業種別開業ガイド

インフルエンサー

2022年 10月 14日

トレンド

SNSの国内利用者は8270万人、世界では42億人

日本におけるSNS利用者数

インフルエンサーとは、「influence(影響)」という英単語を語源とし、現代においては主に、InstagramやTwitter、FacebookなどのSNS、YouTubeやTikTokなどの動画投稿サイトといった各種インターネットメディア上で絶大な影響力を持つ人のことを指す。多くのファンを持つインスタグラマーやユーチューバーもインフルエンサーの一種と言える。ある民間調査では、インフルエンサーがZ世代のなりたい職業1位に輝いており、特に若い世代からの憧れが強い傾向にある。このインフルエンサーの主な活動基盤であるSNSに関して、ICT総研の2022年度調査によると、国内の利用者数は2022年末に8270万人(普及率82%)、24年末には8388万人(同83.2%)に達する見込みだという。さらに世界のユーザー数は42億人を超えているという報告もあり、インフルエンサーの活躍の舞台は日に日に拡大し続けているといえそうだ。

インフルエンサー・マーケティングの市場規模も右肩上がり

このインフルエンサーの影響力をビジネスに活用しようと生まれたのが「インフルエンサー・マーケティング(ソーシャルメディアマーケティング)」という広告宣伝手法だ。インフルエンサーに自社製品やサービスなどを紹介してもらうことで、ファンやフォロワーへの認知拡大・販売促進を図ることが狙い。より的確なターゲットにリーチできるということもあり、インフルエンサー・マーケティングの市場規模も右肩上がりの傾向が続いている。サイバー・バズ/デジタルインファクトの調べによると、2018年に219億円だった市場規模は、2022年現在で519億円に達する見通し。25年には723億円にまで急拡大するとの予測を発表している。インフルエンサー・マーケティングを活用したい企業に適したインフルエンサーを仲介する代理店もすでに登場しており、今後も多くの付随ビジネスが誕生しそうな勢いがある。

ビジネスの特徴とヒント

自分のブランディングと企業PRの方法に矛盾はないかの確認を

インフルエンサーイメージ01

インフルエンサーとしてのビジネスは、その影響力を活用したいと考える企業からの依頼を受け、適切なコンテンツを制作・投稿し、その閲覧者などをどれだけ企業が意図している方向に導けるか、が大きなポイントと言える。ただしフォロワーは、普段から各インフルエンサーの主義主張などに共感しているからこそフォローしているケースが多いことを踏まえると、普段とあまりにもかけ離れているような企業PRの手法を選択すると、自らの基盤であるフォロワーを失いかねないというリスクもある。企業も基本的には、自社のPRの方向性と親和性の高いインフルエンサーに声をかけてくるはずだが、その依頼に応じることが自分のブランディング面に支障はないかをよく確認すべきだろう。いずれにせよ、企業の依頼と自分の主義主張をいかに無理なく結びつけて、閲覧者にとっても有益なコンテンツを企画制作できるかが、インフルエンサーとしての腕の見せ所であり、ビジネスの成否を分けるポイントにもなりそうだ。

「ステマ疑惑」には細心の注意を

インフルエンサーイメージ02

仮に自分の影響力をPRに利用したいという企業が現れた場合、その投稿が「ステルスマーケティング(ステマ)」と疑われないように細心の注意を払いたい。ステルスマーケティングとは、企業の依頼に基づいたPRであるにも関わらず、その事実を伏せて企業やその商品等を紹介すること。このステマ疑惑により、炎上するインフルエンサーは後を立たない。常に情報が飛び交うインターネット上を活躍の舞台とするだけに、一度付いてしまったステマ疑惑はなかなか消し去ることができず、ファンやフォロワーとの信頼関係によって成り立っているインフルエンサーのビジネスにとって、その根幹を揺るがす事態になりかねない。ステマを疑わせるような企業からの依頼を固辞することは当然だが、なんの気なしの投稿に「ステマ疑惑」が浮上するパターンもある。インフルエンサーとしてのビジネスを考えるのであれば、自分の投稿に対して、切り取られ方によっては誤解されるリスクがないかをあらゆる方向から確認・検証し、表現とその方法には最新の注意を払うことがビジネスを継続する上での鉄則といえそうだ。

開業のポイント

専門性を身に付けることがインフルエンサーへの近道に

資格や免許などが必要ではないため、どこからがインフルエンサーかという正確な基準はないが、自分の情報発信を常に気にかけているファンが一定数以上いるようになり、その影響力を広告宣伝に活用したいと考える企業が現れるかがインフルエンサーか否かのボーダーラインといえそうだ。インフルエンサーとして活躍している人は、世界的なプロスポーツ選手やミュージシャン、映画俳優、人気タレントなどにも多く、他分野での人気や知名度をインフルエンサーとしてのビジネスに活用しているケースも少なくない。もし仮に自分に他者との差別化ポイントや強みがすでにある場合は、その側面を伸ばしていくことがインフルエンサーへの最短距離になりそうだ。現時点で自分の強みを見出せない場合も、やはり何かしらの専門性を身に付けていくことがゴールへの近道になるだろう。どんな専門性を身に付けるかに関して、市場のニーズ等をリサーチした上で、まだあまり著名な専門家がいないニッチな領域を狙うか、あるいは、競争は激しいが確実にニーズがある分野に挑戦するかなど、さまざまな考え方がある。いずれにせよ自分が好奇心を持ち続けられることは、忘れてはいけない重要な視点と言える。ゴールまでを急ぎすぎて足下を見失わないように注意したい。

個人事業主としての届出も忘れずに

インフルエンサーとしての開業準備は、普段利用しているPCやスマートフォンなどで各種SNS等のアカウントを用意すればおおむね完了といえる。動画コンテンツの制作を考えている場合は、撮影・編集に必要な機材の購入、あるいは人材やスペースの確保といったことも考慮する必要があるが、こうしたことは必要に応じて徐々に拡大させていくのが一般的。つまり、自前の機材や環境などを有効活用することで、初期投資ゼロでのスタートも可能だ。ただし、実際に収入が得られるようになった場合には、個人事業主として税務署に届け出た上で、事業所得の届け出と納税が必要になる。当サイトの「起業マニュアルページ」や「個人事業の開業手続きページ」などを参照し、個人事業主としての義務や責任についてもあらかじめ学んでおきたい。

必要スキル

何かしらの分野において突き抜けること

前述の通り、他分野で成功を収めた人がインフルエンサーとしても活躍している点を踏まえると、インフルエンサーに求められるのは、何かしらの分野において第一人者かそれに近いランクに位置づけられることと言えそうだ。例えば、人によっては「マニアック」とまで称される知識量や、ニーズの有無に関わらず誰もが目を見張るような技術力、あるいは人に呆れられるほどの専門分野に対する深い愛情などが、インフルエンサーとしての活躍を下支えするケースもある。すでに活躍しているインフルエンサーなどを参考にしながら、どのような専門性を持てば自分も同じフィールドで活躍できる可能性があるか、といった視点で自分自身を見つめ直してみたい。

情報発信のマメさと、納得感の高いコンテンツ企画・制作力

インフルエンサーイメージ03

きらびやかに見えるインフルエンサーたちの仕事も、その裏にはマメな情報発信とそのためのコンテンツ制作などがあり、努力や苦労が隠されているケースも多くあるだろう。しかも、その一つ一つに一貫性や、前述した「ステマ」と疑われないための配慮などが求められる。さらに、雑なコンテンツはフォロワーを失いかねず、インフルエンサーとしての活動にも黄信号が灯るリスクがある。主義主張に一貫性があって、フォロワーと企業の双方が納得する丁寧に作り込まれたコンテンツを作り続ける根気と継続性も、インフルエンサーのビジネスに必要なスキルの一つと言えそうだ。

上記の記事は、作成時の情報に基づき、同業種における開業のヒントやポイントをまとめたものです。実際の開業にあたっては、より専門的な機関に相談することをおすすめします。