ビジネスQ&A

働き方改革はどのように進めればよいですか。

関西に5店舗を展開する製造小売業です。働き方改革として、社長の号令の下、職場単位で業務改善案の策定、実行を進めているのですが、あまり成果が上がりません。どのように進めればよいのでしょうか。

回答

働き方改革は全社的な構造改革です。事業の仕組み見直し→意識・組織風土改革→制度改革→職場単位の改善、の順に進めていくと、実効性を上げることが期待できます。

働き方改革は、育児や介護などの重要なライフイベントとワークとのバランスを図りつつ、企業が持つ人材ネットワーク(現社員、退社社員、パートタイム等の限定型で関与する社員を含む)を有効に活用して、最適な事業成果と労働スタイルの実現を目指すものと位置づけられます。そのため、単なる社員の労働時間や意識の問題ではなく、全社的な構造改革として実施することが必要です。

【事業の仕組み見直し】

働き方改革においてまず検討すべきは、自分たちの事業の仕組みです。たとえば、以下のような観点から見直しを行います。ここを変えずに一部の業務だけを変えても、どこかにしわ寄せや無駄待ち時間が生じ、かえって組織内でぎくしゃくした関係を生み出しかねません。

  • ビジネスモデルの見直し(薄利多売型、顧客都合への依存型からの脱却)
  • 共通性の高い業務フロー、インフラ、プラットフォームの見直し
  • 共通ルールの見直し(権限、手順、要件等)
  • 情報共有化の見直し(引き継ぎ、相互支援がいつでもできるレベルに)

まずは小さくてもよいので、前例となる改革の成功事例を作り出すことです。そのうえで次の施策を打ちます。

【意識・組織風土改革】

次に、意識改革、組織風土改革を行います。ここでは、これまで機能している(と漠然と思い込んでいる)社内の仕組みやルールをあえて見直す構えを、社員一人ひとりの中に作り出すことが重要です。とても難しいことですが、最初の事業の仕組み改革の成功事例を突破口に、「変える不安」から「見直す」、「変えてみる」文化へと誘導していくことです。

そのほか、専門性に対する考え方の変革も重要です。専門性を業務の抱え込みに使うのではなく、他の社員に引き継げるものを作るために使うような、共助型の文化に変えていきます。専門家の仕事がAI(人工知能)に代替される不安が出てきていますが、自分たちのミッションについて、専門を「極める」から「一段高いところから見直す」形に再設定していくマインドセットが必要です。

【制度改革】

これらの改革がある程度進んだら、制度を変えていきます。退社時間を柔軟化したり、休暇制度等に多様な選択肢を持たせたり、といった改革を実施します。事業の仕組みと社内の風土がある程度変わっているため、こうした制度を取り入れて短時間で切り上げる人が出ても業務の偏在等の影響は少なく、共助型のマインドの進展により、不公平感やねたみの温床となることを防止できます。

【職場単位の改善】

そして最後が、職場ごとに行う改善運動です。ここでは、職場固有の問題を見つけ出し、それを皆で解決していくことで、事業の仕組み改善の効果が隅々まで行き渡るようにします。これまでの改革の基盤があれば、運動はスムーズに進むと思います。

いかがでしょうか。皆様の会社では、働き方改革を逆の順序で進めてはいませんか。

「働き方改革」を実効あるものにするためには、変えにくいものに目をつぶっていてはいけません。事業の本質をしっかりと見極めた施策の展開を図っていきましょう。

働き方改革の進め方 働き方改革の進め方
回答者

特定非営利活動法人経済活動支援チーム

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