ビジネスQ&A

円安下で輸出を行うときの注意点について教えてください。

2023年9月27日

円安が進んでいるなかで、海外に自社製品を売りたいと考えています。中小企業が輸出を行うときの注意点について教えてください。

回答

人口減少等で低迷する国内販売を補うために輸出を検討する中小企業が増加しています。また円安の進行等により中小企業が輸出し易い環境にあります。中小企業が海外輸出で成功するためには、徹底的な市場調査と競合分析、入念な販路開拓準備、トラブルの未然防止が欠かせない要素です。これらの注意点を守り慎重に判断しつつ、地道な努力と柔軟性を持ちながら、海外市場での展開を進めていくことが大切です。

徹底的な市場調査と競合分析

1.海外市場環境の調査

海外市場への輸出には、まず徹底的な市場調査と競合分析が必要です。そのためにはまずどこの国を対象とするのかを決めることから始めます。まずは候補国の人口、経済、文化などの社会環境を調査します。同時に輸出する製品の市場規模(販売数量、価格)やニーズ、競合他社、その販売シェアなどの市場調査を行います。

自社製品の特長や強みを把握し、ターゲット市場でその強みを発揮できるかを知ることが重要です。その上で輸出国やターゲットを絞り込みます。輸出国市場の特性が理解出来ていないと、期待した売り上げが上がらなかったり、全く製品が売れないという結果を招きます。

2.輸出国の法規制確認

輸出する国の法律や業界の規制についても確認します。また輸出国の関税の有無、関税率や優遇措置についても確認します。日本は世界各国と経済連携協定(EPA; Economic Partnership Agreement)を締結しており、製品によっては関税の減免を受けられます。一方輸出国によっては自国産業を保護するために輸入制限をしたり、高い関税を課している国もあります。競争力のある製品であっても輸出国により排除、または競争力を弱められてしまえば輸出は長続きしません。これらの調査を行う上で各国の大使館や領事館は有力な情報源です。各国大使館には商務部というセクションがあり情報提供や相談を受け付けています。

3.自社資金体力と財務基盤のチェック

輸出は海外拠点進出と比べると比較的リスクの低い海外展開方式ですが、一定のリスクは存在します。したがって輸出国市場調査や法規制確認と並行し、国内における自社事業の今後を見通し、輸出事業を継続できるだけの安定した取引先・商圏や資金体力および財務基盤を備えているかの確認は欠かせません。

また、日本国内で製品に独自性があり差別化が出来ているからといって、輸出国でそれがそのまま通用するものではありません。慎重な判断と意思決定が求められます。

入念な販路開拓準備

1.海外見本市への参加・出展

海外で販路を開拓する方法として、現地の見本市への参加や出展があります。海外の見本市は日本とは違い、その場で商談が成立することがあり、販路開拓の第一歩として非常に重要です。また直接的な販路開拓だけでなく見本市にてアンケートを実施するなどして商品開発に有効な情報収集の場として活用することもできます。

2.輸出スキームの決定

輸出スキームには商社に輸出を代行してもらう間接輸出と、自社で全ての輸出業務を行う直接輸出があります。経営資源に不足する中小企業では英語が話せたり、貿易経験のある人材がいないことが多く間接輸出を選択しがちです。間接輸出は国内取引の一形態であり、輸出にまつわる為替リスクや代金回収、貿易実務等すべてを商社が代行してくれるので中小企業に向いています。しかし間接輸出は商社に払う中間マージンが高額です。

昨今では越境ECによるネット販売が広まり、国際物流技術も進歩し、中小企業が直接輸出を行える環境が整いつつあります。一旦商社と輸出代行契約を結ぶと解約に苦労することがありますので、輸出スキームの決定には慎重さが必要です。

3.カウンターパートの開拓

次に現地市場を知る輸出業者や輸入業者、卸売り業者等を見つけます。ターゲット市場で販売チャネルを確立する上で現地において信頼できる取引先の確保が最も重要になります。現地では複数の取引先候補と会い、交渉を重ねた上で取引先を選定します。カウンターパートは輸出リスクを分担するパートナーと考え、平等・公平に接し密接な協力関係を構築し、長期的な信頼関係を結ぶことが重要となります。

4.輸出商品の決定

輸出する製品には大きく分けて、国内で販売している既存製品をそのまま海外で販売する場合と海外市場向けに製品を改良もしくは開発する場合があります。ターゲット市場や製品によって最適な方法は異なりますが、現地カウンターパートのアドバイスを取り入れながら、輸出製品を決定します。

トラブルの未然防止

1.日本の輸出管理規制

輸出する品目によっては、日本政府の事前の許可や承認が必要になることがあります。例えば、安全保障上の観点から輸出する製品が軍需用途に転用できると判断される場合には経済産業省の輸出許可が必要になります。この規制対象は幅広く思わぬ製品が該当してしまう場合がありますので、事前に十分確認します。

2022年に経済安全保障推進法が制定され、「特定重要物資」が閣議決定され、厳格な輸出管理の必要性が高まっています。外為法違反や懸念取引に巻き込まれないようにしたいものです。

2.相手国の品質・安全基準の確認

製品が相手国の品質や安全基準をクリアしているかについても確認しておく必要があります。輸出取引におけるクレームの多くは品質に関するものです。輸出においては顧客との間の物理的距離があり、訪問による調整・修理といった顧客へのアフターサービスが難しくなるため、品質基準を強化し問題発生を未然に防ぐことが重要です。

機械部品を輸出するA社は高精度な画像処理が可能なマイクロスコープを導入し、製品を3次元で測定し、読み取った数値を画面に表示したり、数値と合わせて基準線を表示することでより精密に検査結果を確認できるようにしました。欧米諸国など輸出先の国によっては、日本国内よりも品質や安全に関する取組みが厳しい場合がありますので注意が必要です。

3.交渉のポイントを抑えたトラブル防止

製品を輸出する際には、不良品のトラブル以外にも、言語や文化も商慣習の違いによるトラブルなど思いがけないことが発生します。またその対応は国内取引と比較して複雑です。取引先との交渉の場面では、価格だけでなく万一トラブルが発生した場合の責任やその対応についても十分確認します。そして契約書には取引条件や責任範囲とその対応策を必ず明記しておきましょう。契約書の各条項は内容がしっかり理解できるまで必ず確認します。価格や納期等の条件だけ気を取られてしまうと、輸出開始後にトラブルが発生し、その対応で赤字になってしまうこともあり得ます。十分な注意が必要です。

回答者

中小企業診断士 林 隆男

同じテーマの記事