「選任」された「(総合・国内)旅行業務取扱管理者」が1名以上(従業員が10名以上の営業所では2名以上)常勤雇用されていること。
「財産的基準」(基準資産)として、旅行業第1種3,000万円以上、第2種700万円以上、第3種300万円以上、地域限定100万円以上あること。
同協会への入会金は以下のとおりである。
(出典:一般社団法人全国旅行業協会ホームページ)
サービスの工夫
これまで記述してきたように、開業当初から海外旅行等を含めた幅広いサービスを展開するのは難しく、ここでは国内需要に的を絞ったサービス面の工夫について記載していく。
公益財団法人日本交通公社の「新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その1)」(2020年6月)の調査結果をみると、新型コロナウイルス収束後の旅行意向は約7割が前向きとする結果が出ており、とりわけ若年層で前向きな結果が出ている。
これまで若者の旅行離れを指摘する声もあったが、コロナの反動により旅行したいという意識が若者の間で高まっているといえよう。
こうした傾向を踏まえ、若者に人気のある観光スポットなどの観光協会や宿泊施設等の協力を得て商品企画を行うなどの工夫が求められる。最近では、鬼滅の刃の聖地巡礼なども人気があるという。
必要なスキル
イ.旅程管理主任者資格
国内旅行のみに添乗できる「国内旅程管理主任者」と、国内に加え海外旅行の添乗も可能な「総合旅程管理主任者」の2種類がある。資格を取得するには、実務経験が必要なため、まずはツアーコンダクターとして働きながら資格取得を目指すのが良いだろう。
ロ.旅行業務取扱管理者資格
旅行業界唯一の国家資格で、旅行会社で旅行商品を販売するために必要な資格である。旅行会社を運営するためには、1営業所に付き1名以上の「旅行業務取扱管理者」を配置することが義務付けられている。ツアーコンダクターになるために必須の資格ではないが、独立・開業する場合は、自身で取得もしくは資格取得者の確保が必要となる。
旅行業務取扱管理者資格には、以下の3種類がある。
a.国内旅行業務取扱管理者
国内旅行商品のみの取扱い。一般社団法人全国旅行業協会が実施。
b.総合旅行業務取扱管理者(海外)
国内及び海外旅行商品の取扱い。一般社団法人日本旅行業協会が実施。
c.地域限定旅行業務取扱管理者
営業所のある市町村、隣接する市町村、観光庁長官の定める特定の地域の旅行商品のみの取扱い。観光庁が運営・実施。
上記のような資格が、最低限必要となるが、業務の幅を広げるためには、語学力を磨き、観光関係の知見を深め、顧客とのコミュニケーションを円滑にする能力が求められよう。こうして顧客とのコネクションを円滑にすることで富裕層・高所得者の獲得に努めることが重要である。
また、旅行先や滞在先との独自のネットワークを構築するためのコミュニケーション力も望まれる。こうしたコネクションが旅行の企画力を上げるのに有効に働くものと思われる。
そのほか、アフターコロナ時代を踏またツアーの企画やマーケティングのスキルを磨き独自の旅行を提案し、競合他社と差別化を図るような能力も求められよう。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
旅行会社の開業には営業拠点となる事務所が必要となるほか、旅行業務取扱管理者の確保が必須である。自身で旅行業務取扱管理者の資格を取得する、もしくは新たに資格所有者を採用する必要がある。事務所開設に伴う資金負担自体は、それほど大きくはない。
しかし、営業保証金のほか、財産的要件として基準資産額が定められていることから、開業当初から一定の資産を保有する必要があるため、自己資金を蓄えておくなどして、資産総額を増やす取組が必要である。
【店舗面積10坪の店舗で第3種旅行業を開業する場合の必要資金例】
(2)損益モデル
a.売上計画
年間営業日数、1日あたりの客数、平均客単価を以下のとおりとして、売上高を算出した。
b.損益イメージ(参考イメージ)
標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。
※標準財務比率は旅行業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。
c.収益化の視点
新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けている旅行会社では、店舗の縮小・削減などにより固定費を小さくしつつ、デジタル化に対応していくことが収益化につながる。
旅行大手のKNT-CTホールディングスでは、個人向け店舗を削減する一方で、パンフレットのデジタル化や申し込み手続きのオンライン化のほか、アバターを通じたリモートでの接客を導入するなど様々なデジタル化への対応を行っている。
また、従来海外旅行を楽しんでいた客層を取り込めるような、これまでは注目されていなかった新しいニーズを掘り起こした国内旅行を企画することが重要となる。ツアーコンダクターがいるパッケージツアーならではの独自プランを打ち出したい。また、オンライン観光やオンラインツアーなど、新たなサービスの導入も顧客獲得のための1つの手段である。
※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)