持続化給付金の対象拡大

2020.7.19更新

令和2年度第1次補正予算事業として5月1日から開始された持続化給付金事業(予算規模:2兆3,176億円)は、経済産業省によれば、6月22日までに約165万件(総額:約2兆2,000億円)への給付が完了しています。165万件といえば、個人事業者を含むわが国中小・小規模事業者357.8万者(2018年11月30日中小企業庁公表値)の半数近くが恩恵を受けていることになります。

そして、6月12日に成立した令和2年度第2次補正予算では、持続化給付金事業に総額1兆9,400億円が追加されました。

持続化給付金事業では、基本的な給付対象を「中堅企業、中⼩企業、⼩規模事業者、フリーランスを含む個⼈事業者、その他各種法⼈等で、新型コロナウイルス感染症の影響により売上が前年同⽉⽐で50%以上減少している者」としています。

また特例として、

  • 証拠書類等に関する特例(法人・個人)
  • 創業特例(2019年1月から12月までの間に設立した法人に対する特例)【個人は新規開業特例】
  • 季節性収入特例(月当たりの事業収入の変動が大きい法人・個人に対する特例)
  • 合併特例(事業収入を比較する2つの月の間に合併を行った法人に対する特例)
  • 連結納税特例(連結納税を行っている法人に対する特例)
  • 罹災特例(2018年又は2019年に発行された罹災証明書等を有する法人・個人に対する特例)
  • 法人成り特例(事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した者に対する特例)
  • NPO法人や公益法人等特例(特定非営利法人及び公益法人等に対する特例)
  • 事業承継特例(事業収入を比較する2つの月の間に事業承継を受けた者に対する特例)

が用意されています。

支援対象の拡大

第2次補正予算の成立を受け、6月29日から、上記に加え以下のとおり支援対象が拡大されることになりました。

  • 主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者
  • 2020年1月~3月の間に創業した事業者

どちらのケースも、収入が50%以上減少していることが条件です。

1.新たな対象「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者」

フリーランス等の個人事業者には、業務委託契約を結んで得た収入を「事業所得」ではなく「雑所得」や「給与所得」として確定申告している方が少なくありません。今までの持続化給付金事業では、主たる収入を「事業所得」として確定申告している方しか給付の対象になりませんでしたが、これを拡大し、より多くの個人事業者を支援しようとするものです。

(1)要件

以下の要件を満たす事業者が新たに対象となります。

  • ①雇用契約によらない業務委託契約等に基づく収入であって、雑所得・給与所得として計上されるものを主たる収入として得ており、今後も事業継続する意思がある(確定申告で事業収入としていた事業者は現行制度でも申請できます)
  • ②今年の対象月の収入が昨年の月平均収入と比べて50%以上減少している
  • ③2019年以前から、被雇用者又は被扶養者ではない

(2)給付額

個人事業者であるため、現行制度同様に100万円が上限額となります。経済産業省のリーフレットでは以下の計算式をもって給付額を算出することとしています。

ポイントは、「業務委託契約等に基づく事業活動からの収入」です。この収入を「事業所得」で確定申告していた事業者は現行制度でも給付を受けられましたが、「雑所得」「給与所得」として確定申告していた分の所得も、計算式に含められるようになったということになります。

(3)必要書類

現行制度で添付が求められている、「前年分の確定申告書」「今年の対象月の収入が分かる書類(売上台帳等)」「振込先口座通帳の写し」「本人確認書類の写し」に加え、以下の書類が必要になります。

  • ①「前年分の確定申告書」の収入が、業務委託契約等の事業活動からであることを示す書類
    a.業務委託等の契約書の写し又は契約があったことを示す申立書
    b.支払者が発行した支払調書又は源泉徴収票
    c.支払があったことを示す通帳の写し
    a~cの中からいずれか2つを提出します(bの源泉徴収票の場合はaとの組合せが必須)。
  • ②国民健康保険証の写し

なお、詳細は必ず「持続化給付金申請要領(主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者等向け)」で確認してください。申請時に不備があると、給付までに時間を要することになるのでご注意ください。

2.新たな対象「2020年1月~3月の間に創業した事業者」

この対象拡大で「4月1日以降に創業した事業者は対象にならないのか」と思われる方は少なくないと思います。しかし、「法人は資本金1円から設立できる」「個人事業者は開業届を提出すれば開業できる」という現行の法制度の下では、「持続化給付金の給付を狙って開業届を提出する」「持続化給付金の給付を狙って法人を設立する」という悪質な不正受給を狙った創業を排除することができないため、コロナ禍が本格化する3月までの創業に絞るしかなかったものと思われます。
「2020年1月~3月の間に創業した事業者」に対象が拡大されたことは、創業間もない時期にコロナ禍の影響を受けた事業者にとって朗報であることは間違いありません。

(1)要件

創業月~3月の月平均収入と比べ、対象月の収入が50%以上減少している事業者(法人・個人事業者)が対象となります。

(2)給付額

現行制度と同様に、法人は上限200万円、個人事業者は上限100万円になります。
経済産業省のリーフレットでは以下の計算式をもって給付額を算出することとしています。

なお、創業月から対象月までの各月の収入額は、税理士が確認した毎月の収入を証明する書類で確認することとなっています。不正受給を排除するために税理士による「申立書」が必要となっている点にご注意ください。

なお、日本税理士会連合会では、税理士の確認を受けた申立書の提出が必要であるものの、経済的な理由等により税理士又は税理士法人に業務を委嘱することが困難な事業者に対して、当該申立書の税理士確認依頼受付を開始しています。

詳細は必ず「申請要領(中小法人等向け)」「申請要領(個人事業者等向け)」で確認してください。申請時に不備があると、給付までに時間を要することになるのでご注意ください。

3.詳細は必ず持続化給付金事務局ホームページで確認し支援機関に確認を

現行制度でも、「申請したのになかなか給付されない」という事態が発生しています。この多くは、添付した申請書類が不鮮明であったり、そもそも給付対象外であったり、という申請のようです。
不備のないように、持続化給付金事務局ホームページで詳細を確認し、かつ商工会・商工会議所、顧問の会計事務所等に添付書類を確認してもらってから申請するようにしてください。
また、対象拡大に伴い、必要書類が増えています。申請から給付までには相応の時間がかかると思われますのでご留意ください。

※今後詳細が明らかになり次第、内容を随時更新します。

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文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー
古川 忠彦

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