています。EU以外の国のPFOAの規制動向を教えてください。
コンタミ(contamination 汚染)は、25ppb以下の含有であれば、適合していると宣言できるでしょうか。

回答

POPs条約は、本文改正と附属書改正があり、それぞれ手順が決まっています。附属書の改正は、COPで採択し、国連事務総長が締約国に採択を通知します。
締約国は、通知により1年以内に国内法を整備します。
締約国は国連事務総長の通知に対して、POPs条約第22条により、受諾拒否を書面で通知できます。また、1年後に自動発効でなく、第25条により締約国が受諾書を提出した時点から効力を発生させることもできます。
締約国の個々の状況は、POPs条約の事務局のサイトで公開されています。1)
FilterでPFOAを選択すれば、締約国の状況が確認できます。
日本は、第22条で受諾拒否としています。日本は化審法の第1種特定化学物質に指定する準備を進めており、2021年3月頃に化審法を改正し、その後半年から1年の移行期間が設定される見込みです。
なお、第22条で受諾拒否の撤回は何時でもできます。
カナダ、中国や韓国等は、第25条の条件を付しています。

コンタミなどの非意図的混入は、EUでは25ppbですが、これはEUの独自の基準です。日本では「ものづくり」を「利用可能な最良の技術(BAT(Best Available Technology/ Techniques))で管理することを要求する見込みです。

1.国内法への転換

POPs条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は国連のUNEP(United Nations Environment Programme 国連環境計画)が事務局になっています。
POPs条約は、本文改正と附属書改正があり、それぞれ手順が決まっています。附属書の改正は、COP(Conference of the Parties 締約国会議)で採択し、国連事務総長が締約国に採択を通知します。
締約国は、通知により1年以内に国内法を整備します。
締約国は国連事務総長の通知に対して、POPs条約第22条により、受諾拒否を書面で通知できます。また、1年後に自動発効でなく、第25条により締約国が受諾書を提出した時点から効力を発生させることもできます。
PFOAは、2019年4月下旬から5月初旬に開催された第9回COP(COP9)で、採択されました。2019年12月3日に国連事務総長がPFOAを附属書Aとする採択を締約国に通知しました。
POPs条約によるPFOA規制は、2020年12月3日に発効しましたが、第22条の通知国や第25条による発効条件国もあります。
締約国の個々の状況は、POPs条約の事務局のサイトで公開されています。2)
FilterでPFOAを選択すれば、締約国の状況が確認できます。
日本は、第22条で受諾拒否としています。日本は化審法の第1種特定化学物質に指定する準備を進めており、2021年3月頃に化審法を改正し、その後半年から1年の移行期間が設定される見込みです。
なお、第22条で受諾拒否の撤回は何時でもできます。
カナダ、中国や韓国等は、第25条の条件を付しています。

i.韓国 
韓国は残留汚染物質管理法で規制します。韓国は法、施行令、規則のツリー構造で確認できます。3)
「残留汚染物質管理法施行令」は、2020年7月14日に改正されていますが、施行日は未定です。
第2条でPOPs条約との関連を定義しています。 4)
第2条(残留汚染物質の種類)「残留汚染物質管理法」(以下「法」といいます)第2条(1)に係る残留汚染物質は以下の通りである。

  1. "残留性有機汚染物質に関するストックホルム協約"(以下"ストックホルム協約"という)付属署AからCまでに規定された化学物質から環境部長官が関係中央行政機関の長と協議し告示する物質
  2. 「水銀に関する水俣協約」(以下「水俣条約」という)に規定された水銀及び水銀の化合物

発効日は、POPs条約第25条の条件により、確定していなく附則に規定しています。
附則
この施行令は、第9回ストックホルム条約締約国会議で採択された附属書Aが韓国で発効した日から発効するものとする。

対象物質は、改正前は別紙1に記載とされています。2021年2月15日時点で29物質が収載されています。PFOAは収載されていません。

エッセンシャルユースは、下記にあります。現時点では2017年改正までです。5)
hwpファイルですが、エッセンシャルユースのリストがあります。6)
なお、hwpファイルは、韓国固有のファイル形式ですが、Micro Softからhwpファイルの変換ソフトが無料でダウンロードできます。

ii.中国
中国では、危険化学品安全管理条例」、「化学品の初回輸入及び有毒化学品の輸出入環境管理規定」、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」、「水銀に関する水俣条約」、「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤に関するロッテルダム条約」などの変更状況により、「中国で厳格に制限される有毒化学品名録」が公布されます。

POPsの規制は、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約の批准に関する全国人民代表大会常任委員会の決定((生態環境省・商務省・税関総局)2019年12月30日)です。7)
対象物質は《中国严格限制的有毒化学品名录》(2020 年)ですが、現在CAS RN番号物質29物質及び番号なしの30物質で、 PFOAは記載されていません。 8)

iii.台湾 
毒性及關注化學物質管理法の持久性有機污染物斯德哥爾摩公約で、PFOAを規制しています。9)
エッセンシャルユースもあります。

  1. 研究、実験、教育
  2. 半導体フォトグラフィーまたはエッチングプロセス
  3. 写真フィルムコーティングの製造 等

iv.シンガポール 
POPsは“ENVIRONMENTAL PROTECTION AND MANAGEMENT ACT(CHAPTER 94A)”で規制しています。 10)
別表2 Part1で除外を認めず、Part2で明確に、接着剤、釉薬、フィラー(樹脂などの添加剤)、塗料やワニスへの使用を禁止しています。

v.アメリカ
PFOAはTSCAのSNUR(40 CFR § 721.10536)に特定されています。 11)
要件には、「電子または他の小型化されたデバイスの半導体または類似の構成要素を製造するために、光顕微鏡撮影およびその他のプロセスで使用する反射防止コーティング、フォトレジスト、または界面活性剤に使用すること。」などがあります。

2.適用除外

POPs条約の附属書A収載物質は、製造、輸入、使用を禁止する廃絶物質ですが、締約国が、COPで採択した以外に、個別に適用除外項目を設定することができます。
POPs条約から締約国の国内法に転換するときに、締約国の状況に合せて、「エッセンシャルユース」の設定がPOPs条約第4条(個別の適用除外の登録)で認められています。
POPs条約附属書Aの項目は、「化学物質」「活動」「個別の適用除外」で構成されています。「活動」は、「製造禁止」および/または「使用禁止」です。
附属書Aの「活動」「エッセンシャルユース」を考慮し、国内法を設定しますが、例えばEUと日本では異なる可能性はあります。「個別の適用除外」は事務局に報告し、事務局はすべての締約国にその内容を送付し、「個別の適用除外」の検討をします。
適用除外項目は5年間の期限がありますが、延長もできます。適用除外はPOPs条約の事務局に“正当化する報告書”を提出し登録します。この延長回数の制限は記述されていませんが、基本は開発途上国の状況を考慮することが目的です。

PFOAの適用除外期間は、原則として2020年12月3日から5年間となります。
なお、日本では化審法の第一種特定化学物質に指定しますが、COP9の採択結果を厳格に適用し適用除外は追加しないとしています。

PFOAはPOPs条約第5条(意図的でない生成から生じる放出を削減し廃絶するための措置)で、「利用可能な最良の技術」により管理することを求めています。
EUでは、コンタミネーションなどの物質、混合物及び成形品中の意図しない微量汚染物質として発生するPFOA、その塩及びPFOA関連化合物について限度値を設定すべきであるとしています。その限界値は、その塩を含むPFOAについて0,025mg/kg(25ppb)、および個々のPFOA関連化合物またはそれらの化合物の組み合わせについて1mg/kg(1ppm)に設定しています。

一方、日本では、コンタミネーションの閾値を規制するのではなく、「ものづくり」に関連する「利用可能な最良の技術(BAT(Best Available Technology/ Techniques))」を要求する見込みです。BATは企業による自主的な取り組み(仕組み)で、基本要件は国が示します。

適用除外やエッセンシャルユースは、POPs条約の前文の「共通だが差異のある責任」の原則により、締約国の規定は一律ではありません。

日本企業は、化審法の規定により企業活動を行い、輸出する場合は、同時に輸出先国の規制に合わせることになります。

引用情報等:

回答者

中小企業診断士 松浦 徹也

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