業種別開業ガイド
健康自然食品通販
トレンド
(1)単身世帯で消費が伸びているサプリメント
健康食品のうち、サプリメントなどの健康保持用摂取品に関しては、1世帯当たりの年間支出額は、2人以上世帯で概ね横ばい、単身世帯でほとんどの性別年代で増加してきている。
特に単身世帯でサプリメント需要の伸びが顕著な点に関しては、一人暮らしゆえにバランスの取れた食生活が難しい、という背景があると推察される。
(2)健康・自然・環境ヘの配慮ある生活スタイルの普及
ロハス(LOHAS:lifestyles of health and sustainability)という言葉が広く日本人の間に定着して久しい。ロハスとは、健康で長く安定したライフスタイルを志向する言葉である。健康や自然、環境に配慮した生き方を重視する人々の増加、そして、食の安全・安心志向の高まりを背景に、健康・自然食品市場は今後も安定的に拡大していくと予想される。
(3)人気の通販健康食品・自然食品メニュー
近年の通販大手会社の売れ筋商品を見ると、青汁、緑茶、米、栄養ドリンク、保存用食品が上位に挙がっている。人気商品の特徴としては、一定期間保存ができて健康に良い、栄養価が高い、価格的にも手ごろである、といった点が考えられる。
健康・自然食品通販の特徴
健康・自然食品通販は、テレビ、ホームページ上やオンライン・モール、折込みチラシなどを通じて消費者に商品を選んでもらい、電話やFAXまたはweb上にて注文を受け、消費者に届ける事業である。健康・自然食品通販で取り扱われる商品は、主に以下の通りである。
<健康食品>
- 特定保健用食品
これは「トクホ」とも呼ばれ、その摂取により特定の保健上の効果が期待できる食品を指す。特定保健用食品として食品を販売するには、その有効性や安全性について国の審査を受け、その商品表示については、消費者庁長官の許可を受けなければならない。 - 栄養機能食品
これは、特定の栄養成分の補給目的で摂取される食品で、栄養成分が表示されたものをいう。成分表示に関しての審査は必要ないが、食品に含まれる栄養成分の種類と含有量に基準が設けられている。 - 特別用途食品
これは、乳児、幼児、妊産婦、病者などの発育、健康の保持・回復などに適する食品であり、その特別の用途について適正な表示がされたものである。特別用途食品として食品を販売するには、消費者庁長官の許可を受けなければならない。 - 認定健康食品
これは、公益財団法人日本健康・栄養食品協会が、同協会の規格基準に照らし合わせて、健康補助食品として認定した食品である。認定された商品には、JHFAマークが表示される。 - 機能性表示食品
これは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に、安全性および機能性の根拠に関する情報などを消費者庁長官へ届け出なければならない。
<自然食品>
- 有機食品
これは、農林水産大臣が登録した登録認定機関から認定された生産農家や加工食品製造業者が、統一された基準を守って生産した食品(有機農産物、有機飼料、有機畜産物、有機加工食品)の総称である。オーガニックとも呼ばれる。本基準の下で作られた有機食品には有機JASマークが表示される。 - 無農薬、無添加、低農薬、低添加物など
明確な定義はないが、無農薬、無添加、低農薬、低添加物を謳った食品も販売対象となる。
売れ筋商品は、上述の通り、一定期間保存ができて健康に良い、栄養価が高い、価格的にも手ごろな商品である。また、これら商品は日常での継続的な消費が期待できるため、通販会社にとっては、いかにリピート販売を狙っていくかが経営のポイントになる。消費者のリピート促進のため、多くの通販会社は、会員制度や定期購入のためのリマインドメール、ポイント付与による割引販売やキャンペーンを実施するなどして、リピーター化を目指している。
健康・自然食品通販業態 開業タイプ
取り扱う商品に応じて、開業タイプを選定することが重要となる。
(1) 特定の商品を中心とした専門店タイプ
特定の商品を主力商品として販売する専門店として開業するタイプである。主力商品の選定は、自ら生産している、または商品開発したといった事情が背景にあってもよい。ハーブ、サプリメント、米、野菜、果物、調味料など、自社の強みを打ち出せる商品を中心に販売していく。商品数を絞れば、受注処理や発送作業を単純化できるメリットもある。
健康食品メーカーには、販売代理店制度を設けている業者も多い。特定の販売代理店になることも専門店タイプとして分類することができる。この場合、メーカーの販売ノウハウを活用できるメリットもある。
(2)多種類商品を幅広く扱う総合店タイプ
体に良い食品というコンセプトで幅広く商品を揃えた総合店として開業するタイプである。商品は、有機野菜からサプリメントまで幅広く取り揃える。受注処理や発送作業が煩雑になるが、多くの商品の中からヒット商品が出てくる可能性もある。
開業ステップと手続き
(1)開業ステップ
開業に向けてのステップは、主として以下の6段階に分かれる。
(2)必要な手続き
食品衛生法により、食品の販売においては、取り扱う品目ごとに食品営業の許可を受ける必要がある。また、栄養素や機能などの表示に関しては食品表示法を遵守しなければならない。このほか、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等、特別の用途に適する旨の表示をする場合は内閣総理大臣の許可を、医薬品・医薬部外品等の製造または販売を行う場合は厚生労働大臣の許可を得る。また、商品の内容や特典の表示は過大表示の無いよう景品表示法に準拠し、消費者に理解しやすく、特定商取引法に準拠したものでなければならない。また、健康食品を輸入する際には、そのつど、厚生労働大臣に届け出なければならない。なお、各都道府県によって条例が定められている場合があるので、詳細は各自、地域の保険所等で確認する必要がある。
品揃え・商品開発
商品仕入れに際しては、生産者から直接仕入れて販売するケースと卸売業者から仕入れるケースがある。生産者から直接仕入れる場合は、農産物なら農協等からの生産者の紹介、交渉、売買契約(場合によっては農作業受委託契約まで)が必要である。メーカー品の場合は、メーカーとの交渉、販売委託契約が必要とされる。手間はかかるが、中間業者を介さない分、利益率の高い売買ができる。
一方、卸売業者から仕入れる場合は、多品種の商品を幅広く仕入れるのに適しているが、利益率は低くなる。
自社が生産者となって商品を販売することも可能である。とくに健康食品においては、自社独自のブランド商品を企画して、製薬などのメーカーにOEM生産を依頼するケースも多い。ただし、商品の仕入(買い取り)は、数万単位の大量ロットのものとなる。自社に販売力がないと大量の在庫を抱える結果になってしまうので注意すべきである。
ショップでは、健康食品、自然食品のほか、料理読本やエコ雑貨、肌にやさしい化粧品など、ターゲットを同じにした周辺グッズも取り揃えると良い。
必要なスキル
- まず、健康食品、自然食品に係る関連法規についての正しい知識と解釈を持つことが必要とされる。関連する法律は、食品衛生法、食品表示法、健康増進法(栄養成分表示、誇大広告の禁止)、医薬品医療機器等法、景品表示法、特定商取引法などである。
- 通信販売の場合は、大量の個人情報のデータベースを保有し、事業活動に利用することとなる。そのため、個人情報保護法に基づいた適切な情報の保護管理に努めなければならない。
- 通信販売においては、特定商取引法により、取引の公正や消費者の利益が害されるおそれがある場合、消費者は、消費者庁長官もしくは経済産業局長または都道府県知事にその内容を申し出て、事業者などに対して適切な措置を求めることができる。
消費者からの問い合わせやクレームに対しては、迅速に対応できるよう、コールセンターの設置やクレーム発生時の適切な対応マニュアルも整備しておかなければならない。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
店舗は不要であるが、商品在庫の保管とコールセンターなど、事業用の事務所は必要である。
オンライン・モールに出店する場合は、初期投資費用は低く抑えられ、多くの新規顧客も開拓しやすいが、毎月の出店料と販売手数料が必要である。一方、自社でECサイトを構築する場合は、そのようなランニングコストは必要ないが、サイト構築のための費用が一般的に必要となる。しかし、最近では、初期費用が低額なネットショップ構築サービスも登場しており、開業のハードルは下がってきている。
以下は、事業所面積が15坪、自社ECサイトで健康・自然食品通販を開業する場合の例である。
【参考】:健康・自然食品通販を開業する場合の必要資金例
(2)損益モデル
■売上計画
商品の品揃えや在庫規模等の特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。
(参考例)健康・自然食品通販(自社ECサイトでの販売)
■損益イメージ
(参考例)健康・自然食品通販(自社ECサイトでの販売)
- ※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)