業種別開業ガイド

DTP業(デザイン業)

トレンド

DTP(デスクトップ・パブリッシング)とは、編集・デザインや画像処理など、印刷の前工程の作業すべてをパソコン上で行う出版様式である。

1.紙媒体から電子媒体への需要のシフト

現在、紙媒体の出版物市場は縮小傾向にあるが、代わって規模はまだ大きくないものの、確実に電子媒体が普及してきている。未だ企業や自治体などが配布するチラシや会報誌、チケット、カタログなど、紙媒体の需要も根強く残っているが、ペーパーレス化への動きが進む中で、今後、多くの出版物が電子媒体化されていくものと考えられる。

2.電子書籍の作成手段としてのDTP

近年は、出版物を紙媒体と電子書籍の双方で販売する形態も多くなってきているが、DTPで作成した原稿データは、紙媒体・電子書籍双方に使うことができる。
このような背景の中、公益社団法人日本印刷技術協会が実施しているDTP技術の認定試験「DTPエキスパート認証」の受験者数累計は、53,835人(2018年8月時点)まで増えている。

DTP業(デザイン業)の特徴

・従来の印刷工程は、(1)図案の企画、(2)編集・デザイン、(3)版下原稿の制作、(4)製版、(5)印刷・製本という手順を踏んでいたが、DTPの登場により、このうち(2)(3)(4)の工程がすべてパソコン上で行うことができるようになった。この(2)(3)(4)の工程のうち、(3)(4)の工程を担う人をDTPオペレーターと呼び、(2)(3)(4)の工程を担う人をDTPデザイナーと呼ぶのが一般的である。

・DTPオペレーターの業務は、クライアントが持ち込んだデザインや原稿を元に、文字データ、画像データを作製し、印刷レイアウトを作り込み完成させる作業である。一方、DTPデザイナーは、上記の業務に加え、クライアントの要望に沿ったデザイン制作、コンピューター・グラフィック作業を行う。

・DTP技術の発展に伴い、デザイン系の専門校等でDTPを習得したオペレーターやデザイナーも数多く生まれている。また、開業に際しては、特別な許認可を得る必要がなく、設備投資も少額で済むため、個人で開業する者が多い業種である。

DTP業(デザイン業)業態 開業タイプ

DTPデザイン業での開業を考える際には、次の2つのタイプがあると考えられる。

(1)編集・デザインから製版データ作成までに特化したタイプ

デザイン業務を強みとするタイプで、一般的にこのタイプでの開業を目指す人が多い。

(2)編集・デザインから印刷までのすべてを請け負うタイプ

DTPオペレーターとDTPデザイナーの業務に加え、業務用印刷機を導入し大量印刷の要請にも対応できるようにしたタイプである。幅広いニーズに対応できる反面、印刷機の導入に多額の初期投資を要する。

開業ステップと手続き、

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の6段階に分かれる。

(2)必要な手続き

DTP業を起業するにあたって、特に必要となる行政手続きや法規制はない。

サービスメニュー作り

・印刷業界では競争が激しく、ネットを中心に印刷業務を受注している業者の多くは「安さと短納期」を売りにしている。ただし、その場合、利用者自らが印刷データを作成する形が一般的であるが、販促物の作成など商業利用の場合は、デザイン含め依頼したいというケースも多い。その際には、価格競争力だけでなく、企画提案力、デザインセンス、仕事のきめ細かさなど、他社にない強みが求められる。

・受注量の大きな変動にも対応できるよう、繁忙期には他社に外注も行い、閑散期には同業者から仕事を分けてもらえるよう、人的ネットワークの構築も必要である。ネットワークがあれば、自社で処理できない特殊作業を含む仕事であっても、元請けとして受注し、特殊作業部分を専門業者に発注する形で売上を確保することも可能である。

・クライアントがデザイナーに発注するときには、デザイナーの過去の実績や、作品を見て判断することが多い。そのため、過去の取引実績や制作物をホームページやブログ、SNSなどで公開し情報発信し、多くの人に認知してもらえるような工夫も必要である。また、実績や制作物の見本を製本して簡単な冊子にして、名刺代わりに活用してもよい。

・近年の出版業界の流れに合わせて、電子書籍化への対応も検討に入れるべきである。出版会社への売り込みや、自費出版を検討している個人のニーズを取り込むなど、積極的な営業活動も必要である。

必要なスキル

・さまざまなクライアントの要望や仕様に対応することができるよう、MacintoshとWindowsの両方のパソコンに精通しておく必要がある。アプリケーション・ソフトとしては、「Quark Express」に代表される文字編集ソフト、画像やイラスト処理を行う「Illustrator」「Photoshop」を扱えることは最低限必要である。さらに、「InDesign」や「Acrobat」などのソフトも扱えるようになれば、より効率的に高付加価値なサービスを提供することができる。

・DTP技術に関しては、デザイン系の大学や専門学校のコンピューター・グラフィックの学科を卒業するか、デザイン会社に就職して技術を身に付けるのが一般的なコースである。自身の技術レベルを対外的に示すためには、公益社団法人日本印刷技術協会が実施している「DTPエキスパート」などの認証資格を取得することが推奨される。また、デザイン力と密接な関係をもつ「色彩検定」などの資格を取得しておくとなおよい。

(参考)
「DTPエキスパート」公益社団法人日本印刷技術協会

「色彩検定」色彩検定協会

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

編集・デザインから製版データ作成までに特化したタイプであれば、自宅を仕事場として使用することにして、コストを抑えて開業することができる。以下は、自宅を仕事場としてDTPデザイン業を開業する場合の例である。

【参考】:自宅にてDTP業(デザイン業)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
自身のスキル・実績や人的ネットワークなどを勘案して売上の見通しを立てることが重要である。

(参考例)DTP業(デザイン業)(自宅での開業の場合)

※休業日は不定期に取ることとする。

■損益イメージ
(参考例)DTP業(デザイン業)(自宅での開業の場合)

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)