新型コロナ対策資本性劣後ローン

2020.6.28更新

令和2年度第2次補正予算に「中⼩企業向け資本性資⾦供給・資本増強⽀援事業」(以下、本事業)が盛り込まれました。本事業には資本性劣後ローンの実施による金融支援が含まれています(下図の赤枠部分)。

出典:経済産業省「令和2年度第2次補正予算の事業概要」

説明には「⼀時的に財務状況が悪化した中⼩企業等に対して、⽇本政策⾦融公庫等及び商⼯組合中央⾦庫が、⺠間⾦融機関が資本とみなすことができる⻑期間元本返済のない資本性劣後ローンを供給します。」とありますが、多くの中小企業にとって「資本性劣後ローン」という言葉にはなじみが薄いと思われます。
以下、本事業を踏まえ「資本性劣後ローン」について説明します。

1.通常の融資と何が異なるのか

ほとんどの中小企業は、外部からの資金調達を融資で賄います。通常の融資は貸借対照表では負債に位置づけられますが、「資本性劣後ローン」による融資は資本に見なされます。

通常の融資を受けた貸借対照表は「負債割合が高まり財務状況が悪化した」と評価されますが、資本性劣後ローンによる融資を受けた貸借対照表は「資本が増強され財務状況が改善された」と評価されます。

2.なぜそのようなことが可能なのか

「資本性劣後ローン」の「劣後」がキーになります。「劣後」という言葉は、「劣る」「後ろ」というマイナスなイメージに見えます。しかし誰にとって「劣後」なのかといえば、資金の貸し手にとって「劣後」なのであり、借り手にとって「劣後」なのではありません。

万が一、会社が倒産した場合などには、残った会社の資産を整理し債権者に分配することになります。資産は、債権の種類によって優先順位を決めて分配することになりますが、「劣後」とされるものは分配の優先順位が低くなります。「劣後」の貸し手に分配の順位がまわってきたときには、もはや会社の資産は残っていないということも充分に考えられるのです。

つまり、会社が倒産した場合などに回収可能性が極めて低い資金であるため、資本に近い資金として、「資本性」「劣後」という名称がつけられ、貸借対照表上では資本に見なされるのです。

3.返済はどうするのか

令和2年度第2次補正予算「中⼩企業向け資本性資⾦供給・資本増強⽀援事業」における資本性劣後ローンは、「貸付期間:5年1ヶ⽉、10年、20年(期限⼀括償還)」とされています。6月13日現在利息額は明らかになっていませんが、貸付期間内は利息のみを毎月支払い、期間終了時に元本を一括で返済します。

4.利息の利率は?

貸し手からすれば、会社が倒産などした場合に回収可能性が低い、リスクの高い資金を提供するのですから、利息の利率は通常の融資よりも高く設定されます。また、上場会社などの配当と同じように、会社の利益が多くなればなるほど支払利息は高くなります。「利益が出るようになったら利息も多く払ってください」ということです。

下図は、日本政策金融公庫国民生活事業の「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」の利率表(2020年6月13日現在)ですが、利益(売上高減価償却前経常利益率)が大きくなるほど支払利息の利率が高まることがわかります。

なお、6月19日に公表された日本政策金融公庫国民生活事業「令和2年度第2次補正予算 を受けた新型コロナウイルス感染症特別貸付の拡充等に関するQ&A」では、新型コロナ対策の資本性劣後ローンについて、以下のとおり概略が示されています。

5.「中⼩企業向け資本性資⾦供給・資本増強⽀援事業」の活用

J-Net21「今すぐお金が必要な企業・個人がやっておきたいコロナ禍対策」では、「資金の流出を抑える」「資金を手当てする」ための各種制度の活用をご案内しています。

「資金を手当てする」に記載している「持続化給付金」「家賃支援給付金」などは返済不要の給付金ですが、金額は数十から数百万円程度で、目先の資金を手当てするために活用できる制度です。

無利子・無担保で据置期間が長く設定されている「日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」」「民間金融機関での実質無利子・無担保・据置最大5年・保証料減免の融資」「新型コロナウイルス対策マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)」などは、貸借対照表では債務に計上される(財務体質は悪化)ものの、今までにない有利な条件で融資を受けられる制度です。

「中⼩企業向け資本性資⾦供給・資本増強⽀援事業」の資本性劣後ローンは、利息は高いものの、長期間にわたって元本返済が不要で、かつ財務体質を改善しながら中長期的な事業戦略に活用できる制度です。

それぞれの制度の特徴を理解し上手く活用しながら、afterコロナに向けた事業の再構築を図りましょう。

※本事業については、今後詳細が明らかになり次第、内容を随時更新します。

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文責

中小機構 中小企業支援アドバイザー
古川 忠彦

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