ビジネスQ&A

社長が急に亡くなりました。どうすればよいでしょうか?

先日、代表取締役社長が急に亡くなりました。社長自ら担当する顧客先はなかったため、いまのところ業務に支障は出ていませんが、残った取締役は今後、どういった手順で何をしていくべきでしょうか?

回答

まずすべきことは、従業員や取引先への社長の死去についての連絡です。葬儀などが終わった後は、遅滞なく会社の運営を継続し、従業員や取引先の不安を取り除くためにも、早急に新代表を選任して、新しい経営体制を社内外へ通知するようにしましょう。

代表取締役社長が(以下、社長と略す)急に亡くなった場合、残された役員の方々は、悲しみや不安な気持ちに包まれていると思われますが、会社は遅滞なく運営を続けていかなくてはなりません。まず、すべきことは、従業員や取引先など、会社に関係する人々への連絡です。そして、もっとも重要なことは、新しい社長を決めて、新しい経営の体制を早急につくることです。これが遅れると、いろいろと支障が出てくることになります(図1)。

社長が急に亡くなった場合の対応を説明した図 社長が急に亡くなった場合の対応を説明した図
図1 社長が急に亡くなった場合の対応

【従業員への説明と代行者の選任】

一般的に、会社の規模が小さくなるほど、社長の影響力や求心力は大きいものです。その社長が急に亡くなった場合、社長のもとで働いてきた従業員は、会社の運営や将来について、かなり不安になることでしょう。まず、亡くなったことを報告するとともに、業務の遅滞がないよう、社長が担ってきた業務や決済を、当面、代行する人を役員の中、もしくは従業員の中から選任する必要があります。

【関係先への連絡】

顧客・仕入先・外注先・取引銀行など、会社に関わるすべての関係先へ、直ちに連絡する必要があります。ただ、社葬を行って取引先の方々に葬儀に参加してもらうかどうかは、故人や遺族の方々のご意向によります。実際、社長が亡くなられた会社でも、葬儀は身内だけで行い、亡くなった報告だけをFAXなどで通知するケースもあります。

もし、社葬を行うことになったら、通知すべき取引先をリストアップしていきましょう。通知する際の文面のフォーマットですが、通常、葬儀業者が用意しています。また、社葬を取り仕切る責任者を決め、従業員の役割分担も決めておく必要があります。参列者の席順や焼香の順番決めなど、打ち合わせる事項は多岐にわたりますが、通常は葬儀業者が段取りをリードしてくれます。

【新しい経営体制の確立】

最も重要なことは、早急に新しい社長を決めることです。なぜなら、亡くなった社長の名前はすべてのものに使用できなくなるからです。

したがって、亡くなった社長の名義になっているものは、すべて新社長名義に変更する必要があります。ちなみに、社会保険関係の届出は5日以内となっています。

新社長の選任は、取締役会を通じて行われます。残った取締役が3人以上いれば、取締役会で、その中から新しい社長を選任する決議をすることができます。

なお、残った取締役が3人未満の場合には、代表取締役社長の選任はできません。その場合には、株主総会で新たな取締役を追加する必要があります。なお、場合によっては、裁判所に申立てをして、仮取締役を選任してもらうこともできます。

新たな社長が決定した後は、取締役会の議事録を作成し、所轄の法務局へ代表者変更の登記を提出します。これらの事務手続きはご自身でもできますが、司法書士の方に代行してもらうことも可能です。

新しい社長が決まった後は、社内で発表するとともに、関係先へ早急に通知しましょう。電子メールなどでの通知も可能ですが、社長交代の案内状を郵送するケースが一般的です。

【その他】

社長交代で注意をしたい点は、借入金の担保や保証人などです。

多くの場合、社長は金融機関から借入について、連帯保証人になっています。このため、新たな社長、あるいは、相続人が連帯保証人になるよう求められると思われます。また、社長個人が担保提供している場合も、変更の手続きや登記が必要になります。

そのほかの手続きの一つとして、亡くなられた社長が法人契約として生命保険に加入されていた場合の死亡保険金の請求があります。死亡保険金の請求方法や必要な書類については、加入されていた保険会社に問い合わせる必要がありますが、一般的に必要な書類は以下のとおりです(括弧の中は書類の取り寄せ場所です)。

  1. 会社の登記簿謄本(所轄の法務局)
  2. 会社の印鑑証明(所轄の法務局)
  3. 死亡証明書(亡くなった病院など)
  4. 住民票の除票(亡くなった方の住民票がある市区町村役場)
回答者

経営コンサルタント 谷田部 剛