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プロゲーマー

トレンド

(1)世界的に注目されているeスポーツとプロゲーマー

ビデオゲームやコンピュータゲームなど、主に電子機器を使用するゲームを、スポーツ競技として捉える「eスポーツ」。eスポーツとは、エレクトロニック・スポーツの略で、格闘技やスポーツなどの競技性の高いゲームを使用し競うものである。

内閣府資料「拡大する世界のeスポーツ市場と日本市場における展望(2018年)」によれば、2018年の世界のeスポーツ市場規模は約16億ドル(約1,760億円)であり、5年後の2022年には23億ドル(約2,530億円)に達すると予想されている。

世界での活発な動きを背景に、アジアでも2018年に開催されたスポーツのアジア競技大会では、eスポーツがデモンストレーション競技として種目の一つに取り入れられた。また、2022年からはアジア競技大会のメダル種目として正式認定されている。日本でも2019年の国体で文化プログラム種目としてeスポーツが加わることになっている。

(2)強いのは中国・韓国・アメリカ・北欧。日本も参戦

世界各地でeスポーツや対戦型オンラインゲームの大会が開かれており、大会に出て賞金を獲得するプロゲーマーも現れている。開催地は、アメリカが多いが、賞金総額が100万ドルを超える大会も数多くあり話題を呼んでいる。日本国内でも大手企業がスポンサーにつき、賞金総額が数千万円になる大会も開催されてきている。

eスポーツの獲得賞金総額が高い国は、中国、韓国、アメリカ、スウェーデン、デンマークなどである。日本でも、2018年に一般社団法人日本eスポーツ連合が設立され、国際大会への参加活動の支援が始まった。早速同年、「日本・サウジアラビアeスポーツマッチ」の調印式が行われ、2019年1月に日本とサウジアラビアの親善試合が行われた。プロゲーマーの活躍の場は急速に拡大してきていると言える。

プロゲーマーの特徴

・プロゲーマーが行うゲームのジャンルは、格闘ゲーム、パズルゲーム、アクション・アドベンチャーゲームなど多岐にわたる。また、対戦においては、シングルプレイでスコアを稼いで勝敗をつけるものもあれば、マルチプレイ(複数名でプレイ)で、プレイヤーが最後の一人になるまで競うゲームなどがある。それぞれの大会でレギュレーションがあり、1人もしくはチームを組んで競技を行う。

・プロゲーマーの中には、企業とスポンサー契約を交わし、資金援助を受けながら、技能を磨いて大会に出場する人もいる。このほか、知名度を活かして、ゲーム雑誌への投稿や攻略本の執筆、ゲームイベントへの出演などで収入を得る人もいる。 また、ゲーム会社の新商品レビューや動作チェックなどを行うこともある。このほか、アルバイトや他の副業をしながら自身のスキルを磨き、大会出場などで活躍している(セミプロに近い)プロゲーマーも多い。

・後述するように、プロゲーマーとして活躍できる期間は短い。その短い現役時代にどれだけの戦歴や記録を作れるかが、プロゲーマーとしての価値を決めると言っても過言ではない。しかし、現役引退後もゲームに携わって長く仕事をしていくならば、強さだけでは足りないだろう。末永く支持してくれるファン作りや、執筆活動や後進の育成活動も求められる。

プロゲーマー 活動スタイル

プロゲーマーの場合、活動のスタイルが大きく2つに分類できる。

(1)個人で活動するタイプ

活動のフィールドは個人対戦型のゲームが主となる。活動資金を確保するため、専門雑誌への投稿、攻略本の執筆などを副業としているケースもある。中には、ゲームの話題を中心に提供するYouTuberとして活躍する人もいる。

(2)チームに所属して活動するタイプ

チームに所属するメリットは、すでにチームにスポンサーが付いており、資金援助があり、練習環境が整っているケースが多い点である。また、国内だけでなく海外のチームに所属して活躍する人もいる。チームへの参加は、個人的なつながりによるものもあるかもしれないが、公募またはスカウトによるものが一般的である。

活動ステップと手続き

(1)活動のステップ

活動に向けてのステップは、主として以下の4段階に分かれる。

(2)必要な手続き

プロゲーマーとして活動するために必要な認可など、特別な手続はない。

活動内容と工夫

自身が活動するゲームのジャンルを決めることから始める。近年のプロゲーマーが活躍する競技種目としては、以下のようなものをあげることができる。

<対戦格闘ゲーム>
一般に、正式なスポーツの枠を越えた様式(特殊な能力や道具を用いて)で戦うゲームとされる。広義には、スポーツゲーム枠の武道種目も含まれる。

<スポーツゲーム>
現在、賞金の出る大会種目やプロゲーマーが活躍する種目としては、サッカー、野球、アメリカンフットボールなどが多い。

<RTS(リアルタイム・ストラテジー)>
プレイヤーが司令官などになり、兵士などのキャラクターに指示を与えて敵を倒すゲームである。

<パズルゲーム>
従来の数字パズルなどをコンピュータゲーム化したものであるが、3DCGの登場で思考領域が3次元化し難解なものもある。

<アクションRPG>
アクション・ロールプレイングゲーム(またはアクション・アドベンチャーゲーム)と呼ばれ、戦闘を中心とするアクションゲームの要素と主人公を取り巻く物語的な要素を併せもったゲームである。

・活動内容

プロゲーマーが大会でプレイするゲームは、最新仕様のバージョンであり、かつ、開催時に人気のあるゲームであることが多い。必ずしも、自分の好きなゲームや操作し慣れた仕様で戦えるというわけでない点がプロとアマチュアの違いであると言える。
大会に関する情報を可能な限り早めに入手し、開催内容に合わせたトレーニングと対策を立てていかなければならない。

・他分野への進出

反射神経や動体視力といったものは年齢と共に衰えてくるものである。そのため、アクション系プロゲーマーの選手寿命は短く、セカンドキャリアの設計も必要だろう。
プロゲーマーの副業または引退後に適した進路としては、eスポーツに関したアナリスト(解説者)、コーチ(指導者)、ライター(執筆家)、YouTuberなどがある。また、自らチームを立ち上げてマネージャーになる、また既存チームの責任者に就任する道もある。

必要なスキル

・ゲームを実践するうえで必要なスキル

各ゲームに応じたスキルが求められる。たとえば、対戦格闘ゲームでは瞬時の判断力や瞬発力、スポーツゲームでは、瞬時の判断力や瞬発力に加え、各競技のルールや性質を熟知していることも求められる。RTSでは、戦略立案のための深い洞察力や的確な判断力が必要とされる。パズルゲームでは、計算力や数学的な要素も必要とされる。アクションRPGでは、登場人物の心理を読む(敵を欺く)力も求められるだろう。このほか、チームでプレイするゲームにおいては、協調性やコミュニケーション力も必要とされる。
上記のほか、大金を賭けた試合でも実力を発揮できる精神力や、海外遠征も多いため最低限の英会話力も必要となる。

・スキルアップ

スキルアップに関しては、独自にトレーニングを積んで大会に出場し経験値を高めていく方法と、専門学校に通い、完成されたカリキュラムと指導者の下で実力を付けていく方法がある。専門学校に通う場合は高額な授業料が必要であるが、就職サポートや奨学金を用意しているところもある。

・営業スキル

プロとしての活動を続けるためには、資金調達を行うスキルも求められる。具体的には、スポンサー企業の獲得や、雑誌社への記事投稿、書籍出版などのため、自身を売り込む必要性が出てくる。

活動資金と損益モデル

(1)活動資金

最低限必要な活動資金としては、練習用パソコン、アプリケーションソフトの購入費用が必要となる。ゲーム用の高性能なパソコン機器や専用デスク、チェアまでを用意すると20万円程度はかかる。大きなスペースは必要としないので、自宅で活動することも可能である。

【参考】:プロゲーマー(自宅にて個人で活動するタイプ)の年間活動資金例

(2)損益モデル

■売上計画
自身のスキル・実績を勘案して売上の見通しを立てることが重要である。

(参考例)プロゲーマー(自宅にて個人で活動するタイプ)

※休日は不定期に取ることとする。

■損益イメージ
(参考例)プロゲーマー(自宅、個人で活動するタイプ)

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 活動資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、活動を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)