ビジネスQ&A

ベテラン社員のモチベーション向上の方法を教えてください。

従業員23名で製造業をしています。創業して40年になり、従業員の平均年齢も45歳になろうとしています。高齢者雇用促進法の関係で、長年勤めている従業員がこれからも会社の中核として頑張れるよう、モチベーションを高めていけるようにしたいと思います。どのような向上策があるでしょうか。

回答

年齢の高い社員は、長い間、会社と共に人生を構築してきた方々ですから、会社に対してそれぞれの思い入れがあります。また、そういう社員の方々は、会社に貢献したいという想いと、長い間働いてきたことに対して認められたいという気持ちも強いものです。このような、内面的な欲求を汲み取り、そして刺激してあげることが、モチベーションの向上に繋がります。

【モチベーションは人によって異なります】

相談者の相談内容からすると、50歳以上の技術者が対象になっていると思われます。まず、モチベーションは人生のライフサイクルがどの時点にあるかで、ある程度わかれます。独身の20代なら、上からの励ましや指導が、モチベーションの発生原因になります。

新婚の30代なら、さまざまな出費がかさむために、昇給というものがモチベーションの大きな部分になります。子どもが増えた40代になりますと昇給と、さらに部下を持つため社会的地位などがモチベーションの部分になります。

そして50代となると、いかに会社や社会的に認められているかということと、自己実現欲求が強くなるため、再チャレンジの意欲がモチベーションになってきます。

【外的報酬と内的報酬】

モチベーションの根源となる報酬は、2種類あります。

  1. 外的報酬:昇給、昇進、ボーナス、福利厚生、ステータス、企業のバリュー、表彰など
  2. 内的報酬:仕事自体の面白み、達成感、成功感、満足感、共有感など

外的報酬は、相対的なもので、「他よりも多い」「他よりも良い」というような比較対象が可能な価値です。一方、内的報酬は、自分自身の絶対的価値観からくるもので、他との対比ができない価値です。

このことからも、出産やマイホーム購入などの子供の学費がかさむ時期は、外的報酬の比重が高まってしまうことは、当然といえます。

しかし、今は昔ほど物にこだわらない人が増えてきて、2世帯住宅などの環境もあり、高度成長期から比べると、内的報酬に重きを置く人が増えています。相談者のように、50代のモチベーションにおいては、さらに内的報酬に力を注ぐことが重要になると思われます。

【ポイントは参加意識の充実感】

先に述べたように、50代のモチベーションは、いかに会社や社会的に認められているかということと、自分の自己実現意欲が強くなるため、再チャレンジの意欲がモチベーションにつながります。したがって、この2つを満足させてあげることが、モチベーションにつながっていきます。

たとえば、50代の技術者であれば、若い人たちにその技術の伝承の場を設けてあげるなどが効果的です(社会的に役に立ったという満足感)。または、インターン制度を導入して、社内で技術講習会の講師などをしていただくのも良いでしょう。

また、再チャレンジとして自己実現が叶うように、決められた予算を配分し、新たな革新的なチャレンジ制度を作って、若いころのように仕事にのめりこめるようにしてあげることも、一つの方法です。会社で働いて、貢献実感を持つことで、充実感とチャレンジ感を味わえるようにします。

【コミュニケーションを大切に】

このような、内的報酬を軸としたモチベーション向上策は、トップのコミュニケーションの量と質により、達成されます。

50代以上の人たちは、トップから認められたいという想いは、20代や30代の若い世代よりも、格段に強いものです。「やっぱりトップは私のことを見てくれていた」という報酬こそ、この年代には一番の報酬かもしれません。

回答者

中小企業診断士 深瀬 雅之

同じテーマの記事