ビジネスQ&A

安全管理や衛生管理の注意点を教えてください。

金属加工品の小さな工場を営んでいます。最近、企業の安全や衛生管理に関する不祥事をよく聞きますが、中小企業でも整備しておかなければならない事項や注意点などがあれば、教えてください。

回答

安全や衛生に関するトラブルの原因の多くは人為的なものです。いま一度、「組織的な安全に関する取り組み」と、「従業員一人ひとりの安全に対する意識の向上」といった観点からトラブル防止のための施策を考えてみましょう。

近年、大企業の製造所などで大規模な火災などが頻発していますが、このような災害は会社の経営に重大な影響を及ぼすものであるため、日ごろから対策を講じておくことが求められます。最近は、このような災害対策も含めた危機管理の重要性がますます問われる傾向にあり、BCPなどの活動が活発になっています。

BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Planning)の略称で、企業が大規模な災害に遭遇した際に、サービスの提供や製品の供給を許容される期間内に再開し、マーケットシェアや取引先からの信頼、企業価値・ブランドを守るための一連の活動を指します。

安全管理や衛生管理についてはさまざまな考え方がありますが、共通するのは、

  1. 日常管理を組織的に行うことと
  2. 一人ひとりの従業員への教育や意識づけを徹底すること

この2つの重要性です。以下に詳しく見ていきたいと思います。

【日常管理を組織的に行うこと】

トップのリーダーシップはもちろんのこと、管理・責任体制の明確化やきちんと機能する安全委員会や衛生委員会の設置・運営、総括安全衛生管理者などによる現場巡視などの具体的な施策があります。法定上最低限やらなければならないことを確実に行うのはもちろんのことですが、それだけですとマンネリ化するおそれがあるので、常に組織的な活性化策を考えていくことにより、組織全体で安全管理への意識を高めるよう努めましょう。

たとえば、社長による現場巡視を行ったり、社長と現場作業員が一体となった安全管理への取組みの場を設けたりすれば、現場で実際に作業を行う従業員との距離も近くなり、現場の安全の重要性に対する社長の認識を高めることにより、よりよい緊張感も生まれるでしょう。日ごろは現場から離れた業務で多忙を極め、なかなか現場へ足を運べないという社長も多いことでしょうが、現場との距離を近く保つことにより生まれる生産性や安全性の向上も重要だと思います。

【一人ひとりの従業員への教育や意識づけを徹底すること】

従業員一人ひとりの安全に対する意識の保持は、いまさらあらためて言うまでもないことですが、決して怠ることのできない大切なものです。ほかの企業の不祥事や、安全に関する統計を取ってみても、事故やトラブルの要因のうち、大多数を占めるのは「人為的ミス」です。人為的ミスには作業標準の逸脱や、不安全行動、機械設備などのチェック・メンテナンスの不備、職場の安全ルールの軽視などいろいろとありますが、そのほぼすべての根底にあるのは、従業員一人ひとりの安全に対する意識が低下していることです。作業によっては単純なものも多く、ついついマンネリ化により手を抜いたり気を抜いたりしてしまうこともあるので、安全に対する意識を高く保つことができるような施策を講じておく必要があります。

具体的には、安全についての教育を行ったり、模範安全作業員への表彰制度を設けたり、作業員による自主参加型の安全委員会などの組織を設けて、作業員自身の積極性により安全についての提案などを行い、一人ひとりの安全に対する意識高揚を図り、単純なミスによるトラブルが起こる可能性を極力抑えるようにしましょう。

図1 KY(危険予知)訓練の一例 図1 KY(危険予知)訓練の一例
図1 KY(危険予知)訓練の一例

納期に重きがおかれて、安全については二の次で個人任せとなっているケースがよく見受けられますが、一度第三者災害などの重大なトラブルが発生すると、会社や従業員に多大な影響を及ぼすことを肝に銘じ、いま一度トラブル防止のために、安全衛生管理についての取り組みを見直してみるとよいのではないでしょうか。

回答者

中小企業政策研究会

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