業種別開業ガイド
TikToker(ティックトッカー)
2022年 6月 17日
トレンド
(1)「TikTok LIVE」の正式ローンチ
2020年7月にTikTok運営元であるBytedance株式会社のプレスリリースで、TikTokのライブストリーミング機能「TikTok LIVE」が2020年7月31日に正式ローンチされることが発表された。
これまではあくまでモバイル端末向けショートムービープラットフォームであり、ライブ機能はなかったが、「TikTok LIVE」が正式にローンチされたことで、もともと150の国や地域で使用されるグローバルかつ利用者数の非常に多いプラットフォームであることから、他のライブ配信プラットフォームより収益化につながりやすいのではないかと期待されている。
(2)「TikTok LIVE Gifting」の正式ローンチ
2021年2月にTikTok運営元であるBytedance株式会社のプレスリリースで、TikTokにおける投げ銭機能である「TikTok LIVE Gifting」が2021年3月1日に正式ローンチされることが発表された。
前述の「TikTok LIVE」の正式ローンチ時点では投げ銭機能がなかったため、TikTokによる収益は存在しなかったが、「TikTok LIVE Gifting」が導入されることで、TikTokによる収益化が可能となった。
ビジネスの特徴
ティックトッカーとは、モバイル端末向けショートムービープラットフォーム「TikTok」を活用して「TikTok LIVE」での「TikTok LIVE Gifting」による視聴者からの寄附を得る個人、グループの総称である。海外の人気ティックトッカーには企業とのスポンサー契約や広告案件を受ける事例もあり、また、アフィリエイトやオンラインサロン等への誘導により別途収入源を確保するという手段もある。
初期投資が不要であるなど開業に際し有利な点もあるが、他のプラットフォームと異なり、現状、TikTok単体での収益化の手段が「TikTok LIVE」での「TikTok LIVE Gifting」による収入のみであるため、安定した収入の確保が難しく、趣味としてTikTokを行っている個人が多い。
開業タイプ
(1)新規参入型
個人として独自の配信チャンネルを開設。独自の切り口のもとショートビデオを配信し、地道にフォロワーの増大を図るタイプである。
(2)副業型
本業とは全く別に副業として、配信チャンネルを開設するタイプである。少ないリスクで開業することが可能である。
(3)兼業型
本業を広告するための手段、本業へ顧客を誘導する手段としてプラットフォームを利用するタイプである。
開業ステップ
(1)開業のステップ
(2)必要な手続き
ティックトッカーとして個人で開業する場合に、特別な許認可の取得は必要ない。
ただし、「TikTok LIVE Gifting」を得るための「TikTok LIVE」は16歳以上かつ、TikTokの定める条件を満たした方のみ利用可能な機能であり、2020年7月に運営元であるBytedance株式会社の同機能に関するローンチのプレスリリースによれば、2,000人へ同機能を付与し、今後順次、拡大を予定しているとしている。
詳細な条件についてはTikTok上で明記されていないものの、一定のフォロワー数の確保と「『広告で有名になりたい』プログラムへの特別インビテーション」に参加する必要がある。
必要なスキル
ティックトッカーになるには特別な資格などは必要なく、ライバー同様、動画の配信に際して編集作業も発生しないため、スキル面でのハードルは高くない。
ただし、収益化には視聴者からの寄附を集める必要があるため、TikTokと協賛企業の広告と関連したハッシュタグチャレンジやブランドエフェクトを利用した動画の投稿を行い、プラットフォーム上でお勧めされやすくすることで、フォロワーの確保につなげるなどの工夫が必要である。また、視聴者からの寄附であるため、ライブ配信の実施も必要不可欠である。
特にライブ配信は視聴者にとってただ見るだけの媒体ではないため、双方向のやり取りを楽しめるようにギフトに対して細かく反応することやコメントへの返答をまめに行うことなど、丁寧な対応で継続的に視聴するファンを獲得することが収益化には必要になる。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
【新規参入型、事務所は構えず自宅で開業する際の必要資金例】
(2)損益モデル
a.売上想定
2021年9月に株式会社SheepDogの『TikTokライブ配信への投げ銭に関するアンケート』によれば、投げ銭機能を利用したことがあると回答した方の合計は8.75%である。あくまで試算となるが、以下のように売上モデルを作成した。ただし、この収益を得るためには、定期的に「TikTok LIVE」を配信する必要があり、副業として開業するのが妥当であると思われる。
b.損益イメージ(参考)
上記a.売上計画に記載の売上高に対する売上総利益及び営業利益の割合(標準財務比率(※))を元に、損益のイメージ例を示す。
※標準財務比率のうち、売上総利益率は該当する業種の財務データがないため、推定値を掲載。営業利益率は、映画・ビデオ制作業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。
(3)収益化の視点
ライバー同様、配信内容や方向性にもよるが、ライブ配信という性格上、原価等の負担は軽く、売上総利益率は高位となり、その粗利から主に人件費を賄っていくこととなる。また、上掲の損益モデルに記載の通り、定期的に「TikTok LIVE」を配信し、投げ銭を得る必要があり、他のプラットフォームと比較して、収益化へのハードルは高いと想定される。
したがって、収入自体が発生しない期間が当面続くことになるが、特別なことをしない限り経費が掛かるわけでもないためリスクは少ないといえよう。また、権限が付与されることができれば「TikTok」自体のサービス利用者の多さに対して、「TikTok LIVE」配信者は限られており、収益化も可能になるだろう。
なお、ティックトッカーの年収は非公開であるが、トップクラスのティックトッカーであれば数億円の年収も得ているといわれている。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討する際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)