業種別開業ガイド

グラフィックデザイナー

トレンド

グラフィックデザイナーは、チラシ、ポスター、パンフレット、屋外看板、新聞・雑誌広告、商品パッケージなど、広告物全般のデザインを行う職種である。最近では、紙媒体のデザインだけではなく、CM動画やWeb関連のデザインも業務の範疇に含まれるようになっている。

1. 紙媒体から電子媒体への業務へのシフト

近年、紙媒体の出版物の市場規模は減少し、その反面、電子出版物の市場規模が拡大してきている。このため、グラフィックデザイナーの仕事領域も、紙媒体から電子・Web媒体関連へ変化しつつあるものと考えられる。

2. IT化の流れの中で淘汰が進んでいる。

近年のグラフィックデザイナーの市場規模を見ると、2009年以降、縮小の傾向が見られる。また、2014年以降は事業所数も減少し続けている。この背景には、デザインにかかわるIT技術の進歩により簡単に短納期で成果物を出すことが可能になったこと、加えてクラウドソーシングやフリー画像提供サイトの登場による料金相場の下落があると考えられる。

グラフィックデザイナーの特徴

グラフィックデザイン業務は、一般に、クライアントからの直接発注、クラウドソーシングやホームページなどを介しての依頼を受けた後、(1)依頼者との打ち合わせ、(2)ラフイメージ(複数イメージ)の提示、(3)細部の調整と作り込み、(4)納品という流れが一般的である。

グラフィックデザイナーになるステップとしては、広告会社やデザイン会社、企業の販売宣伝担当としてデザイン業務を行った後に独立する人が多いようである。

また最近では、クラウドソーシングサービスやマッチングサイトの出現により、クライアントが直接デザイナーに発注することも増えている。

グラフィックデザイナー業態 開業タイプ

独立開業を考える際には、事業規模を見据え、2つのタイプがあると考えられる。

(1)個人事業主としての独立

自ら組織に属さず、個人事業主として開業するケースである。クラウドソーシングサービスやマッチングサイトの充実により、従来、クライアントとの人脈がなければ取れなかったような仕事も、個人の実力次第で受注できる仕組みが整ってきている。まずは副業から始め、実績を積んでから独立するという方法もある。

(2)制作会社の設立

企業内に複数のデザイナーを雇用し、受注規模の大きな業務に対応できる体制をもつケースである。大手企業はもちろん、公的機関からの依頼など幅広く受けることができる。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の5段階に分かれる。

(2)必要な手続き

グラフィックデザイナーを開業するために必要な認可など、特別な手続はない。

受注のための工夫

クライアントがデザイナーに発注するときには、デザイナーの過去の実績や、作品を見て判断することが多い。そのため、可能な範囲で過去の取引実績をホームページやブログで公開することを検討したい。同様に、自らの制作物は「実績集」としてまとめ、いつでもクライアントに見てもらえるようにしたい。

また、SNSでの情報発信は当然のことであるが、多くのデザイナーと同じような発信の仕方では差別化にならない。例えば、他のデザイナーがどのような情報発信をしているのかチェックし、良いと思うものを参考にするなど、いろいろなやり方を試みて、多くの人に認知してもらえるようにしたい。制作物はもちろん、情報発信するホームページやブログ、実績集の見せ方のデザインセンスすべてが評価の対象になることを意識する必要がある。

必要なスキル

  • グラフィックデザイナーとしてのデザインセンスの基本は、美術系大学や専門学校などでも学べる。しかし、プロとして仕事をこなしていくためは、クライアントが売りたい商品やサービスを際立たせることが求められる。そのためには商品やサービスに対する深い理解や考察できる力も必要となる。
  • またWEB関連のデザインでは毎年、様々な新しい広告手法や技術が生まれている。そういった広告手法に対する知見を持ち、自らのデザインに活かすことも必要である。
  • グラフィックデザイン業務には、依頼者との打ち合わせによる作品イメージの共有、作成過程での依頼者との細部の調整など、依頼者との意思の疎通を行う場面が多い。また、様々な専門家たちとチームを組んで仕事をする場面も多い。そのため、相手の伝えたい内容を正しく理解し、こちらの意見も伝える調整力やコミュニケーション能力も必要とされる。また、アドバイスを行う場面や、コンペ形式で仕事を受注する場面も多い。そのため、効果的なプレゼンテーション能力も必要である。
  • 広告会社やデザイン会社、企業の販売宣伝部門でデザイン実務を担当してきた者が独立した場合、過去の実績やクライアントとの人脈が開業後の強みになる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

最低限必要な設備資金としては、作業用パソコン、画像制作用ソフト、液晶ペンタブレット、プリンター、そしてコピー用紙などの購入費用などであり、50万円~150万円程度はかかる。仕事をするにあたり大きなスペースは要らないので、自宅で開業することも可能である。

【参考】:自宅にてグラフィックデザイナーを開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画

自身のスキル・実績や人的ネットワークなどを勘案して売上の見通しを立てることが重要である。

(参考例)グラフィックデザイナー(自宅での開業の場合)

※休日は不定期に取ることとする。

■損益イメージ(参考例)グラフィックデザイナー(自宅での開業の場合)

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

掲載日:2019年3月