起業マニュアル

個人事業の開業手続き

個人事業の開業手続き

従業員を雇わずに個人事業を始めるときに必要な手続きは3つです。税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出し、都道府県税事務所と市町村に「事業開始等申告書」を提出します。
従業員を雇用する場合は、社会保険の加入手続きも必要です。

税務署へ開業届を提出

開業したら1ヶ月以内に、納税地の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。一般に「開業届」と呼ばれる書類です。
納税地とは一般的には住所です。つまり、住んでいる家の場所です。事業所の所在地を納税地としたい場合は、特例の適用を変更前の住所地を管轄する税務署へ届け出てください。
開業届に書く主な項目は次のとおりです。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 納税地
  • 個人番号(マイナンバー)
  • 職業
  • 開業日
  • 屋号
  • 事業の概要
  • 青色申告の承認申請の有無
  • 消費税の課税事業者選択届出の有無
  • 給与等を支払う人数

屋号はなくても構いません。屋号については後述します。

開業届の用紙は税務署にあります。個人課税(所得税)の担当に尋ねれば、書き方も教えてもらえますので、印章を持参して税務署で記入するのがよいでしょう。国税庁のwebサイトで用紙をダウンロードして記入し、郵送することもできます。
開業届を提出する際は、開業届の控えに税務署の受付印を押してもらいます。この開業届の控えは、補助金の申請などの場面でコピーを求められることがあるので保存しておきましょう。郵送による提出でも、切手を貼った返信用封筒を同封すれば、控えを返送してくれる税務署もあるようです。返送については税務署に前もって電話で相談してください。

店や事務所の名前である「屋号」

屋号とは店や事務所の名前のことです。個人事業でも名前をつけられます。屋号はつけなくても構いません。屋号が決まっていれば開業届に書きますが、開業届を出した後に屋号をつけても構いません。
屋号は事業で使うので、仕事内容が伝わる名前や覚えてもらいやすい名前をつけるとよいでしょう。
ただ、個人事業の屋号に「会社」はつけられません。また、「ソニー」のような有名企業と紛らわしい名前や、他社の商標権を侵害する名前もやめましょう。

所得税の青色申告承認申請書

税務署へ開業届を提出するときに「所得税青色申告承認申請書」も一緒に提出する方も少なくありません。
青色申告承認申請書は個人事業の開業にあたって必須ではありませんが、青色申告をしたい場合には、開業から2ヶ月以内(1月1日から15日に開業した人は3月15日まで)に提出します。
青色申告承認申請書は、開業届と似ていますが、簿記方式(複式簿記、簡易簿記など)や、備付帳簿名(総勘定元帳など)にチェックを入れる欄があります。書き方にわからないところは税務署に尋ねるとよいでしょう。

地方自治体へ事業開始等届出書を提出

税務署だけでなく、都道府県税事務所と市町村にも「事業開始等申告書」を提出します。地方自治体によって「事業開始等届出書」の名称や手続きは異なります。開業届を提出する税務署や、事業所の所在地を管轄する都道府県税事務所や市町村役場に、手続きを問い合わせてください。

従業員を雇うときは社会保険の手続きも

従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入しなければなりません。労働基準監督署と公共職業安定所(ハローワーク)で加入手続きをします。提出する書類は提出先によって異なります。

1.労働基準監督署への提出書類

  • 労働保険関係成立届
  • 労働保険概算保険料申告書

2.公共職業安定所への提出書類

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

詳しくは、厚生労働省のwebサイトを参照してください。専門家に任せる場合は、社会保険労務士に依頼します。

厚生労働省「労働保険の成立手続」

原則として、常時5人以上の従業員がいる場合は、健康保険(協会けんぽ)と厚生年金に加入しなければなりません。
年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」事業主の世帯全員の「住民票」などを提出します。
詳しくは、日本年金機構のwebサイトを参照してください。専門家に任せる場合は、社会保険労務士に依頼します。

日本年金機構「新規適用の手続き」

従業員を雇うときにお勧めする書類

従業員を雇用する場合は、税務署に「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出することをお勧めします。申請すると、従業員の給与から天引きする毎月の源泉所得税の納付が年2回にまとめて納付できるようになります。
青色申告者であれば、税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すると、生計を一にしている配偶者その他の親族に支払う給与を必要経費に入れられます。