ビジネスQ&A

海外の方々との会議の際に留意するとよい点を教えてください。

タイへの進出を検討している食品加工業の人事担当者です。今後、タイの方々との会議が多く発生することが予想されますが、今まで海外との取引経験がなく、どのように海外の方々と会議を進めるとよいのかが分からず、社内に不安があります。海外の方々との会議の進め方において、留意するとよい点を教えてください。

回答

海外の方々との会議においては、(1)事実の積み上げにより話し合いを進めること、(2)会議の前準備と議事録の作成を行うこと、(3)相手側の持つ文化と日本の文化の違いを認識することをまず心がけてください。双方が現状で出来ること、出来ないことを具体的に整理する場を作っていく姿勢が大切です。

【事実の積み上げ】

海外の方々との会議であっても、基本的には国内での会議の進め方と大きな違いはありません。ただし、双方の持つ言語や文化的背景、そして通訳を介した会議となるなどの違いはありますので、日本人同士での会議以上に、会議の進め方の基本を忠実に守り、進めることが必要です。

特に重要なことは、具体的な事実の積み上げを意識して会議を進めることです。議事に沿って、双方がそれぞれの現状を踏まえた上で、出来ること、出来ないことをその理由を含め、具体的に会議の場で共有します。相手側にも意識的にこのような姿勢で会議を進めていただくとよいでしょう。

その上で、現状において当事者一方では解決が難しい事項について、双方が協力し合い具体的な解決策を模索していきます。会議の場で解決策が出せない場合は、その事項をリストアップしておき、会議の最後に、その事項を解決するために必要なアクションアイテム(行うべきこと)と、期限(日時)及び担当者を明確にして、期限までに相手側と共有します。

このように具体的な事実に基づく会議を繰り返し、双方が会議で決めたことを一つずつ実行していくという仕組みをつくっていくことが、海外での事業の遂行に効率性をもたらすことになります。

【議題の事前共有と議事録の作成】

海外の方々との会議では、開催場所が相手国・日本・第三国いずれの場合でも、双方にとって時間と費用をかけて開催することになります。したがって、会議が有効な場となるように意識することが大切です。会議開催の少なくとも1週間前までにはアジェンダ(議題)を相手側に送るようにしましょう。

アジェンダの内容については、具体的かつ詳細に記載し、事前資料の提供が可能な場合は、合わせて送付することが大切です。これにより、双方が会議までに必要な準備を進めることができ、会議をより効果的に進めることができます。

また、議事録の共有も大切です。議事録では今回の会議で決定されたこと、保留事項、次回までのアクションアイテム(対応期限の日時・担当者を含む)について具体的に記述し、双方で合意しておくことが大切です。また、会議開始時までに議事録作成者を決めておき、その方が会議の進行に合わせて議事録を作成し、会議の最後に時間を確保して次回までのアクションアイテムを含め、双方で共有・合意しておくことが効率的です。

作成言語については、共通して理解できる言語(英語など)があればその言語にて作成することが効果的ですが、双方が母国語しか理解しない場合は、作成者が母国語で作成し、通訳などを介して、相手側に説明するという方法が現実的かもしれません。したがって、通訳の選定についても、この点について考慮した上で選定することが大切になります。

【相手側の文化を理解する】

相手側の文化、それに基づく考え方や行動様式は、一夕一朝に理解できることではありませんが、海外進出に伴う事前調査(F/S)などの段階で積極的に理解するように努めることは大切です。また日本で収集できる情報などについては事前に収集し、理解しておくことも重要です。

また、海外の方々との会議では、双方の間に通訳が入ることが一般的です。この場合、日本語の微妙なニュアンスの違いを使って相手側の意向を探ろうとしても、相手側の言語にはそのニュアンスの違いを表現する言葉がない、通訳が上手く訳しきれない、などの理由で、相手にこちら側の意図が十分に理解されず、結果として双方の理解に食い違いが発生してしまうといったことも起こりえますので、注意が必要です。

回答者

中小企業診断士 髙津 克治

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