ビジネスQ&A

日本の本社が北米のお客様から注文を受けました。受注した製品は、量産品で、アジア協力会社で当社の設計図面や品質基準に基づいて製造して、日本市場に販売していますが、アジアの製造協力会社から北米のお客様に直接輸出して納入しても問題ないでしょうか?

2022年 6月24日

日本本社で、精密機械用の高性能部品を開発・製造しています。なお、標準性能の量産部品は、アジアの協力会社にて製造しています。今回、アジアの製造協力会社から日本本社に納入して、そして、北米に輸出する方がいいか。または、アジアの製造協力会社から北米のお客様へ輸出する方がいいのかのどちらがよいのかを社長は検討しております。

回答

今回の取組は、日本の本社が受注し、アジアの製造協力会社から北米のお客様へ輸出するのは三国間貿易という流れとなります。三国間貿易でのメリットやリスクを理解して進めるとよいでしょう。

昨今、国境を超えた取引が珍しくなくなりました。今回のケースのように、直接の物品の輸出には関わってこない本社や、社外の商社・エージェントが関与する第三国の当事者が含まれる「三国間貿易」というものがあります。以下で、三国間貿易の概要、メリットをご説明いたします。

三国間貿易の概要

まず、一般的な貿易形態は、貿易取引の一般的な形態としては、輸出者と輸入者の2者がいて、輸出者から輸入者へ「物品やサービス」が提供されて、輸入者から輸出者へ対価である「お金」が支払われます。

一般的な貿易形態(二国間貿易)

今回のケースのように、アジアの製造協力会社から日本の本社へ納入せずに、直接出荷するものの、出荷書類や決済などのみを日本の本社を経由する形態は、三国間貿易といいます。北米のお客様との注文書、出荷書類、請求書、金銭決済は、日本の本社が対応します。また、日本の本社と海外の製造協力会社の間でも、同様に、注文書、出荷書類、請求書、金銭決済を行いますが、アジアの製造協力会社からは、北米のお客様へ直接物品が輸出されます。

三国間貿易

書類に着目しますと、出荷書類にはインボイスやB/L(Bill of Lading)を準備します。通常の貿易取引の場合は、輸出者が輸入者へ送付します。他方で、三国間貿易では、書類は、輸出者であるアジアの製造協力会社から日本の本社、日本の本社から北米のお客様へと送付されます。これは、アジアの製造協力会社と北米のお客様の間では、取引関係が無いため、日本の本社を経由することになります。その際には、日本の本社は、製造協力会社が作った書類のうち、請求単価や請求金額の記載のあるインボイスを、日本の本社から北米のお客様向けのインボイス(リインボイスと言います)に差し替えて、提出します。

三国間貿易のメリット

一つ目は、輸送費とリードタイムの削減になります。

日本の本社で加工するなどしない場合には、アジアの製造協力会社から日本の本社へ納入するよりも、北米のお客様へ直接納入したほうが、輸送費の削減やリードタイムの短縮に繋がります。

二つ目は、税制上の利点の活用です。

もし製造協力会社の所在する国と、輸出先の国との間で自由貿易協定などを締結している場合には、FTA関税率を利用できる可能性があります。ただし、原産地証明で、今回のケースで輸出者の製造協力会社の情報が記載されますので、北米のお客様に知れ渡っても問題ない場合などではご活用を検討されるとよいでしょう。そうでない場合には、最寄りの専門家に確認をしてみましょう。

三国間貿易の留意点

こうしたメリットを享受するためには、幾つかの留意をしてください。

まず、製造協力会社と日本の本社の間の価格、日本の本社と北米のお客様の間の価格情報が漏れないようにする必要があります。そのためにも、日本の本社がリインボイスというインボイスを差し替える手続きのほか、製造協力会社が北米のお客様に出荷する貨物に、製造販売会社から日本の本社へのインボイスが同梱されていないことなど確認しましょう。そのためにも、現地の物流会社との連携は事前に確認しておくとよいでしょう。

次に、仮に製造協力会社の存在が北米のお客様に知れ渡ってしまった場合に備えて、日本の本社は製造協力会社との間において、当該量産品については独占的な供給契約を締結するなどリスクを備えておくとよいでしょう。

まとめ

このように、三国間貿易の形態を活用できれば、輸送費削減・リードタイム短縮・税制の優遇措置の活用などを通じて、競争力のある海外販売に繋がります。ご不明な点等ありましたら、中小企業基盤整備機構の専門家などにお問い合わせください。

回答者

中小企業診断士 小島 洋介

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