業種別開業ガイド
YouTuber(ユーチューバー)
2019年 12月 27日
トレンド
(1)市場規模は年々拡大
米Google Inc.が展開する「YouTube」は全世界で19億人、国内でも6,000万人超もの利用者を擁する人気動画共有サービスである。YouTuberが動画投稿することで得る広告収入の市場規模は2017年で219億円(CA Young Lab/デジタルインファクト社調べ)まで拡大している。また、再生回数の増大傾向も相まって、当面は年10~40%超のペースでの伸張が予想されている。
(2)Vtuber(Vチューバー)の登場
Vtuberは「バーチャルYouTuber」の略語で、2Dや3Dのアバターによって動画の投稿・配信を行っているYouTuberの総称である。2016年12月に登場した「キズナアイ」が、ブームの火付け役といわれている。現在では、様々なVtuberが登場しており、チャンネル登録者数が100万人を超えているVtuberもいる。アバターを活用するメリットは、配信者自身の匿名性を保ちつつ、動画の投稿・配信が行える点が挙げられよう。
(3)Vlog(ビログ)の登場
Vlogは、Video(ビデオ)のVとBlog(ブログ)をあわせた俗語である。Blog(ブログ)のように日常の記録を日記としてではなく、動画として配信するものである。旅行に特化した動画ブログは、旅行Vlogともいわれている。
これはコンテンツとして独立したようなものではなく、YouTuber自身の日常的な出来事をBlog(ブログ)風に、動画として配信するものである。
(4)米Google Inc.方針の影響大
YouTuberとしての主たる収入は米Google Inc.より得られる広告収入である。投稿した動画チャンネルの再生数や時間に応じて一定額を得る仕組みとなっている。この計算方式は非公開、一説では1再生あたり0.1~0.05円相当と計算される。しかし、この設定額自体が米Google Inc.の規約次第といった側面があり、その方針の影響を大きく受ける。
ビジネスの特徴
YouTuberは、動画共有サービス「YouTube」に投稿することで広告収入などを得る個人、グループの総称である。人気YouTuberともなれば、その個人年収は10億円超に及ぶこともある。この要因としては、広告収入のほか、企業より依頼を受けて動画内で商品を紹介する企業タイアップ収入、グッズ販売収入などが挙げられる。これらのほかにも、視聴者からの寄付に近いスーパーチャット収入、イベント出演料なども加わることで、多額の収入を得ている。
初期投資はほとんど要さず、その気になればスマホのみでも開業が可能である。ただし、ライバルは多く、大半のYouTuberは生計を立てるほどの収入は得られていない。しかし、アイデア次第では人気者になれるとともに莫大な収入も得られる点は大きな魅力となっている。
開業タイプ
個人としての開業は、新規参入型の一択となるが、参考として主な開業タイプを以下に記載する。
(1)新規参入型
個人として独自の動画チャンネルを開設。独自の切り口のもと動画を配信し、地道にチャンネル登録者の増大を図る。
(2)副業型
一般の会社員が副業として、動画チャンネルを開設するケースである。少ないリスクで開業することが可能である。
(3)兼業型
本業を広告するための手段、本業へ顧客を誘導する手段として「YouTube」を利用するタイプである。その業種は幅広く、弁護士や税理士をはじめ、パーソナルトレーナーなどもいる。
なお、他の動画チャンネルとしては、一般企業が広告目的で運営する企業公式チャンネルも近時活発な動きをみせている。
開業ステップ
(1)開業のステップ
(2)必要な手続き
YouTuberとしての事業を法人として行う場合、法的に必要な手続きはない。ただし、Google AdSenseから広告収入を得るまでには以下の手順を踏む必要がある。
- 動画を編集し、「YouTube」へ投稿
- Google AdSenseへアカウント登録申請
- 審査を経てGoogle AdSenseのアカウントを取得
- 過去に投稿した動画などに対し広告設定
- Google AdSenseからの支払いを受ける金融機関口座を登録
以上の手続きを踏んだうえで、Google AdSenseの支払条件を満たすと報酬が支払われる。
メニュー、商品の品揃えなど
「YouTube」に投稿される動画は、大別して「商品紹介系」、「やってみた、面白いことをやる系」、「ゲーム実況系」、「大食い・料理系」、「キッズ系」などの系統に分かれる。新規参入するには、それら系統を踏まえ、自身のチャンネルのコンセプト設定を明確にした上で視聴者を惹きつける動画を配信し、チャンネル登録を促していくことになる。その後もチャンネル登録者を飽きさせない動画作りに努めることで、他のYouTuberとの差別化をいかに図れるかが鍵となってこよう。
なお、「YouTube」のガイドラインにより、以下の内容を含む動画は投稿が禁止されている。
- ヌードや性的なもの
- 有害で危険なもの
- 不快なもの
- 暴力的で生々しいもの
- 嫌がらせやいじめに該当するもの
- スパム、誤解を招くもの、詐欺的なもの
- 脅迫の疑いのあるもの
- 著作権を侵害するもの など
また、過激なカスタムサムネイル、悪質な外部リンクの設定、危険なチャレンジやいたずらなども近時は規制対象に挙げられている。
必要なスキル
YouTuberになるには特別な資格などは必要ないが、チャンネル開設には13歳以上であることが必要となる。動画の配信には撮影、編集といった作業があるが、近時はテクノロジーの進化もあって初心者でも視聴に耐えうる動画の作成が容易となっており、スキル面でのハードルはさほど高くはない。
また、「YouTube」単独ではなく、自身の本業を広告するための手段、本業へ顧客を誘導する手段として「YouTube」を利用しているYouTuberもいる。その業種も幅広く弁護士や税理士をはじめ、パーソナルトレーナーなどもいる。このような場合、本業でのスキルやレベルが問われることとなる。
いずれにしても、YouTuberに求められる資質は、視聴者を引き付ける「企画力」であり、それをいかにコンスタントに動画を配信できるか、といった「継続力」も重要といえよう。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
【新規参入型、事務所は構えず自宅で開業する際の必要資金例】
(2)損益モデル
a.売上計画
登録者5万人を得て、以下の広告報酬割合などをもとに売上高を算出。
b.損益イメージ
※標準財務比率のうち、売上総利益率は該当する業種の財務データがないため、推定値を掲載。営業利益率は、映画・ビデオ制作業に分類される企業の財務データの平均値を掲載(出典は東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」)。
c.収益化の視点
投稿する動画の内容や方向性にもよるが、売上原価に相当する商品仕入れ、材料費が抑えられる分、売上総利益率は高位となり、その粗利から主に人件費を賄っていくこととなる。上掲の損益モデルのように開業当初は抱える登録者も多くはなく、得られる広告収入が伸びない上、知名度の低い状況下では企業タイアップ収入、グッズ販売なども期待できない。したがって、法人としての総売上は抑えられ、自ずと経営者給与=人件費も一般的なサラリーマンの給与水準に及ばない状況が当面続くことになる。それでも視聴者のニーズを捉え、人気YouTuberの一人に名を連ねることができれば一転して短期間で多額の収益を稼ぐようになることも可能であり、夢のあるビジネスの一つでもあると云えよう。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)